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ユアの卵がバグったのはもしかしたらそのせいなのかもしれない。
(そもそもが私達は思い違いをしてた?)
そんな気が今はしてる。私達は生まれようとしてるメタリファーという一つの命に対して押し寄せてきてる無数の運命がバクを生み出してるのだと思ってた。なにか一つに絞れないから……生まれることができなくなってるのだと。でも……もしも……だよ。もしもそうじゃなかったら。運命が押し寄せてるのが原因じゃなくて、メタリファーが望むものがないからだったら? メタリファーは今どういう状況なのかわからない。一応こっちに何かを訴える発信はしてる。
でもそれが意識的なのか、無意識的なのかはわからない。だからこれも私の予想でしかない。けど事実として、ユアの卵はバグってて、そして運命は見る限り希望がない。これなら「生まれられるか!?」――となるのはしょうがないと思う。
いや、運命は絶対じゃない。絶対じゃないと彼もいってた。ただそういうレールが引かれるというか、そういう出来事が起きやすくなる……みたいなもので、絶対じゃない。けど絶対じゃないが……これだけどの運命も空獣に終わらさられるとなると、そこは結構確立高そうと思う。
いやこれはきっと私の運命の先も空獣によって終わらせられる可能性は高い。だって無関係……ではない。存在する世界全て……に関わることだ。なら、まだ生まれてない命も、そして今現在生きてる命も、全てに関わりが有ることになる。
空獣が全ての世界をいずれ飲み込むのなら……全ての運命の「終わり」「終焉」――は空獣によって決められてる。受け入れられなくても、このままでは確実に空獣の魔の手は全ての世界……全ての運命を飲み込んでいく。それはきっと間違いない。もしかしたらメタリファーはもっとずっと前からそれを知ってたのかもしれない。なにせ時空間を司ってるんだから。
もしもその全てが終焉に有るとしたら……いや、いつか……それこそ悠久の先に全ての世界が消え去る時――というのが来るのかもしれない。そうなったら、それもまた終焉だろう。
でもそれは有る意味で命で言うところの寿命だ。それなら、きっとメタリファーは止めようとはしないんじゃないだろうか? そんな終わり……なら受け入れられる。でも……空獣によっての終焉はそういうのじゃない。事故みたいな? それこそ、信号で停まってたら後ろから突っ込まれてしまうような……自分は悪くない事故みたいなことかもしれない。
それは流石に……ね。受け入れられないよね。まあメタリファーはその当事者にはなってないけど……なにか関係はあるのかもしれない。だからメタリファーは全てを飲み込む空獣という害獣をどうにかしたい……と。
「それなら私達は協力……できるかもしれないよ」
私はそんな風にメタリファーに語りかける。