132
『ようこそ、我らの船へ』
そんな風に私はやってきたウサギな彼女に歓迎の声をかける。私自身は彼女の前に行く……とかできないからね。だから声をかけるしかできない。それに……警戒してないわけじゃないからね。
彼女自体はそんなに好戦的ではないのは確かだ。私たちに勝てないってきっと本能レベルでわかってるだろう。だからここで暴れても勝ち目なんてない……ってわかってると思う。
わかってる……よね? キョロキョロと周囲を見回す彼女。すると後ろから出てきたアイが彼女の体毛にモフっと埋まった。物珍しさからウサギな彼女はその場からうごいてなかったから、開いた世界転移の穴の直ぐ側にいたせいだ。
「ちょっと……」
そう思ってると、今度は勢いよく勇者がその後に飛び出てくる。どうなるかというと……ドッガーン!! である。とうぜんだよね。それに勇者は最期の殿であっただけあって、危機一髪というか? ギリギリまで神の代行者と戦ってた。だからこそ、その勢いは前の二人の比じゃない。
三人は吹っ飛んでいく。あわや壁にぶつかるってときに、私は空間にクッションというか? エアバックを送り込んだ。それによって三人はブァッ! とぶつかった瞬間に空気に押し戻される。最先端? と言って良いのかわかんないが、G-01のレシピにあったエアバックは空気を中に閉じ込めた風船的なやつではない。
確かにまずはそうなんだけど、もっと直接的に空気を扱ってる。僅かな衝撃で外側の素材は破裂して、溢れ出る風の指向性を制御して優しくふんわりと勢いを殺す……ってやつだ。なにせいくら空気だといっても、いきなりみちみちに閉じこもった空気が弾けたら、人を吹き飛ばすくらいの勢いにはなる。
だって風で人は飛ぶのだ。封じ込めた空気が大量に外にでるってのはつまりは風を起こすってことと同義。そこら辺のエアバックでは人を吹き飛ばすほどの空気の密度を保つなんて事は不可能だろう。
でも極まった科学力を持ったG-01を作った人々にはそれができた。でもただ空気を外側に出しても逆に危険なだけなんだ。台風の映像を見てもわかるだろう。風でも大木を地面から引っこ抜く事はできるのだ。そんなの人が抗えるようなものじゃない。
それに近くのものも勢い余ってぶっこわす……そんなんじゃ二次被害も溜まったものじゃないだろう。てなわけで大切なのは指向性である。風の流れさえも完璧に操ることによって、絶対安全! を掲げる事ができるようなエアバック。それがこれである。




