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第四十二話 卑しい

 世界を救った勇者が跪き、胃液と共に吐瀉物までも吐き出して苦悶の表情を浮かべている。

 誰もが怒りと憎しみを発散させんと、オーライをたった一撃で跪かせたマシンに、民たちは声援を送る。


「ぶっ殺せ、堅物あんちゃん!」

「そのクソ野郎に俺たちの怒りをぶつけてくれ!」

「絶対に許さない……私たちを、こんな目に合わせて!」


 半壊した自分たちの国。そうしたのは、オーライ本人。

 決して許すなと民たちの怒りが頂点に達している。

 その光景に、ジオはかつて自分が捕らえられた時のことを思い出したが、あの時と決定的に違う点がある。

 それは、ジオは完全なる濡れ衣だったのだが、オーライに関しては実際にオーライ自身の行いによるものということだった。


「ふっざ……けるなぁぁ! マシン、自分が何をしているのか分かっているのか!」


 だからこそ、こうしてオーライが怒鳴り声を上げるのは筋違いなのである。

 しかし、オーライはそれでも、最初に見せた爽やかな笑みからは想像もできない、憎しみに染まった顔でマシンに叫んだ。

 だが、もはや今のマシンは、そんなことで怯むことも、ましてや躊躇うこともない。


「黙れ」

「うごっっ!?」

 

 再びマシンの鋼の拳が、今度はオーライの脇腹に深く突き刺さる。

 その瞬間、オーライの両目、両耳、鼻から鮮血が飛び散った。


「いやあああっ!? お、オーライ君!?」

「オーライ……」


 飛び散る血に、メルフェンが悲鳴を上げて目を背け、一方でナジミたちはただ涙を流して呆然とその場から動けないでいた。


「もう、……なんで……こんな……おとうとくん……」

「夢です、こんなの……夢に……夢です……夢……」


 目の前で傷つき、血反吐をまき散らす、自分たちの夫であり愛を誓い合った男。

 本来であれば、そんな姿を見せられたならば、自分たちも命を賭して、オーライを傷つけた者を容赦なく叩きのめしていただろう。

 だが、今のナジミたちにそれが出来なかった。

 ただ、全てが夢であって欲しいと願うだけだった。


「ぐっ、な、なぜ、スーツの防御が……このスーツの防御力なら……いや、そもそも、スーツの補助筋肉が作動していない?」

「確かに、そのスーツは耐衝撃や、炎や熱、寒さや雷などをも防ぐ。しかし……自分の『超音波振動拳』はあらゆる物質の分子結合に干渉して破壊する。それだけだ」

「な……にっ?」

「そのスーツは自分の最初の一撃で、もう既にシーケンサーが全て粉砕されている。それは最早、修理不能なただの全身タイツに過ぎない」

「ッ!!?? ば、ばかなっ!?」


 マシンが淡々した口調で説明した言葉を受けて、オーライはゾッとした顔を見せてマントの内側の鎧の更にその下に着込んでいる服を覗き込む。

 マシンの説明はこの場に居た大半の者には理解できない内容だったのだが、それを理解できたオーライには十分すぎるほどの絶望的な内容であった。


「ぐっ、ナジミ! 誰でもいい! 僕に……僕にスーツを! いや、それよりも手を貸してくれ! マシンを殺さないと!」

「……オーライ……もう、やめて……お願いだから……」

「何を言ってるんだ! ここまで来て……何を! そんなことできるはずが無いだろう!」


 思わずオーライが助けを女たちに求めるも、もう女たちはその言葉で立ち上がることは無い。

 もう彼女たちの瞳に、「愛」は無かった。


「ッ……バカな……なんで……なんで理解しない! じゃあ、僕がこの世を統一しなければどうなる!? 誰かが出来るのか!? 僕以上に相応しい者が居るのか!? 汚職に塗れて汚い政治と取引が蔓延るこの腐った国をどうやって建て直す!? そして、この全世界をどうやって誰が導く!? これから生まれてくる子供たちのためにも、素晴らしい世界を作ろうと思わないのか!? 僕を許せないとか、家がどうとか、店がどうとか、そんな個人的な今の感情だけで、僕を今この場で倒して、本当にそれでいいと思っているのか!?」


 もはや、完全に孤立無援となったオーライは、八つ当たりをするかのように全ての者たちに向けて声を上げる。

 しかし、その声に対して、誰もが怒りと冷めた目でオーライを見つめたままで、心を動かして考え直す者など一人も居なかった。


「どうやら、それでいいと皆が思っているようだ」

「マシン……」

「そして、自分に関しては勘違いするな。自分はお前に対する怒りや恨みなどどうでもいい。ただ、ナグダの遺産だけ没収するか、廃棄する。それだけだ」

「黙れ! 作られたカラクリ人形のお前には分からないさ……世の中の不条理も知らないからそんなこと言えるんだ……」

「言ったはず。もはや興味もない。お前『たち』にはな。どうしても正しいことをしたければ、ナグダの遺産に頼らず、自力でやるがいい」

「な……にっ?」

「お前の言う通り……自分はこの世界に思い入れがない。親という者も、家族と呼べる者も居なかった。唯一……想うことができたお前たちのためならばと……数年前はそう抱いていた」

「っ……なら……なら、なぜ……」

「しかし……ナグダの遺産は、唯一自分の故郷との繋がり……自分のルーツとなった、『青い星』の……それが、もはやこれ以上利用されるのは我慢できなかっただけだ……二年前の自分が知っていたお前がもう居なくなってしまった以上……それが道理」


 オーライがどれだけ訴えても、マシンにとってはもう「怒り」も「恨み」もどうでもいいことであった。

 そして、オーライの言葉が正しいことなのかも、もはやどうでもいいことであった。

 すると、オーライも深いため息を吐き、憐れむような顔をしてマシンを見て……


「仕方ないな……マシン」

「むっ?」

「……どうやら、この話をしなければ、お前も理解してくれないのだろうな」


 何かを観念したかのようにオーライは立ち上がり、真っすぐとマシンを見る。


「さっき話さなかった……できれば、知られたくなかったからだ。でも、そうは言っていられないようだ。だから、話そう。お前と別れて二年の間、僕に何があったのか。何を見たのか。この理由を知ってくれれば、お前でも全てを理解してもらえ―――――――」


 そして、全てのことを話そうと、オーライが切ない表情を浮かべた瞬間……


「ふびょぼりょぶ!?」


 オーライはマシンに顔面を殴られ、鼻が不細工に潰れ、盛大に鼻血を噴き出してのたうち回った。


「うがあっ、な、なんで、っ、つ、ひっぐ、なん……で」

「お前もいい加減理解しろ。自分はもう、お前の全てに興味がない……。何を聞いても時間の無駄だと判断した」


 全ての言い訳に興味がないと完全にオーライと決別するかのように、マシンはオーライの顔を殴った。


「あ~あ……マシンも結構……頑なだな……」


 冷たく、心の無い人形のような表情でオーライを見下すマシンのその背中は、ジオにはほんの少しだけ寂しそうに見えた。

 

「「…………」」」

「……なんだよ?」

「「……別に……」」

  

 そんなジオを、ガイゼンとチューニが「お前が言うか?」という表情で見ていた。


「ぃ、の、ぉ! ユルサナイ……ユルサナーーーーイ! どいつもこいつも世の流れも分からぬバカばかりで……もう、いい!」

「……そうか……そうなるまで随分と遅かったな」

「消え失せろ……もう、救いようのないこの国も人間も全員僕の世界から消え失せろッ!!」


 すると、地面を転がりのたうち回っていたオーライが立ち上がり、胸元から小さな端末を取り出した。

 それは、先ほど天に掲げて雨を降らせた際に使っていたアイテムだ。

 

「オーライ……X線レーザーは使えないぞ?」

「ふっ、確かにあの破壊力の砲撃をこの場に落せば僕も巻き添えをくらうが……ならば、強烈な雷を君たちにピンポイントに落すことで全員黒焦げになればいい!」

「……やれやれ……」

「まずは、マシン、お前からだ! いくらお前でも、1億Vの雷撃までは受けきれないだろう!」

 

 雷を落とす。そう宣言するオーライに、民たちの表情が青くなる。

 魔法よりも強力な天変地異を自在に操るオーライが自分たちに雷を落とすと言っている以上、それは間違いなく落ちるのである。


「ちょ、もう、もうやめなさい、……やめてよ、オーライ!」

「黙れ! ぜーーーいん―――」


 もはや、暴走するオーライにはナジミたちの声も届かない。

 全てを終わらせるための攻撃を、オーライは容赦なく振り下ろそうとした。

 だが……


「……あれ?」


 オーライが異変に気付いた。それは、空に何の変化も起こらなかったからだ。


「……ば、ばかな! なんで? なんで!?」


 何度も端末を掲げ、押し、振り回すオーライ。しかし、空は快晴のまま一向に変化がない。

 

「お、おい、あれ?」

「雷……落ちてこねーぞ?」

「ど、どういうこと?」


 民たちも頭を押さえて蹲ろうとしたが、一向に天候に変化がないことを不思議に思い、恐る恐る空の様子を窺う。

 だが、この状況に一番驚いているのは、オーライ本人だった。


「ば、ばかな……なんで?」


 何故、何も起こらない? そう、震える両手で端末を凝視するオーライは、あることに気付いた。


「……あっ!?」

「……ふぅ……こんな機能を使うことになるとは思わなかった。この世界では何の役にも立たないと思っていたのだが」

「た、端末が……け、圏外に……ま、まさか……ま、マシン……お、お前が……」


 オーライが何かに気付き、そしてマシンがオーライの気付きに対して頷いた。


「自分に備わっている機能の一つ……電波通信ジャマー……。ジャミング装置で衛星操作を妨げられるとは、お前も思っていなかったのだろう」

「ま、な……そん……な……」

「そして……結局お前は、自分の意見と違う者たちをその手で全て消そうとした。どのような大義や理由があろうと……許しがたい」

「ま、まっ!?」


 次の瞬間、オーライの顎に触れたマシンの拳から骨を粉々に粉砕する音が響き渡った。


「—――――――――ッ……がはっ……」


 悲鳴すら上げられぬほどの激痛のショックでその場に倒れ込むオーライ。

 その手、そして懐から落ちた端末と剣の柄。それをマシンは拾い上げ……


「では、返してもらう。そして、お前の許しがたい行為の裁きと報いは……お前から大事なものを奪われた者たちに決めてもらえばいい」


 そう言って、倒れたオーライに背を向けたマシン。

 そして、その足はそのまま、ただ涙を流して呆然としているナジミたちの下へ。

 結局最後の最後までオーライを加勢するどころか、立ち上がることも出来なかったナジミたち。

 そんなナジミたちをマシンは冷たく見下ろし、


「あの……ま、マシ―――」

「お前たちもだ。持っている遺産は廃棄する」

「ッ……あ、あのね……マシンくん、私たち……まだ、何が何だかだけど……でも、まずは、あなたに……謝ら――――」

「お前たち三人の持つ、スーツ、そしてアネーラとシスが所有している太陽光魔力代替エネルギー変換器を廃棄させてもらう」

「わ、分かってます、マシン……さん。兄さんも……そしてもう、私たちにも何も持つ資格なんて……でも、その前に、マシンさん……許されないのは分かっています! でも、ゴメ―――」


 瞳を潤ませて、後悔の滲み出た表情でマシンに語りかけるナジミ、アネーラ、シス。しかし、三人が謝罪の言葉を口にする前に、マシンは三人の肩に触れ、そのまま目には見えない振動を送る。

 すると、三人の衣服の下から、僅かに煙のような物が漏れ、それを確認してマシンは立ち上がってそのまま背を向けた。

 

「完了だ。これでお前たちは二度とソレらは使えない」

「あっ、ま、待って、マシン! 待ってよ、マシン!」


 もう、マシンにはオーライの声だけでなく、ナジミたちの声すらも届かない。

 呼び止めるその声に対して、マシンは一切の反応も興味も示すことなく、ただ真っすぐジオたちの下へと戻っていく。


「リーダー。待たせた」

「いーや、別に。おつかれさん」


 ジオも戻ってきたマシンに対して多くは聞かないし、掘り下げようともしない。

 ただ、一言だけ労うだけだった。


「お嬢様……」

「あっ、は、はい!」

「自分の用事は済んだ。勇者たちと、ハウレイム王国についてどうするかは、あなたたちで決めればいい」

「御マシンさん……」


 そして、もうマシン自身もこれ以上は関わる気は無いと、オーライたちに対する処遇も、フェイリヤたちに委ねた。


「……そうですわね」


 その判断は正しいと、ジオも口を挟むこともなく、そしてフェイリヤも少し複雑な表情を浮かべながらも頷いた。

 すると、その言葉を待っていたとばかりに、民たちが声を上げる。


「あんがとよ、マシンのあんちゃん! 後は俺らがこいつらに鉄槌をくらわしてやらァ!」

「このクソ偽勇者が! 俺たちの恨みを思い知れ!」

「ケジメフィンガー十本じゃ済まさん! 細切れにして魚のエサにしちゃらァ!」

「それに、この状況になるまでバカみたいに勇者の言いなりになった、メルフェン姫も同罪だ!」


 もうオーライには何もできない。ナジミたちも戦意すらない。

 ならば、「今なら何をやっても問題ない」と怒り狂った民たちが次々と狂気に染まった顔でオーライたちを取り囲む。


「ひっ、そ、そんな……ま、待って、みんな……だって、わ、私だって、お、オーライ君の言う通りに全部して……平和な国を作ろうとして……そ、それなのに、なんで?」


 もはや、自分の信じた全てが砕け散り、ただ涙を流しながら恐怖に震えるメルフェン。

 なぜ、自分がこんな状況に陥ったのか、混乱したメルフェンはまだ理解しきれていないのだろう。

 だが、もはや理解しようと理解しまいと、民たちには関係なかった。


「やっぱ……見るに堪えねえな……こういう制裁イジメは……」

「リーダー?」

「まぁ……俺が口出しすんのは、完全に筋違いなんだけどな……でも……」


 ジオは正に今、自分がかつて味わった民たちの怒りの制裁を目の当たりにすることになる。

 今回のオーライに関しては完全に自業自得であり、自分には無関係のことのため、見たくなければ見なければいいと言えばそれまでなのだが、複雑な気持ちには変わりなかった。

 だからこそ、オーライに同情はしないものの、見るに堪えないものを繰り広げられるのは嫌だと、ジオが動き出そうとしたとき……



「全員、お待ちなさいッ!!」


「「「「「ッッッ!!!???」」」」」



 その時、オーライやメルフェンに制裁を加えようとした民たちを、フェイリヤが大声で制した。


「えっ、ふぇ、フェイリヤちゃん?」

「お嬢?」

「お嬢様……?」

「フェイリヤちゃん、な、ど、どうしたん……あっ、そうか! フェイリヤちゃんが先にってことか?」


 フェイリヤの止める声に思わず民たちも不思議そうな顔を浮かべるが、そんな民たちに対してフェイリヤは怒った表情を浮かべて……



「オーライさんやメルフェン姫のことを許せないという気持ちは理解しますが、その怒りを相手が動けなくなってからぶつけるなどという、卑怯極まりない真似だけは、このワタクシが許しませんわよッ!」


「「「「「「ッッッ!!!???」」」」」


「我慢できなかったのなら、オーライさんが立っている時に殴りかかれば良かったのですわ! それなのに、御マシンさんに倒してもらって、相手が反撃できなくなった途端に下品に叫んで、しかも大人数で取り囲んで制裁など、……卑しいにもほどがありますわ!」



 そのフェイリヤの発言には、民たちも思わず言葉を失ってしまった。


「昨晩、オジオさんが体を張ってあなた方に何を教えてくださったとお思いですの!? 心の底からの本音を曝け出した結果、『こういうこと』があなた方の望んだ本音というのであれば……とっても醜いとしか言いようがありませんわ! 制裁や恨みは否定しませんけど、こういうやり方は美しくありませんわ!」


 フェイリヤのその声は、怒りに我を忘れてしまっていた民たちの心を一瞬で呼び戻した。

 

「フェイリヤちゃん……」

「お嬢様……」


 そして、その言葉から何かを感じ取ったのは、民たちだけではない。

 当然、ジオたちもだ。


「……あの……女……」

「…………ッ……」

「ほほう……」

「うわぁ……あの、お嬢様……」


 その時、ジオは自分の過去の悲劇が頭を過り、心臓が抉られるほどの衝撃を受けた。


「フェイリヤ……か……なんて……バカ女だ」


 そして、ジオは思わずにはいられなかった。


「もし、……あの時……お前が……」


 もし、二年前の帝国で、フェイリヤが居てくれたならば……ジオはそう思ってしまった。


「もし、お前が居たら……きっと俺は……ふははは……ったく、何で俺はこんな女々しいことを……」


 それが今さら思ってもどうしようもないことだと感じながらも、しかしジオは少しだけ心が救われた気がした。

 だが……


「ふぇ、ぶえいりや……」


 砕かれた顎で意識を朦朧とさせながら、這い蹲っていたオーライが顔を上げる。

 傍らに居る、自分への制裁を止めようとするフェイリヤを救いと感じ、それに縋るように、オーライは必死に手を伸ばす。

 すると……


「……へっ?」

「うっ、ぐ……あう」


 そのとき、オーライがとりあえず伸ばした手が、フェイリヤのスカートに触れた。

 いや、触れただけではない。フェイリヤの白いスカートの裾を掴んでしまった。

 そして次の瞬間、オーライは自分が何を掴んでいるかも分からぬまま、ソレを引っ張って体を起こそうとした。


―――ビリ


「「「………あっ…………」」」


 だが、男の体重を支えられるはずもなく、オーライに引っ張られたフェイリヤのスカートは、ベルトが千切れ、破れ、そしてスカートがそのまま地面にずり落ちてしまった。


「あっ……」


 誰もが目を丸くして固まってしまった。

 そこには、黄金の鎧とマントを羽織った金髪お嬢様が、下はブーツの上にパンツ一枚モロ出し状態になってしまったのだ。

 黒の高級感漂う色っぽいレースの下着に、民たちの視線が一斉に集中。

 その視線を受けて、フェイリヤはようやく何があったのかを理解し、そして……



「ふんがああああああああああああああああああああっ!!!!」


「おびゅっ!?」



 顔を真っ赤にして泣き叫びながら、頑丈なブーツの踵でオーライの顔面を思いっきり踏みつけるフェイリヤ。

 既に、鼻も顎も砕かれているオーライの顔面にトドメをさす勢いで潰した。



「ゆ、ゆっ、ゆ……許しませんわ、この下郎ッ! このワタクシに与えた屈辱は百万倍にして返して差し上げますわ! 皆さん、この愚か者を成敗ですわ! ケジメですわ! 制裁ですわ! 袋叩きですわーーーーっ!!!!」


「「「「お……お~~~~う」」」」



 人々の心を動かした先ほどの発言を全て撤回するかのように目を血走らせて怒りに震えるフェイリヤ。

 その形相に民たちは苦笑しながら、とりあえずその声に応えた。

 そして、フェイリヤは……


「う、うううう、うわああああああん、見られてしまいましたわ……オジオさん以外の方にまで、う、ううう、わ、ワタクシの、ワタクシの……」


 マントで体を覆い隠しながら、泣きながらその場から離脱し、ただ一目散に……


「う、うええええん、オジオさん……オジオさ~ん!」

「お、おお……ってか、なぜこっちに来る? そしてお前、さっきの俺の感動返せ」


 迷子の子供が親を見つけたかのように、ジオの胸に飛び込んでフェイリヤは再び号泣した。

 そんな姿にジオは呆れながら、ただフェイリヤの頭をポンポン撫でて哀れんだ。

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書籍書影(漫画家:ギャルビ様) 2022年4月6日発売

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