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「ふっかーつ!」
ぎゅっと握ってシュシュ――と拳を突き出しつつ、感触を確かめたリファーちゃんはその拳を天高く掲げる。しなやかな細い……白魚のような腕を取り戻したリファーちゃんは満足そうだ。
既に完全に元通りになってるリファーちゃんの腕。一応戻った腕を触診して、アイが問題ないか確かめてる。
「よし、大丈夫そうね」
「ありがとうアイ姉様! えへへへー」
アイに抱きついて頬ずりをしてるリファーちゃん。それを鬱陶しそうにしてるが、アイも振り払う様なことはしない。むしろもう薬品は必要ないだろうと、またもおっぱいにその箱をしまい込んでる。
「すごいな……」
そう呟く勇者。それはおっぱいに吸い込まれていく箱をいってる? それともリファーちゃんのもとに戻った腕を言ってる? どっちだ? ちょっと判断できない。だってリファーちゃんがアイに抱きついてるせいで、その瞳でどっちをみてるのか判断しにくい。
胸をガン見してるのか、腕のなのか……まあきっと腕だろう。だって勇者だよ? 流石に胸をガン見してるとは思いたくない。他の男なら胸だとおもうけどね。十中八九それしかないって思える。
けど勇者は違う……と思える。いや、信じてるといっていい。それだけ勇者は心まで勇者なのだ。
「貴方の魔法よりも確実だったでしょう?」
「そうだね。僕はそこまで回復魔法は専門じゃないから」
そういう勇者。うん、やっぱり勇者はアイのおっぱいに夢中になってる……なんてことはないね。間違いない。そんな会話をしてると、ミレナパウスさんが声をあげる。
「あ、あの! ごめんなさい!」
そういうふうにね。けど2人は……アイと勇者は視線をぶつけてそしてミレナパウスさんを見た。二人共首をかしげてる。するとミレナパウスさんが続きを言う。
「私が……もっと私が上の魔法を使えたら……」
そういうことね。確かにミレナパウスさんは回復魔法とかのほうが得意だ。元々が聖女的な働きをしてたから、そっち系に魔法の種類が寄ってる。でも……どうやら、特性による魔法の優劣? というのはG-01の中にあるデータではないみたいだ。
だから私達の所にきてからミレナパウスさんは回復魔法とかよりも、自身で戦えるような技術を上げてた。なので……ね。回復魔法はまだ元の世界の土台のままだった。いや、一応もっと便利に効率よく彼女の中の魔法の理論は補強されて改良されてる。
けどどうがんばっても私が用意した体を持ってる勇者とかアイにエネルギーというか力の総量で勝てるわけない。だから……
「違うわよ。言ったでしょ。あなた達は力を節約したほうがいい。だから薬を使ったの。貴方の魔法が今よりも洗練されてたとしても、私は薬をつかったわ。これは合理的な判断なの。わかる?」
厳しいけど、アイはそう言ってミレナパウスさんを慰めてた。慰めてるかな? まあアイらしいよ。




