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「せいやああああああああああああああああああああああああああ!!」
そんな掛け声と共に、リファーちゃんがその拳を打ち上げる。何度も言ってるが、この亀とリファーちゃんのサイズの違いは明確だ。亀はとても大きい。その背に世界を背負う程に大きい。一つの大陸ほどに大きいだろう。そんな亀に対して、リファーちゃんの身長は160センチくらいである。私をベースにしてるリファーちゃんは私と同じ身長をしてる。
別に女性として高くもなく低くもない……そんな身長だろう。けどそれはつまり、亀に対してあまりにも私たちは小さい……ということだ。さっきの大きくなったトビウオならまだあの亀を傾けて空から落とす事が出来た。でも……亀から見たら人間なんて蟻みたいなサイズだ。
それにリファーちゃんは武器もない。リファーちゃんにあるのは時空間を操る力だけ。だからきっとそれを使うんだと思う。亀の顎の下に潜り込んでミレナパウスさんの魔法で勢いよく発射されたリファーちゃんはその細く小さな拳を振りかぶる。普通はそんな細腕じゃあのサイズの亀になにをやっても……だ。
普通なら何もやっても通用するわけがない。それは勇者とかアイでもなかなかにむずかしいんじゃないだろうか? 本気の本気ならあの二人ならどうにかできるとは思う。でもリファーちゃんにそれだけの力があるのか? と思った。けど……
ダン! ダン! ダン!
――と言う音がなんか断続的に響く。咆哮をするためにその首を持ち上げて伸ばしてた亀。亀の首って意外なほどに長く伸びるよね。だからそんな海と亀の首の間にもぐりこんで、顎を目指したリファーちゃんの拳は直接的には届いてない。けど……その音は届いた。そして次の瞬間――
ボキャァァァァ!?
――と亀の首が大きく揺れた。まさに下から顎にアッパーを食らったのか? というような首の動き。亀もきっと今、何が起きたのかわかってないだろう。私もわかってない。
「空間を叩いた?」
いや、それだけじゃあんなふうにあの巨大な頭を揺らすほどのことはできない筈だ。空間を叩いて力を伝えるとしても、リファーちゃんの力はそこまで……だし? ならば増幅させたんだろう。それしかない。けどそれはリファーちゃんの拳の力を増幅させたわけじゃないだろう。
きっとあの音……ダンダン! と鳴ってたあの音は空間に空間にぶつけてた音なのかもしれない。空間と空間をぶつけてさらにその先の空間にぶつけて空間越しに空間のぶつかった衝撃を亀に与えた……のかもしれない。確証はない。




