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「リファーちゃん!! いったい何があったんですか?」
「回復魔法をかけよう。今の僕なら腕を生やすくらいできる」
「まってください。ここではまだ自身でエネルギーを変換できないのです。魔力を使うのはお勧めしません。私が治療します」
あっちはとても騒然としてる。まあ、いきなり腕を無くして戻ってきたのだ。騒然もするだろう。私だってびっくりだ。
『この失態はあなたのせいですよ』
そんな通信が届いてた。アイの奴……なんか怒ってるんですけど。はいはい、わかってますよ。これは確かに私の失敗です。認めましょう。まさか……まさかリファーちゃんが負傷するとはね。いや、ちょっとくらいは抵抗されると思ったよ。けどまさか一瞬で彼女の腕を食らうとは……流石にびっくりした。私も何が起きたのかわかってなかった。
リファーちゃんが帰って、腕を無くしたとしって、それから映像を見返したらどうやら『食われた』んだとわかった。てか……その映像で見るかぎり、リファーちゃんは一瞬の判断で時空間を使って撤退したみたいだ。もしもそこで迷ってたら……リファーちゃんが食いつかされてたかもしれない。
あんな可愛らしい見た目なのに……いや、本体はそこまで可愛くないけど……だって汚れた綿みたいなさ……長年使ったぬいぐるみから出てきたような……べちゃってした綿そのもの。
全体的に茶色くて、所々まだ白もあるけど、濃い茶と薄い茶が混在してる見た目。決して綺麗ではないその見た目。でもそれだけだ。牙も爪もなければ、頑強な鱗だって、更にはスキャンしたけど、あの毛には毒とかもない。
敵が触れてきたら、柔らかい毛をビシッとして敵の体に突き刺さる……とかの機能もない。攻撃手段なんてない……と思ってた。けど、どうやら違ったみたい。
ちゃんとあったようだ。それがリファーちゃんの腕を食った。
ズズズズズ――
私のモニターにはリファーちゃんが消えた奴の住処が映ってる。そこにはその体からいくつか半透明の触手? みたいなのを出した奴が映ってる。奴の住処は洞窟で、小ぎれいにしてると思ってた。
何も食った後……とかないから、やっぱり植物とか蜜とかそんなのを食べてると思った。けど違ったようだ。あれはきっとなんでも食べるんだ。食べるというか、吸う? あの触手がなんでも吸ってる。ものすごい速さでウネウネと動いて、穴を拡張してるのだ。
どうやらあそこは自然にできた穴じゃないみたいだ。もっと周囲をスキャンしたら自然にできたのか、それとも人工物なのか分かった筈だ。でも私はその違和感を見落とした。本当に私のせいだね。