70
「これ自体は不死身じゃない。ですが、リファーちゃんもわかるよね? これにも力は残ってる。だから――」
ミレナパウスさんはそういってぎこちないが、腕をしなやかに動かして持ってた葉っぱを投げた。くるくると縦に回っていく葉っぱはカツン――と幹にぶつかって落ちた。
「…………………………」
「大丈夫だよ。もっとこう、こうすればいいよ!」
なんかちょっと気まずい空気が流れてしまった。本当ならあの葉っぱがグサッとささってミレナパウスさんは続きを紡げただろう。
でも葉っぱは落ちた。刺さらなかった。その前にリファーちゃんが葉っぱを岩に刺してたのも空気を重くしてしまった原因だろう。だってリファーちゃんは簡単にそれをやったように見えた。
一応先輩? なミレナパウスさんだ。だから後輩ができたことができなかった……ってことがね。内心恥ずかしい。
リファーちゃんは気にしないでってフォローしてるが、それをやられると逆にミレナパウスさんはいたたまれなくなるんだよ。
やめてあげて! って私は思った。
「いいの、別に刺さらなくてもいいんだし。不死性はなくても、あれにも力がのこってるってのを私は示したかっただけだから。あとちょっとやったら私だって刺せますし!?」
ミレナパウスさんはなんか早口になってた。それを聞いてリファーちゃんも「……う、うん」というしかない。そしてそれにハッとし「コホン」と取り繕ったミレナパウスさん。
もう一度大きく呼吸をして心を落ち着かせる。そして近くの葉っぱを触る。
「見てリファーちゃん」
そういってリファーちゃんを手招きした。それに嬉しそうに近寄るリファーちゃん。飼い主に駆け寄る子犬みたいである。きっと尻尾があったらブンブンと振ってるだろう。
「ほら、これ柔らかい」
「そうだね。強そうじゃないね。武器とはしては使えないね」
「……うん、このままじゃ使えない。でも――」
枝につながってる部分からミレナパウスさんは葉っぱをむしろ。するとしなっとしてた葉っぱがピーンとなってそのままになる。
硬質化したんだろう。
「面白いですよね。こんなの初めて見ます」
「そうなの?」
生まれて間もないリファーちゃんはそこまで経験がないから、こういうものだと思うのも仕方ない。
「リファーちゃん、力を感じてみて」
もう一つとって、それをリファーちゃんに渡すミレナパウスさん。自分がクシャッとしてしまったのは速攻で捨ててた。何をする気なのか? 二人のやり取りを黙ってみてる私。
「投げちゃダメ?」
「ダメです。中の力を感じるんです。そしてそれをとらえることができたら……」
目をつむって集中するミレナパウスさん。すると指先で摘まんでたピーンとした葉っぱがふとした瞬間にだらっとその姿を曲げたのだ。




