ただの書斎です。
「よろしくお願いします、アクタガワ。」
「よ、よろしくお願いします…?…あの、俺敬語苦手っていうか結構無礼働くかもしれないけどえっと…大丈夫、なんですか?」
テンパっておろおろしている。
今のアクタガワのような状況が当てはまるんですね、初めて見ましたわ。
というか、本当に24歳なのかしら…?前世の私(19歳)よりも幼く見えるんですけど。
「大丈夫です、慣れてるので。」
主にお母様とお父様がイチャイチャしていてお客様がリア充爆発しろと鬼のような顔になっている時に必死に謝ったりとか。
何で私が謝らないといけないんですかね。お客様そっちのけでイチャつくのって十分、無礼だと思うんですよ。
とくにお客様が30後半にも関わらず婚約者がいない場合とか。見せつけてんのかオイって言われても仕方がありませんよね…。
「は…?いや、慣れるってどんな状況…!?」
「まあ、いろいろありましてね…」
「へ?」
「…いや、何でもないです。」
「…?あ、そういえば俺に聞きたいことがあるって、エルミニスターが言ってたけどなんのことだ?」
「ああ、すっかり忘れていました。こっち、来てください」
専属騎士になったので敬語はしなくてもいいのは分かっているんですけど、なんとなく年上にタメ口ははばかられるのです。
…それに、なんだか同郷の人と分かると、こっちの世界に合わせたお嬢様語が使いにくくなるといいますか…久しぶりにですます敬語使って喋りましたわ。
なんだか一気に日本の記憶へと意識が戻されたような感じがします。口調も、昔に戻ってきたと言いますか…そのトリガーになってるのは、やはりアクタガワなんでしょうね。
ちなみに今アクタガワを連れて、向かっているのは書斎です。少し改造しただけの、ただの書斎です。
魔法が使えるのが楽しくなってついつい少しだけ改造してしまいましたが、普通の書斎です。
ここがバレると、少し危険で…妹には、ここには絶対入らないように言ってますし、両親にも隠してます。
「うわあああ!凄い!!」
着いたのはただの書斎です。
自動ドアがあったり本が浮かんだり青い火がゆらゆら揺れていたり隠し扉があったり本が自動でパラパラめくれていたりペンが飛んできたり紙が飛んできたりライトがチカチカ点滅したりお寿司みたいに本棚がグルグル回っていたり椅子がふたつ飛んできたりテーブルが地下から現れたりしますけど、どう見てもちょっと改造しただけの書斎です!!
「普通の書斎です。」
「いやこれ普通なのか!?」
「とりあえずここに座ってください。」
「無視かよ!?」
「本題に入ります。」
「あ、うん…?」
「…アクタガワの出身地について教えてくれませんか」
「俺の?…何でだ?」
やっぱりそうなりますよね。
うーん…結局、死にたいか死にたくないかだと絶対に死にたくないですし、それでも日本にいる知り合いに連絡できる手段があるなら、知りたいです。
何も伝えきれていないのですから…
ということで、ついに私は自分が前世を持つ人間であること、日本人だったこと、そして知り合いに連絡出来たりする魔法を探しているということを言いました。