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「おい、予備はあるか?」

「…………ありません」

「なん……だと……」


 どら息子がバッと魔王のほうをみてわなわなとしてる。けど拳を握りしめて顔を伏せた。どら息子でも魔王に文句を言うことはためらわれるようだ。そのくらいの頭はある。


「おい、お前達のを寄こせ!」


 そう言ってどら息子は軍の兵士からテントになる布を引っ張り取る。本当にどうしようもない奴だ。何であんなに成ってしまったのだろうか? バジュール・ラパンさんは良い父親ではないのだろうか? まあそこら辺は俺にはわからないことだ。何せそんな経験無いし……けど立派な人は何でも立派にやりそうなイメージある。

 そう、ジゼロワン殿みたいにだ。だが人とはそうそう完璧な物ではない――それを俺を知ってる筈だ。だから親が立派だからと言ってその子供も立派になるなんてことはない。まあけどある程度には成ると思うんだけどな。だってそれ相応の教育を受けているはずだろう。それなのに……あのどら息子はあんなんだ。


(そもそも教育をしてるのか?)


 よく考えたらこの世界の教育事情なんて物は知らない。だからどうなのかはわからないが……流石にあの町を治めてるほどの人の息子なんだから、何も教育を受けてないなんてそんなことは無いと思う。だよな? 


「こんな……おい! くっつけろ!!」


 どら息子は兵士達が持ってたテントでは物足りないのかそう言ってる。なんとまあ……な奴だ。まあ出来るならそれが一番ではあると思うけど……


「それは出来ません」

「何故だ!?」

「何故と言われましても……」

「どういう事なんだ!! こんな狭い場所では俺は満足出来ないぞ!!」


 そんなの他の誰も満足なんてして無いだろうよ。皆我慢して使ってるんだよ。こんな砂漠の真ん中で快適に過ごそうなんて誰も思ってはいない。普通はそうだろう。でもこのどら息子はそこをはき違えてるからおかしくなってる。

 まさかあのぶっ壊れたテントならこんな砂漠の真ん中でも快適に過ごせたのだろうか? だからこそ、庶民が使ってるテントとの違いに落ち込んでるのかも? 落ち込んでると言うよりは憤ってるって感じだけどな。


「ちょっと失礼」


 俺は近くの賞金稼ぎの奴に断って中を見てみた。うん……寝るスペースしかない。でも砂漠の真ん中で寝れるってだけで良いんだよ。だってそれを目的として達成してるんだからな。


「そうはいわれましても……我々にもこれの原理はわからないので」


 それはそうだ。兵士は戦うのが役目であって、技術的な事には関わってないだろう。それなのにどら息子はそんなことを関係ないとばかりにわめいてる。もうこいつ放っておいても良いんじゃないだろうか? 丁度この点とで寝ない奴はどうなるのかも見てみたかったしな。こいつならどうなっても心が痛みそうにない。丁度良い人材と言うことだ。


「あの……私達は、どうすれば……」


 そういって恐る恐るって感じで手を上げたのはどら息子が連れて来た女性達だった。多分あのデカいテントで一緒に過ごす予定だったんだろう。


「とりあえず誰かのところに一緒に……」

「何を言うか! この子達は俺のだぞ!! 他の奴と一緒になんて寝させられるか!!」


 いやもうほんと、お前は砂漠に埋まってろって思った。

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