表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
う゛ぁんぱいあ55  作者: 中澤 悟司
6/20

第6話 ポールダンサー

 最寄りの基地というか、駐屯地までオスプレイの飛行訓練がてら運んで貰った俺たちは、何故か軍のジープまで貸して貰って、何とか言うちょっとした町までやってきていた。弥生さんの手に入れた情報によると、この町のクラブか何かでアンデッドさんが働いているらしいが、誰もそんなこと信じてないだろ、と俺は思っていた。実際にその光景を目にするまでは。

 夕方、そろそろかねぇ、ということで、そのクラブに入った瞬間、物凄い熱気を感じた。いくら外人のノリが良いとは言え、この熱気は尋常ではない。なになに、一体何が起きているの?ということで、英語の全く分からない俺に代わって、弥生さんが適当に男を捕まえて話を聞いた。彼女は、何故かそのイケメンと思しき外人が汗だくで息切れするまでひとしきり踊ったあと、涼しい顔をして帰ってきた。恐るべしは彼女の身体能力なのか、そもそもアンデッドだから汗をかかないのか、まあどっちでも良いか。


「踊ってくれたら教えてあげるって言われたので、踊ってきました~」

「あー、そういうことだったのね」


 楽しそうな弥生さんに、モヤモヤしたものを感じながら俺は聞いた。


「で、何か分かったの?」

「あ、聞くの忘れてました~」


 オイ。


 改めて、弥生さんが聞いたところによると、どうやらアンデッドさんはこのクラブで働いているらしい。なんでも、凄腕のポールダンサーだとか。


 ……へー、アンデッドがクラブでポールダンサーねぇ。


 で、よくよく聞けば、別に本人がアンデッドと言っているだとか、そういう話ではなくて、体が冷たい、どんなに動いても汗をあんまりかかない、昔からいるのに全然歳取ってない、ということのようであった。

 それって、単に若作りで冷え性な人、っていうオチじゃないだろうな。


「そんなことないですよ~。アンデッド板の職人を見くびってはダメですよ~」


 その信頼はどこから来るんだ、どこから。


 ひとつ奥まった部屋に、そのポールダンサーはいた。その部屋に入るには別料金がいるらしく、結構な金を取られた。そんなクラブ聞いたこと無いぞ、と思いながら奥に入った瞬間、観客のボルテージは上限を突き抜けたように感じた。客達はそれぞれ激しく踊っていた。独りで頭を振りながら踊っている者、ペアでくるくる回っている者、ラインダンスみたいなことやってるのもいるな。なにこの統一感のない無茶苦茶なダンス。そして、その部屋のど真ん中、柵で囲まれたステージの上に、彼女はいた。片手で、真横にくるくる回っていた。こ、これは凄い、色んな意味で。

 次の瞬間、俺の横から影が飛び出したかと思えば、ポールを掴んでダンサーと同じようにくるくる回り出した者がいた。突然の乱入者にも、ダンサーは全く動じず、それどころか手を繋いでアクロバティックな動きまでやり出す始末。乱入者の方も、負けず劣らず人間離れした動きで観客を煽り、部屋の熱気は更に上がった。


 いや、それやるとモロパンだからどうかと思うんだよ、おじさんは。


「聞いてきましたよ~」


 散々踊りまくって、部屋の人間が幾人か酸欠でぶっ倒れるほどヒートアップした後、休憩がてら弥生さんはダンサーと話をしてきたようだ。俺?全く雰囲気に乗れんし、やかましいしでうんざりしながら、カウンターで呑んでいたよ。バーテンも何言ってるか分からんし、適当にオーケーオーケー言ってたらゲロ甘のカクテル作られて、もうイヤだこんな扱い。


「探しましたよ~。勝手にカウンター行ったら分からないじゃないですか~」

「キミは俺にあの場で踊り狂えと?」

「あははー、冗談ですよ~」


 弥生さんは、俺がもてあましていたゲロ甘カクテルを躊躇もせずに掴むと、一気に飲み干した。


「ちょ、それソフトドリンクじゃないぞ」

「分かってますよ~、でも喉乾いちゃって」


 彼女は舌をペロッと出し、下唇を舐めた。おおう、ちょっと艶っぽいな。


「あーおいしい、さっぱりしてますね~、これ」


 どこがやねん。


 さて、仕切り直し。


「どうやら彼女は僕さんみたいですね~」


 僕、ということは、弥生さんにとっての俺みたいに、どこかに主人的存在がいるということか。でもそう簡単には会えないんだろうな。


「主人の居場所も聞いてきましたよ~」


 はやっ、情報収集はやっ。


「今日はもう遅いんで、明日行きましょう~」

「ま、まあそうだな。でもよく考えたら泊まる場所も」

「それも聞いてきました~」


 どうやらすぐに借りられるモーテルがあるらしい。モーテル、モーテルかぁ。何か響きがやらしいんだよな、偏見だろうけど。


「早く行きましょ~」

「え、め、飯はどうすんの?」

「ご飯なんてどうせ必要ないんですから~、食べなくても死にませんよ~」


 いや、まあ確かにこの体、食事はしなくても大丈夫っぽいが、それ止めると本当に人間じゃ無くなるような気がして仕方ないんだよ。


「それよりも、私、何だか体が疼くんです、もう我慢できませんっ」


 またかよ。弥生さんてば、なんだか痴女っぽいんだが。

予約掲載使ってみたけど、ちゃんと掲載できてるかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ