第4話 ミイラ取り、念願の?ミイラになる
あれから2日後、なんと、弥生さんは死んでしまった。生物学や医学的には。いや、それってまさしく死んでるってことなんだけど、なんだけど、ねぇ。
「私もアンデッドになるなんて、思ってなかったです~!」
いや、そりゃこんなことになるなんて、俺も夢にも思わなかったよ。俺の横で無邪気にはしゃいでいるように見える弥生さんを見ながら、俺は頭を抱えていた。
どうしてこうなった。
分かってるんだよ、何となくは。大丈夫だっていうから、ゴム外した俺が馬鹿だったんだよ、きっと。
弥生さんは、『汝、我が僕となるか』と俺に聞かれたから、なると即答したと言うが、俺はそんなことは言っていない。それとも、無意識に何かやったんだろうか。うーん、分からん。
俺は関係者各位にどう詫びれば良いかと、胃を痛めていたのであったが、当の弥生さんは、悲壮感の欠片も感じさせない、のんびりした感じであった。
「死んでしまったわけではないんですから、いいじゃないですか~」
いや、それ微妙に違う気がするが。
で、弥生さんもめでたく被検体となったわけではあるが、研究所のやつら、やたらと身体測定ばっかりしてるのは気のせいだろうか。あの連中、欲望に素直過ぎるぞ。
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
弥生さんが俺の僕とやらになってから数日、俺も含めて、分かったこと、分からなかったことを彼女に教えて貰った。他の連中は、俺に説明しようという態度すら見せないからな。まあ俺も、自分だけの時はあまり興味も無かったのだが、他人を巻き込んで?しまった以上は、幾らかは責任を持たなければ仕方ないだろう。
まず、俺も弥生さんも、生物学的、医学的には死んでいる、ということらしい。脈もなければ心音もしないし、呼吸もしていなければ、脳波も出ていない。それでどうやって会話したり考えたりしているのか、という突っ込みをしたいところだが、それはさっぱり分からないらしい。
仕方ないので、身体の機能テストを中心にやっているらしい、弥生さんは。それって、代謝を確認するからってノーブラタンクトップで走らせてみたり、触感テストとか言って羽で全身くすぐってみたりしてるアレのことか、へー。
俺の方は、相変わらず良く分からん注射を打たれたり、下らないことを質問されたりと、全然変わっていない。いや、身体機能検査もやってることはやっているが、どう見ても研究者達の気合いの入り方が違うんだよ、俺と弥生さんじゃ。もしかして、仲間を助けたい使命感に燃えているとか?
……絶対無いわ。
あー、話が逸れた。俺の身体機能だが、生前?よりも強化されている部分と、劣化?している部分があるようだ。視力や聴力、嗅覚は幾分強化されているようだ。味覚はそんなに変わらないかな、評価指標が無いから何とも。明らかに弱くなっているのは触覚というか痛覚で、寒暖や痛みに鈍感、というかあまり感じない。ちなみに強い刺激に鈍くなっているだけで、弱い刺激でも分かることは分かるので、日常生活で困る事は今のところ何もない。どうでも良い話だが、快感にも鈍くなっているのか、早いのが若干改善されていた。弥生さんの貴重な初めての経験が一瞬で終わらなくて良かったと、胸をなで下ろしたものだ、ふう。
あと、あまり眠くならなくなった。とはいえ、夜行性というわけでもなく、日中も以前と変わらず活動している。太陽光で灰になることもなければ、十字架やニンニクも平気である。血が吸いたくなることも特にないので、いわゆる吸血鬼では無さそうである。加えて言うならば、人肉が喰いたいと思うこともないので、屍肉を貪るゾンビの類でも無さそうである。じゃあ何?と聞かれると、今のところはどうにも答えようがない。まあ、分からないものは分からないので、分かるのを気長に待つしかないだろう。
それはそうと、俺の僕になってから3日目を過ぎた辺りからだろうか、弥生さんはやたらと俺にくっつくようになった。今も、実験結果を話しながら、顔が明らかに上気しているのが分かる。
盛ってる?
失礼と思いつつ、彼女を上から下まで観察する。あ、何か内股をすり合わせてモジモジしている。えーっと、これって。
「あ、あの~、何だか~、無性に欲しくてっ、我慢がっ」
えーい、据え膳喰わぬは男の恥よな。
ちなみに、今回もモニターにケツを向けることは忘れなかったぞ。
お読みいただきありがとうございます。
この作品は、細かいことは極力気にせず、勢いだけで書いておりますので、多少のラフさはご容赦を(えー