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「おおーここが!」
「なんだか不思議な場所ですね」
私はコクピット内で二人の言葉にうなづいてた。だって……ね。そこは普通の大地ではなかった。いや、遠目で見る限りではそこまで変ではなかった。ふつうに木々が生い茂って、川があって泉があって大きな海のような場所もあった。大陸ほどにデカい亀の背の大地は二つに分かれてるように見えてた。だから二つの大地がここにはあるはずだ。
もちろんだけど、特殊な場所に植生してるわけで、普通の生態はしてないだろうとはおもってた。だからこれは想定の範囲内ではある。どういう風になってるのかというと、実際見た通りに大地には植物がちゃんとあって、いろいろな鉱石だってみえる。けどそれらにはすべてカメの甲羅のような模様がある。なんか目が回りそうである。特殊すぎる模様とかじゃなく、円というか、六角形を重ねていったような……そんな年輪のようなものがすべてのものにある。それは草の葉一つ一つから、花びら一つ一つまで……だ。
「ちょっと自己主張強すぎない?」
そんな風に思った。それはきっとリファーちゃんもミレナパウスさんもそうだと思う。このカメ、実は自分大好きか? と思ったことだろう。そんなときにガサガサ……とカメ模様の草木が揺れる。とうとう最初の動物との接触か? と二人は身構える。だって特殊な場所だ。何が出てくるかわかったものじゃない。そんな風に緊張してる二人。そしてより大きくガサゴソ……と動いた草木をかけ分けて出てきたのは……ウサギ……のような動物だった。
「わぁ、かわいい!」
「リファーちゃん、もっと用心をして!」
「大丈夫、あれ?」
現れたウサギはリファーちゃんの声に驚いてその体をひっこめてしまった。どこに? それは体に背負ってた甲羅……だ。うん、そうなのだ。なぜかこのウサギ、甲羅を背負ってる。そしてびっくりしたからその頭と四肢を甲羅に引っ込めて防御態勢に入った。
「す、すごい! カチカチだよ」
コンコンと甲羅を軽くたたきつつそういうリファーちゃん。最初は警戒してたミレナパウスさんも、恐る恐るその甲羅に触れてヒンヤリとした感触を確かめてた。
「かわいいねぇ」
「ちょっと耳が出てますね。ぴくぴくしてます」
二人はなんかなごんでる。けど私はその動物が異質に見えて仕方ない。けどそれはきっと私が『ウサギ』という生物をしってるからだ。それに対して二人はウサギを見たことはない。カメはこの世界でみたが、まだ一体だけだ。それだけじゃきっと姿が固定されることはないんだろう。だから別にこの生物がカメのような甲羅を背負ってても別にそういう生き物――で納得できてしまうんだろう。
私には不気味に見えて仕方ないが、二人にとってはかわいらしい小動物でしかないみたいだ。まあ危険がないなら別にその認識で問題ないんだけどね。




