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リファーは何かがあるとはわかってても、今すぐに時空間の力を使える……ってわけじゃないみたい。それに時空間だからね。なかなかに強力なのは確かだけど、暴走したらどうなるか分かんないってのがある。
強力な力とわかってるから、危ない。下手に使わせるような事をできない。そもそもが時空間の力を指導とかできないしね……
「指導か……」
私はコクピット内で呟いた。私には時空間の事はよくわかんない。いや、G-01の中にはきっとその文献だってあるだろう。とりあえずさっと目を通しておくかな。検索して該当するデータを宙に浮く簡易的なディスプレイに出すと一気に私の周囲がそれで埋まってしまった。著者事、年代別に分けて出したらこのざまだよ。どれだけあるの? ちょっと読もうかな? というくらいの軽いノリだったんだけど……これでは流石に……私は一番近くのウインドウを手に取った。
実際この仮想ディスプレイは実態じゃない。でもなんか私は触れれるのだ。その技術はよくわかんない。でも便利だからいっか……と思ってる。
「軽いやつがいいんだけど……」
手に取ったのはなんか難しそうな論文だった。もう表題から理解不能だ。なのでそっと手放した。うん……ノリくらいの感覚で問題ないだろう。つまりは危ないから私ではどうすることもできないってことで。
けどそれでは進まないのも確か。時空間の力を小出しにするとかさ……できないかな? そこで私は勇者を見た。勇者は魔法を使う。魔法の中には時間とか空間……その手の魔法って鉄板ではないだろうか? それこそ異空間への収納なんてのは読み物では定番だったし、時間の魔法は強者の証。
そして勇者や魔王は強者であり、その世界では一番といえるほどの魔法の手練れだろう。実際勇者も魔王も魔法よりもその体のフィジカルで戦ってるイメージが強いせいで魔法のスペシャリスト……という感じはまったくない。
けどそれは間違いだよね。ふたりともとても自然に魔法を使ってた。それこそ派手な魔法はわかりやすくて、花があるから印象に残りやすい。でも……本当の戦闘で大切なのはそういう魔法じゃない。もっと細やかな魔法だ。
それこそ身体強化は必須だし、更には要所要所でやってるブーストみたいな魔法。敵の攻撃の全てを防ぐ盾ではなく、わずかに軌道を逸らすような細やかな盾。それこそ気づかせずにそんな仕掛けをしたりさ……つまりは勇者は細かな魔法を戦闘で駆使してる。
派手な魔法ばっかり考えてしまうが、違うんだよね。つまりはやっぱり勇者はちゃんと魔法のスペシャリスト……ということだ。なので……
『勇者、リファーに内の力の発散のさせ方、教えてくれませんか?』
「わかりましたG-01殿」
なんの躊躇いもなく、勇者は頭を下げてくれた。




