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「さて……お礼参りといきますか」
リファーちゃんは心配なくなった。これで目の前のことに集中できる……と言うものだ。実際、リファーちゃんがいきなり襲撃をかけたから、ここにいたまん丸モフモフの本体はさっさと逃げ出した。それはとてもいい判断といえる。知性……とはちょっと違うだろうね。きっとそれは野生の本能……あの爪も牙もない生物がその力に気づくまでに培ってきた本能――とでも言える危機回避能力だと思う。
『ここにいたらまずい』
そんな風にきっと本体は思ったに違いない。 リファーちゃんを退けたんだから、私たちの事を大したことない奴ら……とか思ってもおかしくないと思うが、どうやらそんな短絡的な奴じゃないらしい。だから私と本体はおいかっけこをしてた。流石というべきか、この森はどうやらあの生物の庭みたいなものの様だね。まあずっとここで暮らしてんだろうし、それは間違いないだろう。それにどうやらこの世界には厄介な『穴』……があるらしい。
それはリファーちゃんのように自由自在に空間を移動できる……と言うものじゃないが、この森の至る所にその『穴』があるみたいだ。穴同士を距離を無視して移動できる空間の穴だ。そしてどうやらあのモフモフの生物はそれらをすべて把握してるっぽい。実はとても頭がいい生物なのかもしれない。なにせいくつもある『穴』がどことつながってるのか、きちんと把握してるようだからね。
相手が私……と言うかG-01ではなかったら、向こうの勝ちだった可能性は高い。なにせただ追いかけてるだけじゃ、あの小さな生物を見逃すなんて普通にありえる。それに、近くにかくれてると思ってたら、実は穴を使ってすでに遠くに行ってる……とかなるのだ。よしんば穴の存在に気付いたとしても、あの生物は穴の全てを把握してるんだから、一回は穴通って追いかけるとしても、何回も穴を通られると、絶対に見失うだろう。
ただ目の前の奴をおってればいい……というわけじゃない。この広大な森、いやこの世界そのものを盤上だととらえて俯瞰して捉える必要があるのだ。そしてあの生物が不幸だったのは、G-01にはそれか出来てしまった……という事だ。最初にドローンを飛ばしまくったのはどうやら正解だったみたい。
「さて、おにごっこは終わりにしましょう」
私は切り立った土を背にしたモフモフの生物の傍にその姿を現すよ。ブースターを吹かし、けどあくまで地面には足を付かない。数メートル飛んでる状態を維持して、それでいて激しく動くわけでもなく、G-01の顔を例の生物へと向ける。うむ……私が考えるG-01の格好いいポーズの登場が出来た。




