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平身低頭/謝罪/申し訳ございませんでした

編集済み

「お母様、お父様っ!!今まで、本当に、申し訳ございませんでした!!!」


「「ヴィア!?」」


 頭を90度に下げて、お母様とお父様に謝っております。“シルヴィア公爵令嬢”のしてきたことを考えれば、土下座謝罪でも足りないぐらいですけれども…。

 ここは日本から見ての外国と同じなのか、日本のような謝罪というものがあまり見られませんの。謝罪は自らの非を認めた時にしか行われないものでありまして。

 土下座自体の意味が伝わらないので、誠意を見せるためには最敬礼を、としておりますわ。


 当然服装は暗い色のドレス。“シルヴィア公爵令嬢”の大好きなショッキングピンクのドレスでの謝罪など謝罪ではございませんわ。

 “ゲームのシルヴィア公爵令嬢”が着ているのは黒色のドレスでしたけれど、いつ好みが変わったのかしら?



 前世と現世を合わせても“シルヴィア公爵令嬢”ほど最低な子供はございませんわ。───ぁあ…否。前世の私も、同じくらい最低で、親不孝な子供でした。



 ……………。“シルヴィア公爵令嬢”は欲しい物があれば直ちに強請り、聞いてくれなかったら叫ぶわ泣くわ令嬢でしたの。

 ちなみに“ゲームのシルヴィア公爵令嬢”このように両親にオネダリして王子の婚約者になったんですわ。

 それに気に入らないものがあれば絶叫し、騒ぎまくっていて、なのに両親が話しかけてきても普段は氷点下な態度をとっていましたわ。例えば、物に当たったり、大切な物を壊したりしていましたの。





 ちなみにお父様は整ったサラサラの青髪に柔らかい眼差しの金眼、落ち着いた雰囲気を持つイケメンでございます。

 名をリンドン・ピーター・エリオット。公爵エリオット様でございますわ。


 お母様はふわふわした金髪、透明感のあるピンクと紫が混じったような色の目。娘から見ても、お母様は見た目通りのとても優しい方で、まさに聖女のような美女ですわ。

 名をオリヴィア・アンドリア・エリオット。

 私がいくら最低なことをしでかしても、一切の育児放棄をせず愛情を持っていてくださることに、罪悪感が膨らんで破裂しそうですわ…


 …何故この2人から超悪人顔、迷惑者、しかも犯罪者まがいの“シルヴィア公爵令嬢”が産まれたのでしょうか?

 この乙女ゲームの七不思議の1つですわ。7つどころかたくさん不思議がありますけれど。



「ヴィア、いきなりどうしたの!?大丈夫なの…!?熱でもあるのかしら、いや頭痛…!?ヴィア、顔を上げて。怖い夢でも見てしまったの?それとも悪い風邪?」


「お母様。私、心を入れ替えることにしたのです。いつも迷惑をかけてしまって、本当に酷いことばかりを繰り返していたと、気づいたのですわ…こんな私を、お母様とお父様は、見放すことなく一緒にいてくださって…」


 親不孝者でも、家族のことが大好きで大切だった前世の私の罪悪感が、(シルヴィア)の心へと染み込んできて、価値観となる。

 ───この時、どこか他人事のように見ていた前世の私を理解して、融合した。


「ヴィア、ヴィア、お母様は怒っていないわ。泣かないで」


「ヴィア、泣かないでくれ。私たちはヴィアの親なのだから、どんなことをしようが大切な大切な宝物なんだ。ヴィアを見放すなんてありえないんだよ。ヴィア、こっちにおいで」


 フラフラとお母様とお父様の方へ歩いていくと、きつく抱きしめられました。そして、私は自分が泣いていることに気がついたのですわ。



「…ヴィア、あなたはこう見るとリンドンにそっくりね。いつまでもかわいいかわいい、私の家族」


「お、オリヴィア…私はかわいいよりもかっこいいと思われていたいのだけれど」


「ふふ、お父様とお母様は仲良いのね」


「ええ、そうよ。お母様とお父様は仲がいいの。ね、リンドン?」


「…!ああ、もちろんだ、オリヴィア、ヴィア!」


「く、苦しいですわ、お父様…!」



 思っていたよりも、あれだけ酷いことを繰り返していた問題児の私を、お父様とお母様は愛していてくれたのですわ。

 ───許されてしまったわ。


 お父様とお母様の間も、私のせいかその他の理由か、私が謝罪するまでは少しギクシャクしていたのですが…この日から、そう…イチャイチャとすることが増えましたの。



 ーーー


 そして、話を11歳である今へと戻しますわ。


 このあと私には…妹ができましたわ。

 名前を、リンドリア・ヴィア・エリオット。私はいつもリン、と呼んでいますの。

 とても懐いてくれていて、というかもはや地上に降り立った天使と言っても過言ではなく、身内贔屓抜きにしても美少女になることが間違いありませんの。

 性格はなぜか誰にも似ていませんけれども…まあ、私もお母様やお父様に似てませんし、隔世遺伝なのかしら?

 美しい金髪に黄金の瞳。どのドレスを着ても可愛くて、ピンク色も空色も、どんな色でも着こなしてしまう美貌の4歳児。

 すくすくと育ち、今では自分の意見をはっきり言えるようになり、走っては転び泣いていたのが昨日の事のようなのに、足がもつれることなく走れるようになり、きちんとした文章で喋れるようになり…

 リンの成長についてならいくらでも話せますわ。

 前世では妹はいなくて──厳密にはいる、のですけれども──だからこそ、こんなに小さい生き物が日々成長していくのを見るのは楽しくて可愛くて仕方がないんですの。






 私の大切なお父様、お母様。あの日、私が謝罪した日からもう4年も経ちましたが、今でもお互いを愛し合っていて、見てるこちらが恥ずかしくなるほどですけれども……両親が幸せそうなのは私も嬉しいですわ。



 多分、アルヴィン王子ルートのnormal endでの、お母様による射殺は回避出来そうですわよね。

 まあ、なぜ射殺するに至ったかは分からないままで、そこは少し不安ですけれども…

 私は、お母様に愛されていると知っていますわ。お母様が、私を殺すだなんて、有り得ないわ。

 “ゲームのシルヴィア公爵令嬢”がどんな行動をしたのか、それの何が引き金になったのか。私は分かりませんが、それでも、今では性格さえも違うキャラクターと同じ道を辿ることはないでしょう。…きっと、ね。

 私はお母様とお父様を愛していて、私も愛されている。今考えるのは、それだけでいいわ。





 ーーー


 過去に思いを馳せるのを終わりにして、未来へと目を向けることに致しますわ。今まで考えてきたのは、そう…現実逃避のようなものですわ…


 明日、そう明日よ。アルヴィン王子が12歳になったことを祝って、盛大にパーティが開かれるのですわ。

 これがほんっっっっとうに問題なのですわ…!


 “ゲームのシルヴィア公爵令嬢”はこのパーティにてアルヴィン王子に一目惚れをし、婚約者になりたいと、そう両親に告げてしまうのですわ。

 もしかしたら、このこともお母様とお父様を追い込んでしまったのかしら…あのアルヴィン王子に、自分たちの大切な娘を、と。

 アルヴィン王子がどんなものを抱えているのか、“シルヴィア公爵令嬢”は知っていたはずですのに…。一目惚れというのは恐ろしいですわ。それとも、“シルヴィア公爵令嬢”は無知だったのかしら。


 そして、私はこのパーティに出席するのが、怖くて堪らないの。なぜなら、───このパーティは、ゲームの幕開けを意味しているのですから。

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