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万の数がいるといっても、それでも勇者もアイも負けることはないと思う。けどその数はおかしい。まさか……
「前の世界の時みたいに分裂してるとか?」
私はそうつぶやく。一応数くらいなら把握できるのだけど、向こうの世界は常に吹雪いてるせいで世界越しの探索には限界がある。だからこの数の本当の正体を探るのは難しいかもしれない。向かってくる巨体のウサギを相手に勇者たちはしてるわけだけど、受け身では進むことはないだろう。そもそもこのウサギたちは別にサンクチュアリを宿してる存在じゃないし。
でもまるでこいつらは勇者たちを宿敵かのようにおそってくる。勇者たちの強さだってわかってるはずだ。なのに、野生生物がここまで必死に立ち向かってくるのは正直おかしい。強い奴からは逃げるのが野生動物の本能だろう。だってそうしないと殺されるんだからね。ふつうは逃げる。でもこいつらは逃げない。ならばそこには理由があるはずだ。
この凶悪なウサギをすべて操ってる存在がいる? それがサンクチュアリを宿してて、勇者たちを敵と認定してるのかもしれない。だからこのウサギは逃げることはしない。ならば……
「エネルギーの放出が大きい個所を示します。そのどこかにサンクチュアリを宿した存在がいるはずです」
「わかりました。移動しつつ、対象の捜索を続けます」
私たちはそんなやり取りをして通信をきった。その直後だ……
『きゃあああああああああああああああ! ジーゼ様ああああああああああああああああああ私をお守りくださいいいいいいいい!!』
とかいうミレナパウスさんの声が聞こえてきた。私のことを神くらいに崇拝してるミレナパウスさんらしい言葉だけど……ちょっと重いよね。とりあえずリファーちゃんとミレナパウスさんの現状をみることにした。すると……
「なにあれ?」
なんか空中を飛んでるカメから攻撃が二人に注がれてる。おなかのほうには何もなかったはずだけど……てかカメの弱点ってひっくり返すことじゃん? 背中側は甲羅で硬い。でもひっくり返したら手足が短いせいで何もできなくなるのがカメである。そして海にいるリファーちゃんとミレナパウスさんはカメから見たらおなか側にいるわけだ。ならばカメからは何もできない……とか思ってた。
てかあのカメが何かするのか? とも思った。だってなんか周囲には無関心そうだったし? もしかしてリファーちゃん何かした? 私が見てない間に何かあのカメの地雷でも踏んだ? それであのカメが二人を敵と認識したとかさ。カメはその腹に無数の魔法陣? なのかそんなのが浮かんでる。それが輝くと、同じような魔法陣が海面に現れる。それによってさまざまな攻撃ができる……みたいだ。
それにを必死でミレナパウスさんはトビウオにつかまって逃れてて、リファーちゃんは楽しそうに楽しんでる。まるでアトラクションを楽しむようだよ。二人の温度差がすごい。




