215
215話を抜かしてしまってたので修正しておきました。
「ありがとう。これで思い残すことはない。メタリファーが何をしたいかまではしらないが、まあ命となったのなら、その人生はそいつの物だろう。誰がか勝手に決めるものじゃない。ただ……」
ただ? とりあえずメタリファーはちゃんと生まれてくれた。それはとても喜ばしい事だ。まあなんで私の姿? とは思うが……なんかさっきからアイから「どういうことですか?」とかいう通信が届いてるが、私は一言――「わかんない」――とだけ言っておいた。だって本当にそうだからだ。他に何と言えと? 他のみんなは別に特別な反応はしてない。皆、興味津々ではあるけどね。私と瓜二つの見た目をしてる……なんてアイ以外にはわかんないからね。
まあポニ子もわかってると思うが、あいつはしゃべれないからね。もちろんだけど彼だってこの特異性には気づいてないだろう。でも彼の発言から、もう無事に生まれたら自分の手からは離れる方がいい……という認識なんだろう。そもそも彼はユアの卵がちゃんと機能した――という事の方が大切みたいだからね。
「ただ、そいつの『お父さん』は俺という事にしておいてくれ!」
『はい?』
何を言い出したんだこいつ? と思った。いやいや、貴方の関心は生まれるまでだったじゃん。なんでいきなり「お父さん」を主張しだしたの? 意外過ぎるんですけど。自身の手でユアの卵から新たな命を誕生させたことで父性でも目覚めた――とか? でも彼はこの船で色々な実験の果てにいくつものあってはならない命を生み出してる。だから父性が目覚めるとか今更なんだよね。一体何が彼にこんな事を言わせてるのか……
『どういうことですか?』
「どうにも何も、事実としてそうじゃないか? なにせユアの卵は俺が作ったんだ。そこから生まれたのなら俺が父親の筈だ」
『それなら母親では?』
私のそんな言葉に彼はふっと笑って浅いな……といった。
「世界には男が妊娠する世界だってある。だから別に父親でいいんだ」
『まあ、別にどうでもいいですけど」
「それではそういう事で。俺の格好いいデータを見せておいてくれ。お父さんだといってな」
『はいはい』
私は適当に返事だけしておいた。そしてそのまま彼は消えていったよ。そんな別れでよかったのか? と思わないでもないが、もしかしたらさみしくないようにという配慮?
「いや、ないな」
人間性が欠落してた奴だ。いきなりそんな気遣いをするとも思えない。ならばなぜ? もしかして……
「私の姿がかわいかったからとか?」
ぽつりとつぶやいてて私は首を振った。いやいや、まさかね。