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そんなことがあるのだろうか? 実際合体というのは思ったよりも簡単な事じゃない。なにせ別の生命が重なりあうんだから、そんな簡単に出来ることじゃないってちょっと考えればわかる。もとからそういう設計をしてるのなら、話は別だけどね。
でもそれってむしろ元があってそこから分裂した存在……とかならわかる。
(いや、もしかしてそうなの?)
逆転の発想というのか、それが私の頭に降りてきた。サンクチュアリを宿したあのウサギ人間みたいなやつから分離したのが、あの二足歩行のウサギたちだった……と考えたらそれらが集まって一つになったのはただ元に戻っただけということで納得できる。
それにたくさんの二足歩行のウサギたちを集めたことでさらに強くなった……というのも、合点がいくしね。だって分裂したからこそ、その力は分散されてたはずだ。けど一か所に集めることでそれらは足し算されるわけで……いや、そのエネルギーは足し算なんかでは足りない増え方してる気がする。確かに一世界に対して発生する生物にしては二足歩行のウサギはエネルギーが大きいと思ってた。
でも、この人が混じったようなウサギ人間はまた別格。一つの世界に収まる様なエネルギーじゃない。はっきり言うと、こいつは勇者やアイよりもエネルギーだけで言ったら強大だ。それに……
「こいつ!」
「世界事私たちを殺す気のようね。いえ、私たちも喰おうとしてるのかも」
奴は貪欲だった。顔はかわいらしいタイプの童顔なんだけど、その目は真っ赤に光ってるから、かわいいとはお世辞にも言えない。それに人型の顔をしてるが、言葉は介さないみたいだ。それにさらに私は疑問がある。
『これだけ暴れてるのに、世界に他の生体反応がない……』
吹雪のせいでレーダーの通りが悪かった。けどリファーちゃんたちの方を見てる傍ら、私は大量のドローンをこの世界に送ってたし、ドローンを使って、簡易的な電波塔を建てたのだ。まあドローンを積み上げただけのものなんだけど……
それによってこの世界の環境とか、様々なデータが手に入ってる。でもそこに他の……二足歩行のウサギ以外の反応以外はなかった。それはまさに一切といっていい。つまりは……だ。つまりはこの世界にはこの特殊なウサギ以外いないということになる。
それって世界とはしてはすでに破綻してる。だってそれでは生態系は保てないからだ。それに……この世界のすべてをスキャンしてわかったけど……
『どうやら私たちは彼らにとってはまさに鴨が葱を背負って来る……でしょうね。この世界はすでに壊れてます。きっと壊したのはあの存在。そんな壊れいく世界では獲物は外から得るしかない』
「確かにそれなら自分たちはちょうどいい獲物ですね」
「ふん、狭い世界のお山の大将のくせに生意気ね」
この世界は終わってる。いや、世界一つを終わらせた奴を勇者たちは相手にしなければならない状態だということだと思う。