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リファーちゃんとミレナパウスさんが海ででっかい亀と戯れてる。けどそこに勇者とアイの姿はない。ポニ子もそうだけど、あいつは自由人だからね。実際今はリファーちゃんの装備品的な? そんな扱いだし、とりあえず向こうにはおくってる。だからきっとリファーちゃんかミレナパウスさんが危なくなったら出てくるだろう。
そんなわけで向こうはその三人。なら勇者とアイはどこにいるのか? 船? いやいや、今船にいるのは私だけだ。となると、勿論他の世界……へといってるということだ。私は別のモニターに視線を移した。
「くっ……大丈夫ですか?」
「随分余裕ですね。私の心配よりも、自分の心配を……してください!」
モニターから聞こえるそんな声。声には疲労がみえる。それに……マイクが拾うのは2人の声だけじゃない。
『ぬおー! ぬおー!』
というなんとも言えない声……いやこれは声なのか? ミレナパウスさんやリファーちゃんがまるで夏のような場所にいるとするなら、勇者やアイはその真逆といえる。そう2人は今真っ白な世界にいるのだ。
視界もままならない、世界に空が有ることすらわからないほどの吹雪が続く世界に2人はいた。
そしてそこで、その世界の原生生物と戦ってる。そいつらは人よりも大きな3m超えの巨体をしてた。全身はモフモフで、けどその体はガッチリとした寸胴体型。きっと脂肪を蓄えることでこの寒い世界で生きてるのだろう。
二本の腕の先には凶悪な爪があり、人のように立つその姿の影にはぴょこんと突きでた長い耳。そんな奴らに勇者もアイも苦戦してた。
バフン――そんな音と共に長耳の生物が飛び上がる。その巨体からは考えられないくらいの跳躍力だ。同時に衝撃を与えられた雪が津波のように勇者達を襲う。更にそれは一体が起こしたことじゃない。無数の同じ様な種が同じようにとんだ。そのせいで巨大な雪崩が勇者を襲う。
でも、そこは勇者やアイである。焦りはしない。勇者は聖剣を抜く。そして抜刀。それだけで巨大な雪崩を切り裂いた。けどそれは終わりじゃない。決着じゃない。飛んでた奴らがその爪を向けて襲いかかる。この視界が悪すぎる中でも奴らは見えてるようだ。いや見えてるは違う。
奴らは音……を聞いてる。そしてその音で全てを把握してるのだ。だからこそ、その大きな耳を持ってるんだろう。そんな奴らは単純に強い。勇者とやりあえるほどに。




