第8話 主人の悲哀
久し振りに更新だ~
その後、モーリスさんに色々と話を聞いた。
彼は元々、今から400年程前には東欧の田舎の小さな村に住んでいたそうだ。いつからかヴァンパイアになってしまったということであった。初めは少し体が若返ったくらいにしか思っていなかったらしい。自覚らしい自覚もないまま時は過ぎ、いつまでも年老いることがない自分を周囲が気味悪がり、結局居場所が無くなって僕となった妻と共に故郷を離れたという。
その後はヨーロッパ各地を転々としていたが、その途中でうっかり売春婦を僕にしてしまい、妻との壮絶な修羅場を経験したとか、個人的にはどうでも良い話も幾つか聞いた。弥生さんが熱心に聞いていたけど、興味あるんだろうか?
それから、新天地を求めて200年ほど前にアメリカに移住し、100年ほど前からここで暮らしているということだった。
『私も初めは、自分が何者か分からずに悩みました』
モーリスさんは、旅の途中で色んな伝承を聞き、ひとつひとつを確認して回った。そして、遂に同族に出会ったという。その同族は、50人以上の僕を抱えていた。
『別に貴族とか言うわけではなく、単にヤリチンだったようですね』
ヤリチンって。
無節操に僕を増やしたその男は、そのしっぺ返しを食うことになったようだが、それは壮絶なものであった。原因は、リビドーヴァンパイアの特性によるものであった。
『リビドーヴァンパイアは、精を注ぎ契約を承認させることで、女性を僕にすることが出来ます。ですから、リビドーヴァンパイアには男性しかいません』
ふむふむ、男性しかいない種って、それは生物としてどうなのよ。あ、死物か。
『リビドーヴァンパイアの僕は、ヴァンパイアの眷族と同じような特性を持ちますが、違う点も多いのですよ。最も違うところは、リビドーヴァンパイアの僕は、体の維持に主人の精が必要ということでしょうか。僕は、主人の精無くしては、安息日を2つ超えることは出来ないと言われています』
そう、この僕の特性により、一定周期で主人は僕とベッドインしなくてはならないという。具体的には、7日目までにしなければ、8日目以降は体が維持できなくなって徐々に崩壊し、14日目には消滅するという。
何それ、何のAVだよ。
しかし、これは恐るべき事を意味していた。つまり、先程のヤリチンヴァンパイアの場合、7日間の間に50人とやらなければいけないということだ。嗜好や情愛としてではなく、義務としての行為なのだから、これは拷問に近いな。しかも、あまり想像したくはないが、8日目以降は下手するとスプラッタゾンビ状態の僕とやるハメに陥るとか、罰ゲームもいいところだな。当たり前だが、自分が消滅するのだから、僕も必死だろう。
というか、あれか、今思い返せば、弥生さんの発情っぽいのは、4日か5日おきくらいだな。ということは……。
『僕の数に上限は無いようですが、むやみに増やすのはあまりおすすめは出来ませんよ』
確かに、大変なことになりそうですな。
その後も、色々と話をしていたはずなのだが、俺はこれ以上の有用な情報を入手できなかった。というのも、盛り上がっているのか、通訳の弥生さんが途中からあまり日本語を使わなくなってしまったからだ。これには参った。意図的なものも感じないではないが、元が分からないので、はぐらかされるとどうにもならないという現実が。
「大丈夫ですよ~、ご主人様に必要な情報はお伝えしますから~」
そうは言われてもなぁ。
モーリスさんとの話も無事終え、俺たちは数日間の旅行の終着点、米軍基地にまた戻ってきていた。
どこに行っていたとか、取り調べでもあるのかと思っていたのだが、特に何も無かった。まあ、米軍のジープ借りてるくらいだし、どこ行ったかくらい追尾できるんだろう、きっと。
で、特に大きなトラブルもなく、俺はまた輸送機で日本へ帰る、はずであった。
次はいつ出来るかな~(汗
まあ、趣味なので気長にやりまーす