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 素早く動いてる勇者にあの神の代行者の手の影響は見えない。けど勇者の動きを見てると、その手をとても注視してるのがわかる。あの手に触れるのはやばいと理解したからこそ、一刀一刀で沢山発生してくる腕を大量に薙ぎ払ってる。

 でもそれでも減ることがない。空間に開いた大きな目。それからとめどなく涙のようにあふれ出てる手。でも涙は綺麗かもしれないが、目から手が生えてきたら……それは綺麗じゃない。寧ろ気持ち悪いだろう。

 そして本体の奴の手。それを一番勇者は警戒してる。実際違いはないかもしれない。あの大きな瞳から発生してる手と、神の代行者の手。それに違いはないのはかもしれない。でもやっぱり本体の方に意識が向くのは仕方ない。


 勇者は聖剣を使い、神の代行者は素手だ。それはさっきと変わらない。だから神の代行者は聖剣をおそれてない。本当なら剣持ちと無手……その差は歴然のハズ。でもさっきうまくいったからね。うまく勇者をやり過ごすことができたし、あいつはあの剣の事をきっと侮ってる。自身の体を傷つけることはできない鈍ら……そのくらいには思ってるんじゃないだろうか?


 でもそれは間違いだ。確かに神の代行者みたいな神に類する存在だから、その体を傷つける武器とかそんなのはきっとそうそうない。そうそうないが……あれは聖剣だ。だからこそ油断は禁物。まあそんなのあの神の代行者は知らないだろうけど。だからこそ、素早く勇者は動いた。

 それに勇者がうまいのは最初の一・二打は先と同じく奴の体にはじかれることを装ってたことだ。それできっと神の代行者も「こいつの武器では自分の体を傷つけることはできない」――とか思ったことだろう。

 でもそれが勇者の狙いだった。最初に前に同じで油断させておいて、力の込め具合を勇者はきっちりと見極めてた。なにせあの世界では勇者たちはエネルギーの補給ができない。だから無駄はできないからね。


 だからどのくらいならあの神の代行者の体に対抗できるか……それのギリギリを見極めて、数打の後に、エネルギーを高めた聖剣を叩き込んだ。それによって奴は反応した時にはすでに、四肢を……そして頭と胴も幾重にも切り刻まれてた。

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