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たく、これが私の本気ってやつだ。ウサギな彼女の中にある無数の魂を安定させこっちに送る計算はできた。異相と空間の相性。それをこっちの干渉で安定させた。全く肉体は一つなのに、その中に無数の魂があるとはなんと厄介なことか。途中からこれはどうにかひとまとめにできないか?
と考えを変えたのがよかったね。本当に一つ一つの魂を汲み取ってたらもうちょっと時間はかかってた。まあ、こういう臨機応変さ? も私の強みっていうか?
「ただ楽をしたかっただけなんだけど……」
それが全てではある。でも実際人類とはそうやって何かを簡単にやりたい! というのを原動力に進歩をしてきた……といえるのではないだろうか? だって歩みを止めたら進むことはできない。一歩でも、半歩で進めばそれは進歩なのだ。
まあ色々といったけど、私はやりきった……そういうことだよ。あとは勇者たちがドローンで作ったゲートに入るだけ。ゲートと言っても扉というよりもモヤモヤとした穴といった方が正しい。そこにあってそれがなにか知らなかったら絶対に近づかないだろうって見た目である。
ドローンたちによって建ったその機械。まあ問題は今勇者たちがいる場所からそこそこ離れてるってところだね。
『座標はここです』
私はその位置を勇者とアイに送信した。あとは二人の頑張り次第だね。まあ私もドローンでサポートはするよ。でも相手は33222体の神の代行者だからね。ドローンではちと心許ない。
本当ならもっと近くにゲートは開く予定だった。でも……神のせいで世界の半分が……ね。消し飛んだから。あのせいで消し飛んだドローンは多い。そもそもそれで建設中だった最初の奴は吹き飛んだし。新たにこうやって建てたんだからその切替の早さを誇るべきだ。
「最短ルートは……突っ切ることですか」
「もうちょっと場所を考えなさいよ」
そんなことを言われても私だってまさか神の代行者が33222体になるなんて思わないし? それはどうしようもなくない? 私は文句は言わずにこれだけ言ってあげる。
『頑張ってください。信じてますよ』
とね。まあきっとなんとかなるよ。
「あんたも自分の足を使いなさい! 勇者、甘やかすのは無しよ!!」
そんな風にウサギな彼女に向かってアイがいう。実際彼女は敏捷だし、勇者に抱きかかえられてたり、手を繋いでたりしたままだと弊害があるのは確か。なにせ敵は大量だ。フォローし合うのはいいが、足を引っ張るのは違うよね。
「自分の足で、走れる?」
その言葉を理解してるように、ウサギな彼女も頷いた。勇者の事は信じてるからね。その場はなにもない場所になってるけど、勇者やアイは自身で足場を作ってる。でもそこはウサギな彼女もサンクチュアリを持ってるのだ。内包してる。
彼女自身に自覚はないかもしれないが、その力は絶大なわけで、足場がなくても彼女ならどこでも移動できるようだった。




