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神の代行者は驚いてるだろう。いや、そもそもが驚く暇もなかったかもしれない。気づいたら細切れになってた。それがきっと一番正しい表現だと思う。神の代行者はまるで色がなくなっていってそして、霧散していく。
「やった?」
そんな風に勇者がいう。でも勇者は油断してない。なにせ相手は神――の代行者。そんな簡単にやられるような相手ではないだろう。するとその時だ。やっぱり……と思うような事が起きた。
一気に明るくなる周囲。なんだと皆が上をむく。すると大きな手で厚い雲を横に開いたでっかい目玉がそこにはあった。あれは間違いなく外から見たときの、この世界の神、そのもの。地上から見たサイズ感ではめっちゃ気持ち悪い……というしかない。手と後は目玉だけしか見えてないから、さっきの神の代行者とかなり似通ってる。
「いや、そもそもが自分をベースに作ってるんだろうね」
わざわざ変なオリジナリティを入れないで、自分のコピーのようなさ……そんな単純な感じでこの神は代行者を作ったんだろう。そんな事を思ってると、絶望……と呼んでいいだろう「それ」がやってきた。
どうやらあの神は本気でウサギな彼女を逃がす気はないらしい。とうとう世界にまで干渉してきやがって……だよ。そして大きな目玉の下に光る無数の小さな光。それは……全てが神の代行者だ。数えるのもおっくうになるくらいの数。
33402……それがG-01が一瞬で弾きだした奴らの数だった。でもそれが上限なのかは分からない。もっと作れる可能性もある。それだけいれば十分だろうってことなだけかもしれない。
まあこっちとしては33402という数字が限界であってほしい。でもそう思うのは危険だ。だって確証はないからね。それを限界……と決めつけるのはこちら側の都合の良い願望と言わざる得ない。
でもまあ……流石にあの数はない。一体一体がさっきの神の代行者と同じ強さだとするなら……こちらの負けは確実だ。
「ちょっと!」
アイの声。なにかと思ったら、ウサギな彼女がアイから離れてる。これはなんか……いやな予感がするぞ。私は自身の頭にある遠い記憶を引っ張り出してそう思った。そして案の定、彼女はいきなり勇者たちを置いて走り出したのだ。




