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第六十一話 九覇亜半壊

 魔法というのは、放つだけではない。

 その力を肉体に留めて、身体能力の向上や、拳に魔法を付加させて攻撃する方法もある。

 コンの「泡姫」という形態もその一種。

 自分の体に泡を纏うことで、どのような能力や戦い方があるかは未知だが、コンからはよほどの自信が伺える。

 だが……


「ぎゃああああああああああ」

「坊や……ッ!?」


 自分目掛けて飛んでくるチューニに身構えるコン。

 あまりの勢い故に、コンは思わずカウンターで反撃してしまう。


「ぐ、メガ・バブル時代エラ!」


 先ほどよりも大きいシャボン玉を、チューニ目掛けて連射。

 コンは、泡に塗れたその姿で、チューニの正面に両手足を大きく広げて立ち、己の身に纏う泡から無尽蔵にシャボン玉を放出した。


「ほぎゃあああああああ!?」


 あのカイゾーですら耐え切れなかったシャボン玉攻撃を、しかも先ほどよりも大きいサイズで連射される。

 ガイゼンにぶん投げられたままのチューニに防ぐ術は無く、悲鳴を上げたままチューニはシャボン玉の弾幕に突っ込んで……


「あっ……」

「…………えっ?」


 全て、何事も無かったかのように無効化して消滅させた。

 そのとき、コンは一瞬何が起こったか分からなかったが、即座にあることを思い出してハッとした。


「そういえば、この坊やは先ほども私の変化を……!?」


 それは、麓の街で初めて会った時、人間の姿に変化していたコンはチューニと接触したことによって変化が解除された。


「な、なに? 能力? 相殺? 回避? 無効―――」


 チューニは何かとてつもない能力を秘めているのではないか? だが、そこにたどり着くも、それ以上を考える時間などコンには無かった。

 シャボン玉を消されたことに驚いて呆然としてしまったことで、もうチューニは自分の目の前に居る。

 回避は不可能。

 現在、コンは両手足を大きく広げて立っている。それはまるで、正面からやってくる者を激しく抱きとめる態勢そのものだった。


「きゃっ!?」


 チューニの体を正面から受け、その勢いに押されてコンが地面に押し倒され……


――ボンッ!


 

 二人が接触した瞬間に、コンの身に纏っていた魔力が突如消失。



――モミ!


「あんっ……ん……」


――チュッ


「んくっ!?」


 

 コンの身に纏っていた魔法が完全消失。すなわち、泡の衣服が消滅したのである。

 既に、紐アーマーを脱いでいたコンは、もはや全裸。

 その瞬間、男たちは歓喜の声を上げる寸前まで言ったが……


「「「「「あっ…………」」」」」


 結局上げられなかった。

 その理由は二つある。

 一つ目は、紐アーマーの時に唯一隠されていた、胸と下の箇所がようやく見られるかと思ったが、見られなかったからだ。

 二つ目は、そもそも何故見られなかったのか。それは、コンに突っ込んだチューニが倒れこんだ際に奇跡的なポジションで、コンの重要部分を隠していたことと、そのポジションが思わず息を呑んでしまうほどのものだったからだ。


「……ん、な、え?」

「もごっ?」

「あん!」

「………? ……? ……????」

「あ、ん、だめ」


 チューニの態勢。

 まず、両手を伸ばしてコンの両胸を鷲摑みにしていた。弾力があり、チューニの指が食い込んでぐにゅっと形を変える胸。

 さらに、チューニの顔面。なぜか、チューニの顔はコンの「紐アーマーで隠していた下の部分」に……


「……………」


 掌、口、感じる感触や女の香りに一瞬頭が蕩けそうになるチューニだったが、ようやく今の自分がどうなっているかを把握。

 そして……


「ふびゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 チューニが顔を真っ赤にして上半身を起こして飛び退いた。

 だが、そのとき……


「あ……」

「あっ……」


 コンとチューニの互いの目が合い、チューニは目の前のコンの生れたままの姿が目に入った。

 チューニの背中に隠れて男たちには見えず、回り込んで見ようとした男たちは村の女たちに腕を掴まれて覗きこむことが出来なかったが、唯一チューニだけは見た。

 

「あっ……う、あう……」


 チューニは、女の裸体を見た経験等ほぼ無い。唯一、冒険団結成の日に元クラスメートたちとの戦いのハプニングで見ることにはなったが、あの時の精神状態からそこに影響は無かった。

 しかし、今は違う。

 目の前には、まだまだ発展途上だったかつてのクラスメートたちとは違う、正に完全に実った果実。

 狐耳に狐の尻尾という異種族ではあるが、それもまた余計に色気を感じさせる。

 大きく柔らかく形の整った胸。柔らかさは実際に揉んだから確認済み。

 紐アーマーで隠されていた胸の一部もようやく視界に入り、その形もまた美しく色づいて、吸い寄せられそうになる。

 

「わ、ふぁっ……あわ……」


 そして何よりも、今のコンは、生れたままの姿で、開脚状態で横たわっている。

 その開脚状態により、チューニは己の人生で初めてのものを見てしまい。


「ほげええええええええええええええええええ!!!!」


 鼻血の噴水を天に放ったのだった。

 

「ぼ、坊や!?」

「「「「チューニ君があああああああああああ!!??」」」」」

「チューニ、どーしたの!? 血がいっぱい……ダメ、チューニ死んじゃやだ! ロウリと結婚してないのに、死んじゃやだ!?」


 もはや、敵すらも顔を青ざめさせるほどの出血するチューニ。

 だが、すぐにコンはようやく今の自分の状況を知って、顔を赤らめさせる。


「きゃっ、わ、わたし、なんという、は、はしたない!」


 これまで、裸同然の紐アーマー姿だったコンだが、全裸だけは流石に恥ずかしかったのか、急に頬を紅潮させて激しく動揺。

 

「いや、このままじゃ多くの男に見られ……っ! こうなったら……!」

「ほげっ?」


 動揺したコンは、とにかく自分の裸を見られないようにしないとと思い、目の前に居たチューニの腰を両足でガッチリホールドして、自分に再び抱き寄せて、自分の両手でチューニの頭を胸に抱き寄せて、自身の裸を見られないようにガードした。


「う、動かないでください、坊や!」

「ほぎゃうほぎゃあああああ!?」

「あん、う、ちょ、落ち着いてください、あの、こんこん!」


 しかし、抱き寄せられたチューニは、ある意味で裸の女に強き抱きしめられているということ。その事実に余計に精神が崩壊して、ついには真っ白になりながら……


「ぼ、ぼくの……ローブ……」

「えっ?」

「きて……くださ……い」


 息も絶え絶えになり、失神寸前になりながら、ようやく搾り出したチューニの言葉は、裸のコンのために自分のローブを使ってくれというものであった。


「……坊や……」


 その、チューニの純粋な心に、コンは動揺していた心が徐々に落ち着きだし、それどころか心が少し温かくなった。


「……これまで……私の周りに居た男たちは……私の紐アーマーばかりに目を取られて……いやらしい眼差しを向けるだけで……それなのに……まだ、坊やとはいえ、……こんな男も……」


 こんな状況ではあるが、なぜかコンは自然と頬をほころばせて、チューニの頭をポンポンと撫でていた。

 少し、母性本能がくすぐられたのかもしれない。だが、その時……


「あら? 何か当たって……あら? ふふふふふ、まだ坊やでも……ちゃんと男の子なんですね。私の足に……こんこんって、当たってます♪」


 チューニと抱き合っていて、何かを感じたのか、コンはクスクスと笑った。

 そんな二人の姿に、周りの者たちは……



「「「「「なんでこうなった???」」」」」



 と、口をそろえてそう呟いた。


「ぬわははは、チューニよ、一つ大人の階段を上ったな」

「おのれ、コンめ! イチャコラと……なんて思っていたのは、もう過去のウチ! 嗚呼、掛け替えの仲間たちよ、それぞれの出会いに乾杯しよう!」

「……あのコンという女も、相当の実力者であったはずだが……チューニの能力は恐ろしいものだな」

「あの、あのお、えっと、そんなことより~……その、わ、私も、あの男の人みたいに、ガシガシっとモミモミ……さ、させてもらいたいといいますか……」


 ガイゼンもイキウォークレイもマシンもタマモも、いつの間にか並んでその様子を眺めているだけだった。

 そんな中……



「ガギャアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」



 ジオの雷を受けて痺れていたドラゴンが、このタイミングで復活して激しく咆哮した。

 その叫びに村が、水田が、そして木々が激しく揺れ、ウヤムヤになっていたはずの空気が一瞬で吹き飛んで、村人たちの顔に再び恐怖が甦る。


「グルルル……」

「ん?」

「ウガアアアッッ!!」


 そして、ドラゴンはジオを見て激しく唸る。それは、自身に痛みを与えたジオに対する怒りが全面に出ていた。


「ひっ、お、おい、ジオ! あいつ、こっちを見てるぞ!」


 ドラゴンが怒りを剥き出しに睨んでくる迫力に、ジオの傍らに居たメムスも後ずさりしてしまう。

 だが、ジオは苦笑しながら……


「おい。なんか……俺だけ、相手が色物じゃなくて、ガチじゃねーか?」


 他の仲間たちと違って、自分だけが獰猛なドラゴンが相手。

 睨まれて吠えられるより、そっちの方がジオにとってはおかしかった。


「ぬわははははは、代わってやろうか? リーダー」

「加勢しよう」


 ジオの愚痴にガイゼンとマシンが出てこようとするが、ジオは手で制す。


「別にいらねーよ。俺も俺で、色々とワイーロのときからの鬱憤が溜まってるんでな」


 面倒ではあるが、加勢は要らない。自分一人でやるとジオは告げ、「それならば」とガイゼンもマシンも大人しく引いた。


「ちょ、お、おい、ジオ! お前、何を言ってるんだ!」


 とはいえ、ジオの力を知らないメムスにとってはそれを無謀としか取れず、慌ててジオに怒鳴りつける。

 だが、ジオはメムスの頭を軽く叩いて……


「これをどうにかしてやるから、今度は俺も盛大に歓迎してくれよな?」


 雑用させられてたおかげで、自分だけは歓迎の宴に参加できなかったので、ドラゴン退治をすれば十分だろと、ジオは笑みを浮かべながらメムスに告げる。

 その、あまりにも自信満々な笑みにメムスは言葉を失い呆然とする中……


「おらあああ、泣かせてやるぜ、クソトカゲ!」

「グガアアアアアアア!!」


 ジオは果敢にドラゴンに向かって単身で飛び掛る。


「ガッ! ウガ! ガアアア!」

「っと、よっ、ほいっと」


 癇癪を起こした子供のように、ドラゴンはジオ目掛けて爪を激しく振り回す。それをもし受ければ一たまりも無いが、そんな大振りな攻撃はジオには届かず、余裕で回避していく。


「くはは……にしても、朱色の鱗……随分と硬そうだな……雷は通ったけど、アレ結構魔力使うし……やっぱ打撃か……なら」


 回避しながら、暴れるドラゴンを眺めながら対策を考えるジオ。そしてジオが選んだ方法は……


「ほれ、こっちだぜ!」

「ウガッ!?」


 ジオはドラゴンの攻撃を回避しながら、ドラゴンの死角に入り込む。それは、ドラゴンの尻尾の真下。


「尻尾をめくった先には……鱗で覆われていない、ドラゴンのケツッ!」

「うがっ!?」

「オルアアアアアアッ!!」

「ッッッ!!!???」


 ドラゴンの尾の付け根の下に入り込み、力を込めたとび蹴りをドラゴンの尻に叩き込む。


「うがっ!?」

「もういっちょ!」

「ファガガアアアっ!??」


 強固なドラゴンの鱗は、打撃や武器や大砲や、半端な魔法も弾き返す。

 しかし、鱗で覆われていない尻の部分は無防備で、更にはドラゴンから完全死角。

 ドラゴンが即座に振り返ろうと、同時にジオはまた背後に回りこんで、ドラゴンにケツパンチをお見舞いした。


「せこいの~、リーダー。正面から倒せる力も持っておるはずなのに……」

「しかし、確実だ。正面衝突で力と力のぶつかり合いで暴れられたら、こんな小さな村……色々とふっとぶからな」


 ガイゼンとマシンは、今のジオの戦いをそう評するが、村人たちからすれば単身で巨大な怪物に立ち向かう勇敢な男の姿にしか見えない。


「す、すげえ……あのにーちゃん、ほんとにすげえ!」

「すごい! あんな大きな怪物を翻弄している!」

「強い……すごい!」

「いけええ、にいちゃんっ!」


 思わず歓声を上げる村人たち。

 メムスも思わず……


「す……ごい……あいつ……こんなにすごいやつだったんだ……」


 と、呟くほど。

 一方で……


「坊や……」

「ぐへへへへ、結婚式だれ呼ぼっかな~」

「超絶な豪なキン……さ、さわりたいよ~……」


 コンたちは仲間のドラゴンがやられているのに、そっちの方ではなく別のことで頭がいっぱいで、特に加勢する様子も無かった。


「がっ……うがっ……がっ……」

「くはははは、お前、若いドラゴンだな。戦闘経験がまったくなさそーだ」


 始めは激しく暴れていたドラゴンも、既に尻にダメージが蓄積して両膝を地面について、パンパンに赤くなった尻を無防備に晒していた。

 その目には、薄っすらと涙が浮かんでいたが、ジオはそんなことを気にしなかった。


「トドメだ。もう二度とクソもできねーぐらい、このケツに特大の雷を食らわしてやるよ!」


 そう言って、ジオはドラゴンの尻を鷲摑みにした……その時だった!



――ボンっ!!


「……はっ?」

 

「「「「「…………えっ??」」」」」



 ダメージが蓄積したドラゴンが、突如大きな煙に包まれた。

 そして、煙が晴れたとき、そこには既にドラゴンはいなかった。

 居たのは……



「ぐす、ひっぐ……いたいよぉ……もうゆるしてよ~……いいこにするから……」


「……えっ?」


 

 その場に居た者たちは全員目を疑った。

 タマモと同じぐらいの小柄な可愛らしい少女。

 体も凹凸がなく発展途上の少女が、全裸で四つん這いになって、真っ赤になった小さな尻を晒しながら泣いていて……


「……えっ? あ……え? お、おま、竜人だっ……たの……あっ……」


 その尻を、ジオは両手で後ろから鷲摑みにしていた。



 竜化した姿を維持できなくなるほど、心も体も追い詰められた少女が、全裸で四つん這いになってガラの悪い男に後ろから両手で生尻を鷲摑みにされてる。

 そんな光景に誰もが言葉を失う状況の中で……


「解せ……ぬゾウ……………………………小生は一体…………」


 強力な連携攻撃で自分を追い詰めた四人の女たちが、一瞬で瓦解した光景にカイゾーは薄れ行く意識の中でそう呟いた。 

今回は「ドラゴンの体は鱗で硬いけど、ケツは柔らかい」という意味不明な話が出てきましたが、私はドラゴンのケツを見たことないので知りません。っていうか、冷静に考えたら普通に硬いと思います。誰か、「俺はドラゴンのケツマニアだぜ」という方がいらっしゃいましたら、真相を教えて下さい。

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書籍書影(漫画家:ギャルビ様) 2022年4月6日発売

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