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本当ならリファーちゃんならわかるような出入口があるんじゃないかな? と思って声をかけた。リファーちゃんは元はメタリファーだ。だからこそ、わかる時空間の境目? とかがあるのかもしれないと思った。
でもまあ……それがわからなくてもどうにかなる術はある。なにせこっちは超化学を有してる。先に作り出した過半の弧と半数の角、それは組み合わせて使うものだ。プログラムを施して、様々な物の起点に使える。過半の弧は私の手のひらに収まるくらいの銀色の欠けたサークレットというか? まるでCの字をした物体だった。そのCの開いた部分から半数の角……トライアングルの様なものを差し込む。すると組み合わさたった中央の空に虚数エネルギーが現れる。
いや、実際は現れてない。でも理論上にはそこにある。よくわからないが、実は虚数エネルギーはそこら中にある。でもそれに触れるきっかけと条件はとても浅く、深い。どういうことかという、触れるスペースは浅く、知るための量は深い。
こういうことを考えてると私も頭がいたくなってくる。だってよくわかんないし? 理屈としてはG-01のマニュアルを頭に叩き込むことでなんとか理解? できてる。過半の弧と半数の角……それを組み合わせて虚数エネルギーの抽出装置とすることでそれは『聖杯』と呼ばれる物体になる。
昔は……それこそ本当に遠い昔やら、世界によっては夢の神造機とも言われる『聖杯』。どんな夢も叶える装置とも言われるし、願いをかなえる万能の器とも言われるものだ。でもこの物体はなかなかに不安定だ。淀寧の泥……虚数エネルギーの反応不良によって現れる実の情操と名付けられてるその泥は虚数が実数になる反応不良のたまものだ。
不安定な聖杯は虚数エネルギーを完全制御が出来ない事が原因だ。そしてこの泥は厄介極まりない。本来の聖杯……いや、完璧な聖杯から溢れる虚数エネルギーは黄金の様にキラキラとしてた液体のように見える。
事実、今私が造った聖杯にはそれが流れてる。杯じゃないからぼたぼたこぼれてる? そんな事はない。聖杯が生み出す虚数エネルギーは正確な杯を成してるんだから、循環を成してる。流れてる黄金の液体は流れ落ちて少ししたら自身でねじれて上昇する。
そして更にねじれて、Cの左上辺くらいにはいって、貫通するようにして右下から出る。そこから更にねじれて前に上がってねじれて中央に戻る……みたいな? そんな動きをしてる。それを自然としてるんだからね。
これは別に私がやったわけじゃない。まあ、G-01の中にあるデータをそのまま聖杯には入れてるから、ある意味では私がやった……と言えなくもないかもしれないが、完璧な聖杯の作り方がG-01の中にあったからであって私は別になにかをやってるわけじゃない。
「さて、虚数エネルギーに私の信号を混ぜて……専用の扉を作る」
聖杯を作ったのはその為だ。完璧な聖杯が作れるのはとても便利でいいね。不完全な聖杯の泥は世界の全てを呑み込む厄災とも言われるものだ。なにせ飲み込んだものを全て泥へと変改する特性をもってるからね。
聖杯には世界を犠牲にするリスクがある。でも……私にはそんな変数はない。ありがたい。