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 取り乱し方が異様な半端なウサギ人間。そんな時、気付いた。空に蔓延してる不気味な目。それが、ゆっくりと動いて、その一箇所を見てる。そうそれはあのウサギ人間であり、そして一緒にいる勇者でもある。


 でもこの世界は吹き荒れる吹雪と、曇天で覆われてるわけで、一時的に晴れたと言っても、その世界全ての雲をアイは吹き飛ばしたわけじゃない。だから晴れ間は僅かな間。すぐに暑い雲が空を覆う。

 それにともなって、半端なウサギ人間も落ち着きを取り戻す……とか思ったけど、そんな事はなかった。


 ガタガタガタガタ……と彼女? は震えてる。さっきまではその自身の圧倒的な力に絶対的な自信がある、という感じだったじゃん。なのに、晴れ間が見えた途端こんなことになるなんて……


「えっと……」


 勇者は困惑してる。だって女の子の見た目をしてるといってもそれは一部だし、さっきまで言葉も通じなく暴れまわってたやつだ。でも今は勇者に抱きついてガタガタガタガタと震えてる。

 なんか勇者のボディがギシギシといってるから、もしかしたらその腕力……手加減してないんじゃない? 勇者のボディが特殊で頑丈だから勇者は困惑程度で収まってるが、実際あの半端なウサギ人間が何も考えずに抱きしめたりしたら、大抵の相手は――グシャ!――だよね。

 

 絶対にそうなる。だってあの半端なウサギ人間は確かにその力を使ってるが、その力の方向は発露の方にばかり向いてるだろう。抑える……なんて事知らなさそうじゃん。だから今も別に手加減してる……とは思えない。

 それをちょっとどしようか? 的に爽やかに笑って誤魔化してる勇者は流石だよ。そのさわやかフェイスで一体何人の女の子を落としてきたのやら……と思ってしまう。だって誰も受け止めらなかった存在が、その涙を受け止めてくれる存在を得たらどうなる? 

 いや、あの半端なウサギ人間にそんな感情があるかはわかんないけどさ……


「殺す? 今なら簡単じゃない?」


 そういってでかい銃をしまって、小型の拳銃をウサギ人間の後頭部に突きつけるアイ。こいつは本当に……このいい雰囲気がわからないの? これからラブが始まるかもしれなかったのに……まあそんな期待はあんまりしてなかったけどさ。

 さっきまでのウサギ人間なら攻撃の兆候を見ただけで敏感に判断してたはずだ。そして対策までとってた。それだけ戦闘センスはずば抜けて高かった。なのに今や無様に頭を差し出してる状態ともいえる。

 アイが引き金を引けば、本当にその脳天を貫けそうだ。でも……やっぱりそれは勇者が許さない。なにせ奴は勇者。弱い者を見捨てることはないのだ。

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