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ビクッと何かを私は感じた。自身の体に冷たい何かが入ってきてる。それと同時に近くのモニターに新たな映像が流れた。さらにさらに、何やらやらザザーというホワイトノイズ。それによって意味が分からない神の声は聞こえなくなった。
映像は小さな動物だった。モフモフな子猫や子犬。多分ちゃんとそれだと思われる。きっとG‐01を作った人たちの世界にも子犬や子猫は居たんだろう。子ウサギとかも出てきた。でもなんかウサギは角があったな。まあけどそれくらいならかわいかった。ゴロンと転がって手足をジタバタしてたり、子犬たちは兄弟なのか、家族でわちゃわちゃしてたりしてる。
「はふー」
なんという愛らしさ。この愛らしさの前では心のイライラなんてどっかに行くようである。鎮静剤の上にアニマルセラピーまでしてくるなんて、最強か? この音もきっとリラックスできる音なんだろうね。まあけど音はあの神の言葉というか? 声? までノイズとして処理してしまってる。
それは困る。
「いや、本当はノイズとして処理してしまいたいよ」
けどそれじゃあだめだろう。このイライラは本当なら受け取りたくない。けど、全てを遮断してしまったら、あの神の事なんにもわかんないままだ。今の所あの神に対してわかってることは、どうやら怒ってる……らしいということだけだ。
そしてきっとその怒りの原因……それはあの半端なウサギな彼女だと思う。だってあの神があの世界に張り付いてるのってあの子を探してるからだと思うし。でもそれなら一体誰があの神の目を曇らせてるんだろうか?
世界? いやでも……
「世界は神の創造物だからね。その世界が神に不利益な事をするかな?」
てか神なら、天候とか操れると思うんだけど……そのくらい神ならできるだろう。でも、あの世界は厚い雲に覆われて、実質世界があのウサギな彼女を隠してる。これってどういうことなんだろう?
「むむ……また」
あまりにもこの神の声に耳を傾けてると、心にジュグジュグとした負の感情が溜まっていく。だからそのたびに私は鎮静剤とアニマルセラピーを使って自分の内からドロドロとした感情を浄化しながら理解していくことにした。
これがただただ機械的なAIにでも任せられたらもっと合理的に事を運べたんだけど……もうG-01の中にそれはないからね。私が受け止めるしかないのである。怒りの蓄積……それを見間違わずにやっていかないと、下手に暴れる……なんて私はできないからね。このコクピットの中だけで暴れるのならまだいい。
G-01が連動して暴れたら、この本船に深刻なダメージが発生するかもしれないからね。




