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う゛ぁんぱいあ55  作者: 中澤 悟司
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第20話 次は欧米か

 五月さんの実家に行ってから、俺は同じことを悶々と考えていた。そう、今の俺の立ち位置だ。

 成り行きとはいえ、弥生さんと五月さんを僕にしてしまった以上、彼女たちの人生?には責任を持たなくてはいけないだろう。というか、持たざるを得ない。彼女たちは定期的に私と交わらないと朽ちるというのだから、扶養家族どころの騒ぎではない。

 が、聞いたところで何かが変わるわけでもないだろうし、いつまで続くか分からないが、今はこの怠惰な生活を楽しむというのもありなのかもしれない。ということで、俺は問題の先送りを続けていた。なんだかんだ言いつつ、イイのだから仕方ない。


 そんな感じで何日か過ぎたころ、マンションに来客があった。モニター越しの感じでは、荷物の配達では無いっぽい。なんかキャリーバッグ持ってるけど、宗教勧誘か訪問販売、はたまた保険のセールスか?


「お客さんだよ、弥生さん」

「い、今良いところなんで、出てもらえます~?」


 はあ、出るのは良いんだが、相手の素性が良く分からんしな、勧誘とかだったら帰ってもらえば良いか。そう考えながら、俺はモニターに話しかけた。


「はい、どちら様ですか?」

「あ、ワタクシ、グレイシア=ローゼンタールと申します」


 モニターの小さなスピーカーではあるものの、そこから物凄く透明感のある、要は育ちの良いお嬢様っぽい声が響いた。


「はあ、ローゼンタールさんですね、こんにちは」

「はい、こんにちは。突然の訪問となり恐縮なのですが、こちらに、ヴァンパイアの方がいらっしゃるとお聞きし…」

「はいはい~、入ってからお話ししましょうね~」


 外人娘の声は、後ろから突っ込んできたアンデッドマニアに遮られた。


◇◇◇


 今、どう見てもリビングには場違いな妖精が、俺の目の前に座っている。


「はい、ローゼンタールさん、いや、グレイシアちゃん」


 いきなり掴みに行った弥生さんにも負けず、ローゼンタール嬢はふんわりと笑った。


「はい」


 次の瞬間、俺と弥生さんは硬直した。本当に人間なのか、この娘。


「と、尊い!!」


 うん、弥生さんや、気持ちは分かる。気持ちは分かるが、そこでエビ反りは不審者感が半端ないからヤメレ。


「で、尊いグレイシアたんは、ヴァンパイアに何の御用なのかしら~?」


 弥生さんいきなりのど直球に、今度は俺がのけ反りそうになった。いや、その前に聞くこと色々あるんじゃないのか?なあ、色々と!


「はい、ワタクシを眷属にしていただきたいのです」


 俺は、状況を理解するのを放棄した。


◇◇◇


 弥生さんとローゼンタール嬢の会話を横で聞いていたのだが、二人が途中から外国語、多分ドイツ語かな?で話し始めたため、内容が全く分からなくなった。しっかし、あんな早口で喋ってるのに付いていける弥生さんって、やっぱり才女なんだろうなぁ、と思っていると、当の弥生さんがこちらを見てにっこり笑った。『もっと褒めてもいいんですよ~』とでも言いたげである。

 なんか最近、以心伝心というか、思考が漏れてるような気がするが、気のせいだろうか。


 ひとしきり話し終えたのか、弥生さんはいきなり立ち上がると、俺の腕を引いた。


「ん?どうしたの、弥生さん」

「そんなの決まってるじゃないですか~」


 弥生さんは、ニコニコと笑っている。思わずローゼンタール嬢の方を見ると、頬を染めて目を逸らされた。


 は?まさか…。


「い、いやいやいやいや、幾ら何でも駄目だから、こんな初対面の知らない外人の、しかもどう見ても未成年とだなんて、流されるにも程があるから!」

「え~、今更じゃないですか、ご主人様~」

「だからご主人様はヤメレ」

「こーんな、妖精みたいなコとなんて、これ逃すともう無いですよ~」


 いや、何だよその呼び込みの勧誘みたいな言い方は。


「それとも、パツキンじゃないから嫌、とかですか~?」


 なんでそうなる。確かにローゼンタール嬢は金髪碧眼、いわゆるゲルマン系の容姿ではなく、プラチナブロンドの長い髪にグレーの瞳、つまりはスラヴ系とでも言うのだろうか、そういう容姿である。欧州人にしては目鼻立ちが濃すぎないので、俺の好みど真ん中ではあるが、あるが!


「いや、俺はそういう話をしているわけじゃないんだけど!」

「じゃあ本人の希望なんだし、いいじゃないですか~」

「いや、だから未成年だってい…」


 必死に言い募る俺に、弥生さんの悪魔の一言。


「それって、日本人の話では~?」


 直後、ローゼンタール嬢に抱き着かれ、紅潮した頬に潤った瞳で見上げられた俺は、抵抗空しくタガを外してしまったのであった。

このお話はフィクションです(今更)

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