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「これは……」
「世界の法則を捻じ曲げつつあるようね。エネルギーを絶やさないようにしなさい」
そのアイの言葉に勇者はうなづく。これまで体表をうっすらくらいに覆ってたそのエネルギーをもっと激しくたぎらせる。けど外にはなるべく出ない様に運用する。激しい力……エネルギーとなるともちろんだけどそれだけ制御が難しくなる。
それは所謂、30キロを出す車を制御するのと120キロ出す車を制御するの……どっちが大変か? ということだ。誰もが120キロ車を運転するのが大変だと思うだろう。つまりはそういうことだ。とても難しいことである。それに勇者もアイも莫大なエネルギーを内包してるわけで、強力な力といのうのはそれだけ繊細でもある。
でもそれを完璧に勇者もアイもコントロールしてる。まあアイにはもちろんそれだけの知識と制御システムがあるし、勇者の体だって常に更新してるから、どんどんと制御をやりやすくなってるのはある。けど勇者の場合は彼の努力によるところは大きい。大体アイはシステムに頼ってるが、勇者はどうにかこうにか自分自身でやろうとするからね。
その努力を私はしってる。勇者はまじめな奴なのだ。格好良くて努力家? 才能だってある? まさに勇者になるべくしてなった奴といえる。こんな完璧超人私は見たことない。きっと立場が違ったら惚れてただろうなって思うくらいである。
むしろ私の容姿なら勇者に守られるお姫様ポジションに収まってた可能性もある。そんな世界だってこの広いどこかにはあるかもしれない。まあ並行世界には限りがあるんだけど……とりあえず私もドローンたちを守らないといけない。
かといってドローンたちは勇者やアイのように強大なエネルギーを持ってる……わけじゃない。だってドローンたちは数で勝負するためのものだ。一機一機は使い捨て……といってもいい。そんなドローンなのに一つ一つに強大なエネルギー? ないない。そもそもそんなのに耐えられる構造でもない。なるべく低コストでけど便利なのがこの量産型ドローンのいい所なんだからね。オプションだって豊富につけられるから汎用性だって高い。
けど今はその紙装甲が問題になってしまった。それに一機ではこの涙のカーテンの内側……あの神の代行者が世界のルールを自分の都合のいいようにしようとしてる中ではそれに対抗できない。
『自身の有利を押し付けてくるような結界……固有結界みたいなものだね』
世界を作り出した神の代行者なんだ。一定の範囲を自身の都合のいい世界に出来たとしてもおかしくない。この場所にいるだけであの神の代行者の攻撃を常に受けてる状態だとおもってもらえばいい。
例えるならば息をするだけで「死ね」――される場所である。ここは完全に奴の都合のいい世界なんだ。それに対抗するには自身のエネルギーで自分を守るしかない。世界のルールに反発する自分のルールを自分に適応しないといけない。
勇者とアイはとっさに判断してそれができた。ちなみにウサギな彼女は聖剣の光が守ってるから大丈夫だろう。アイも勇者もドローンを守ろう……なんて意識はない。当然それを担当してるのは私だからだ。
ふむ、困った。勇者もアイも簡単にやられたりはしないだろうけど、あの神何をするかわかんないからね。ちゃんと情報は逐次仕入れてないと不安だ。ならどうするか? 一機でだめなのであれば、そう! 『合体』――だ!!




