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「これ……は?」
『これは空獣。全ての世界を無差別に、無限に食い尽くそうとする化け物です』
私は止まった彼女にそう説明した。すると彼女はその小さな、形のいい口で「空獣」というワードを何度も口にする。なにか感じるものがあるのは確かみたいだ。
「えっと……指さん? 私……これ嫌い」
『指さん……』
「G-01殿、その方は我々のトップだよ。一番強い」
「指なのに? じい……じい……ジイジェロバン?」
『ジーゼとでも読んでください』
「ジージェ!」
もうそれでいいよ。G-01と無理に呼ばなくてもね。てかこれでわかったけど、やっぱりだけど彼女はメタリファーとしての記憶はなくなってる。封じたのかどうなのかは知らないが、彼女はただのまっさらな少女と思ってたほうがいい。
「ジージェ! それやっ!」
シッシッ――と手で示す彼女。とりあえずこのままだと話もできないし、空獣のホログラムはしまった。
『それで、あれを見てなにか思いましたか?』
「嫌い。それと……大っきらい!」
それはなにか違うのかな? 彼女は頬を膨らませてプリプリしてる。その姿も可愛いが……彼女は生まれたばかりだし、メタリファーとしての記憶はないしで、子どもなんだ。私はあんなプリプリ怒るなんてできないしね。同じ顔をしてるはずだけど、あんな顔もできるんだって思う。
私はそもそもこんな場所にいるせいで、そんな表情の変化をすることもないと思う。でも……彼女はとても無邪気だからその顔はよく変化してる。そんなところが可愛らしい印象を醸し出すのかもしれない。
「私が、あいつ倒す!」
嫌いでそこまでいくか。でも……自然と彼女の口からはそんな言葉が出てきた。それは彼女の魂と運命にそれが刻まれてるから?
「空獣は世界の敵です。そしてとても強い。今の貴女ではとても」
そんな風にアイが馬鹿にしたように肩をすくめて首を横に振るう。すると彼女はむーとして「できるもん!」――と言いかえしてる。でも更にそんな彼女に「どうやって?」とか言って意地悪してるアイ。
生まれたばかりの子どもに対して一体なんのマウントを取ってるのか。恥ずかしいと思いなさい。
『わたしたちも最終的には空獣と対峙するときが来るでしょう。ここにいてもいいですが、私達と世界を巡る旅をしますか?』
私はとりあえず彼女の意思を確認することにした。指だからそんなに締まらないが、彼女はフーフーと怒りながらこういった。
「行く!」
――とね。