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「にげ……た?」
私はちょっとあっけに取られてしまったよ。だってこの場面で逃げる? しかもアイと勇者を置いて……だ。さっきまでさんざん世話になってなかった? 確かにあのウサギな彼女が私たちの仲間か? と問われるとそれは違うと思う。
まだ私たちは仲間とかじゃない。それは確かだね。それにこっちが勝手に面倒を見てただけ……と言われればそれまでだ。それにこっちにだって打算があった。私たちは彼女の中にあるサンクチュアリを狙ってたからね。
彼女を助けてたのはそのためだ。戦うよりも、有効的関係を築いて譲ってもらう方がいい。だからまあ、逃げたとしても一方的に責めるとかできないか。勇者たちを置いて行ったのは、彼らなら時間を稼いでくれるだろうって打算があるのかも。
とかなんとか私は思ってたわけだけど、勇者の言葉は違ってた。
「彼女は僕たちの為に……あの子は奴らを引き付ける気だ!」
私達があっけに取られてた中、勇者は動いてた。ウサギな彼女は勇者になついてた。だからこそ? なのかは分かんないが、勇者には私達とは違うように彼女の行動が見えてたらしい。
勇者の言葉がウサギな彼女の本心なのかはわかんない。でも、33402体の神の代行者の動きは真下のアイとかではなく、既に雪の向こうに消えたウサギな彼女に向かってるのは事実だ。
神の目的はあくまでもウサギな彼女。それが今、証明されたといっていい。なら……
「勇者の言葉はその通りなのかもね」
そうなる。けど、あんないきなり走り去られたら……ね。逃げたと思ってもおかしくなくない? だってどう考えたって不利なのは明白だ。あの数に圧倒されて逃げ出した……なにもあり得ないことじゃないだろう。
私達と勇者の違い。それはきっと相手を信じる心なのかもしれない。私とアイはすぐに「逃げた」――と思った。それは打算がこっちにもあったし、向こうだって……とか心のどこかで思ってたんだろう。
でも勇者は違った。きっと心から接していた。だからこそ、野性的なウサギな彼女も勇者に一番なついてたんじゃないだろうか?
ほら、犬とか猫とかいい人がわかるっていうからね。私たちの中で誰が一番良い人か? と言われたら間違いなく勇者が得票数トップになるのは間違いない。




