やはり頼るのは騎士様
更新頻度が遅いです!
ごめんなさい!
「じゃあ仕方ない。一週間後、戦いに行くから待っててね?」
「出来ればずっと来て欲しくないんだけどな」
ライナー・キャロルはオモチャを取り上げられた子供のように少し拗ねながら去っていきました。
良かった…どうなるかと思いました。
「お嬢さん、ここだと落ち着いて考えられないから移動してもいいか?」
「はい。ここで考え続けられたら、ちょっとばかり引くところでした」
「結構辛辣!じゃあ…あそこのカフェはいいか?俺、周りの人に声が聞こえなくする魔法が使えるから、盗み聞きについて心配しなくてもいいぞ」
「ええ、大丈夫です。前も思いましたが、芥川って見た目より強いんですね」
「それって褒めてんのか?貶してんのか?」
「ノーコメントで」
路地裏から移動して近くにあるカフェに入りました。
人はそんなに入ってません。
カフェといっても日本にあるようなカフェではありません。家を少し改造したような感じです。
パンの美味しそうな匂いがします。そういや、もうお昼ご飯の時間でしたね。
消え失せていた食欲がダッシュで戻ってきてます。
「俺、この苺パンで」
「じゃあ、私はチョコパンで」
一応お忍びなので、わたくし、ではなくて、わたし、と言っています。そんなに大差ないかもしれませんが…。
それと敬語でもなくしています。お忍びでも、やるからにはガチです。
芥川に店の人や他の客に聞かれないように、認識妨害の魔法をかけてもらいます。
認識妨害は陰属性です。無属性魔法に陰属性魔法、他にもなにか使えるんでしょうか?
「先程の事だけど、どうすればいいのでしょう…あら、これ美味しー」
「よく食べながら喋れるな…それと、敬語とタメ語がごっちゃになって変になってるぞ」
「えー、本当に?そんなことないでしょう?」
「ほらな」
ちょっと納得いきません。
私、敬語とタメ語ごっちゃになってます?そんな失態、この私がする訳ないですのに…
「さっきの件な、俺ちょっと考えたんだけど……ヒロイン暗殺すれば全部解決じゃね?」
「芥川!考え方が危なくなってきてますよ!ヒロイン殺したらどうなるか分からない以上、暗殺は最終手段にしといた方がいいと思います!」
「あ、殺すのは最終手段ならOKなんだな」
「それで、他に策を思いつきません?私、魔王を倒す力とやらは全く思い当たりがないんですけれど…」
「うーん…魔王の力が働いてんのなら、いっそ他の国に逃げるか?学園に入るのは、お嬢さんにとって危ないと思うんだが」
「逃げても、魔王の力を止めることは出来ません。私の家がゲーム内で狙われたように、私たち公爵一家が魔王を倒せるかもしれない、というのは魔王も知ってると思います。
逃げた先でも、追いかけられて、関係の無い周りの人が狙われるのはいやです。それだけは、絶対に阻止したいんで…」
「…なあ、お嬢さんは、色々思い出して疑心暗鬼になってるかもしれねーが、俺…こういう時に頼る相手は一人しかいねーんだよ。少しだけ信じてくれねーか、俺とアイツのことを」
芥川が言っている人物は、誰のことかすぐに分かりました。芥川が信頼している人。
それはエルミニスター様、つまり牧師様…裏ルートの攻略対象です。
私は、どのエンドでも殺される悪役令嬢。
私は、もしかしたら牧師様に殺されるかもしれません。学園に入れば、その可能性は…上がります。
殺されるのは、やっぱりとても怖いです。そういうものだと割り切ることなんて、出来ないです。
例え1回死んだことがあっても、いや何十回死のうとも、この怖さはなくならないと思います。
でも、今は少しだけ芥川を信じてみようと思います。
一人で抱え込んでいるのは、とても辛いことだと何度も体験しましたから…
それに、芥川は私の専属騎士です。
何かあっても、芥川なら守ってくれる。
どうしてか分かりませんが、何故かそう思えました。
おかしな話ですね?
平和だった日本では人が信じられなかった私。
平和とは程遠いこの世界で私は人を、信じれています。
「それじゃあ、信じます。お願いしますね、騎士様?」
「任せとけ。アイツは腹黒でいけ好かない野郎だけど、頼りにはなるから」
私たちは、カフェを出て牧師様のいる…教会を目指しました。
正直言うと、怖くてたまりません。
ですけど、芥川と牧師様は何だか信頼しあっているみたいな雰囲気がしたので、大丈夫なのではないでしょうか…?
たかだかゲームの強制力で、彼らの今までの思い出を否定されるような、そんな世界なら…日本で生きていた記憶を持っている私たち異分子が、世界の仕組みを変えてやります。
世界相手に喧嘩を売るぐらいの無茶をしないと、私が殺される運命は変えられそうにないですから。




