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(やりやがった……)


 俺はそんな思いでジャル爺さんをみてた。いや、流石にどんどんとその動きを洗練させていく都市核を宿した砂獣には彼等には荷が重すぎたと思ってた。既に犠牲者も出てしまったしな。助けられれば良かったんだけど……流石に強くなった俺達でも死者を蘇生させることは出来ない。それには理への介入が必要で、そこまでの力は流石に無いし、宿る事はない気がする。だがもしかしたらジゼロワン殿には、理への理解があるかも知れない。そんな気がする。


 でもまさかやりきるとは……流石に魔王も飛び出そうとしてた。これ以上は奴らでは無理と……そう判断する間近だった。だが、どうやら俺達の出番はなかったようだ。彼等は自分たちの力でそれをやりきった。確かに俺は彼等にその力を授けたが……


(正直、足りないと思ったんだけどな)


 砂獣の強さは想定以上だった。それに対して、彼等には肉体の限界って奴がある。確かにこの世界の人達は頑丈だが、それでも異物のような力を入れたんだから、無理をしてるのは当然。それに最初から大丈夫だと見極めた程度の力をあたえていた訳で……途中でジャル爺さんが言ってたみたいなあの砂獣を超えたような力はそもそもが授けてなんか無い。そんな一人に対してそんな力を与えたら間違いなく体が耐えられないからだ。


 だからそもそもあの砂獣を超える力なんてのはなかったはず。更に馴染んだ力は更に少なかった筈だ。実際どんどんと力を馴染ませて行ってた砂獣との力の差は縮まってそして離されて行ってた筈だ。時間が経てば経つほどに、勝つことは遠く、絶望的になっていた。でも彼等諦めなかった。俺達に頼る事は簡単だったはずだ。でもそれを選択することはしなかった。自分たちの世界は、自分たちで守る……勝ち取る……その意識。それがきっとあったんだろう。だからこそ、俺でさえ想定してなかった以上の力を出していた。


 皆が協力して差銃に立ち向かい、そして最後まで諦めなかったからこそ、起きえた奇跡。


「やるではないか」


 そう言ってる魔王もどことなく嬉しそうである。戦闘できなかったというのに、珍しい。それだけ何かを魔王も感じたのかも知れない。今の戦いは、本当に熱くなる物があった。俺も昔はあんな風に戦ってた。そう、今となりにこいつが敵として。不思議な物だよ。人生って。


「やったか? よしよし、まあ犠牲が二人なら上出来だ。俺の指揮が上手くいったな!」


 そう言って何やら高笑いしてる奴が一人。そういえばいたなあんなどら息子。そうか、結局はこいつの手柄になるのか……どれだけ凄い事をしたのか、分かってるのかあいつ? 


「おい! 都市核はどこだ?」


 ズカズカと砂を踏みしめてこちら側にやってくる。せっかく勝利を噛みしめていただろうに、あのどら息子の性で台無しだ。それにあいつは死んでいった人達に目もくれない。流石にイラッとくるぞ。


「これがその都市核ですじゃ」

「おお、ん? 誰だお前?」


 どら息子が都市核を差し出すジャル爺さんをみてそう言ってる。いや、確かにジャル爺さんは誰だ状態だけど……てかそんな簡単に渡すのか? あいつに? それでいいの? と思う。まあ立場敵にはそうせざる得ないんだけど……そうお持ってるといつの間にはかどら息子の側に魔王がいて、その腕を捻り上げていた。


「イダダダダ! まっ魔王様! なにを!?」

「これは勝利の証だ。貴様が触れて良い物じゃない。触れて良いのは勝者だけだ」


 そういった魔王に、俺は初めて「よくやった」と思った。

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