第7話 同族さんこんにちわ
夜が明けた。
昨夜は、というか明け方まで、出歯亀モニターもないと言うことで、久々にリミットブレイクしてしまった。体は若返っても、中身はおじさんな俺は、どちらかというと淡泊な方なんだが、弥生さんの盛り上がりっぷりもあってハッスルしてしまったよ。認めたくないものだな、若さ故の過ちというものを。
で、艶々?している弥生さんと一緒に、俺はジープで林道を爆走していた。
「ど、どこまで行くんだ?」
目的地も結局大して確認しないまま、俺は彼女の駆る『超絶技巧』なドライビングにひたすら耐えていた。道が悪いのもあるが、これはちょっと油断すると舌噛みそうなぐらい揺れる揺れる。
「それは、奥地ですよ~」
何それさっぱり分からん!と抗議の視線を送り、俺は固まった。弥生さん、その胸、やばいよ。まさしくバインバインって感じで縦揺れしてるよ。凄い、でかいと本当にこんなに揺れるんだ~。おじさんびっくりして目が釘付けだ。
「何見てるんですか~!」
今度は逆に弥生さんが俺に抗議の目線。数時間前まで散々ヤッてたのに、今更恥ずかしがることもないだろう、ってそう言う問題じゃないのか。
つーか、前見ろ前!
何度か走馬燈が見えつつも、何とか目的地に着いたようだ。
いやー、死んでても走馬燈って見えるんだね。おじさんびびった、びびった。ふー、死ぬかと思ったよ。
「ここみたいですね~」
林道から更に脇道へ入り、狭い道をしばらく進むと、木々に隠れるようにひっそりと小さなログハウスが建っていた。
しかし、何の目標物も無いのに、良く来られたな。
「そこは女の勘、ですよ~」
弥生さんがドヤ顔でポーズを取る。いや、それ意味分からん。
ジープから降りて、ログハウスに近づいた。実は、近づく前から、何だか妙な気配を感じていた。林道から脇道に入った瞬間、何やら違和感を感じたのだが、それはログハウスに近づくほどに強くなっていた。
「おい、何かおかしくないか?」
「そうですか~?」
訝しがる俺とは対照的に、弥生さんは全く警戒の色も見せずに、ログハウスの扉をノックした。
「はろー、はろー」
弥生さんの気の抜けた声が森に響いた。程なく、扉が開き、熊が出てきた。
俺たちは、熊ことモーリスさんを前に並んで座り、出されたお茶をすすっていた。
『遠いところからわざわざ、大変だったでしょう』
「ええ、出国するのにもひと手間でしたよ~」
ちなみに、俺は英語はさっぱり聞き取れないので、弥生さんに通訳を頼んでいた。彼女は、モーリスさんに英語で話しつつ俺に日本語でも話すという、本職の通訳も真っ青な活躍を見せた。こういうところ見ると、本当は才女なんだなと感じるな。普段はお気楽時々痴女みたいな感じなのにな。
『で、こんな辺鄙な場所まで何をされに来たのですか?』
「その前に、ずばり、モーリスさんはリビドーヴァンパイアなのですか?」
いきなり核心を突く弥生さん。モーリスさんは、少し驚いたような表情をしたが、すぐに元の雰囲気に戻ると、微笑んだ。
『やっぱり、そうですか。あなたはそちらの方の僕ですか?』
「そうですよ~」
『この場所は、私の僕から聞きましたか?』
「ええ、大体の場所ですけど~」
『そうですか、彼女も気付いたのでしょうね、同族だと』
モーリスさんは、俺の方を見た。その目は、若干の悲しみと哀れみを含んでいるように感じた。
じ、時間が……。