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ドローン談義は別にいいだろう。問題はリファーちゃんたちの状況である。どうしたらいいのかわからない二人だけど、そこで純粋なリファーちゃんパチパチと拍手を始めた。それもかなり激しくね。パチパチではなくそれはもうバチバチ――というほどだ。
それは拍手……だよね? それにはどうやらカメ人間たちもびっくりしたようだ。こっちからしたら彼らに拍手……という文化が伝わってるのかもわかんないけど。
「〇×……ふっ」
何かをカメ人間のコンダクターは言いかけた。リファーちゃんの拍手……というには強すぎるのその行動。きっと彼らもびっくりしたはずだ。
「ちょっと何をしてるの?」
ミレナパウスさんはリファーちゃんの謎の行動に追従できない。いや、当然だと思う。なにやってんの? って思うのは当然だ。すると……
バチン! バチン!
再び何やら音が重なってきた。
「え?」
ミレナパウスさん、さらに困惑である。カメ人間のリーダーであろう奴が再びその太ももをドラムのようにたたき出す。すでに真っ赤なのに……だ。そして二人の……この場合の二人というのはリファーちゃんとカメ人間のコンダクターである。その二人の視線が交差した。
そしてなにやらにやり……と二人してしてる。いや、何が通じてるの? わかんないよ。でも、コンダクターが続くと他のカメ人間たちも続いてその体をつかって音を出し始める。再び始まる不協和音。いやリファーちゃんが入ったんだから、ちょっとはましになる? とか思った?
むしろ逆である。余計に悪くなった。そもそも私たちはリファーちゃんに音楽――なんて高尚なものはまったくもって教えてない。てか教えられる人も……ね。いない? いや、ミレナパウスさんは楽器のたしなみとかありそうだけど……それにアイだって知識だけはあるはずだ。でも音楽って娯楽だからね。
私たち強いから余裕があるといっても、誰も音楽を普段から求めてる……ってことない。だからそういうのはまったくもって忘れてた……といっていい。
だって音楽とか教える前に、リファーちゃんには教えることがいっぱいあったのだ。それこそ『常識』とかね。なので音楽なんてここで初めて触れたはずだ。
そんなリファーちゃんはもちろん適当に手をたたいてるに過ぎない。そんなリファーちゃんはテンションがだんだんあがってるのか力が乗ってるみたいで、その音が増幅されてる。そのせいでリファーちゃんの音が一番デカいといっていい。
でもそれに対抗心をカメ人間たちは燃やしてるのか、さらにその体をいじめてるっていうね。このままじゃ、自分でその体を壊しつくすんじゃないか? それをリファーちゃんは狙ってる? いや、そんなわけないな。




