第二十七話 経験値
人形のような顔をしていても、動揺を隠し切れない人間らしさがある。
正直、マシン以外は目の前の少女のことを誰も知らないが、痛みを感じるような攻撃をされたのだから、何もしないで笑って許してやるほど、ジオも寛容ではなかった。
「もう一度、ふきとばします。空間振動波!」
「どるぁぁぁぁああ!!」
「っ!?」
六番目がジオを再び吹き飛ばすために掌を突き出すが、ジオはその場で気合を放出するかのように叫び、その気迫が床を陥没させて空気が弾けるほどの勢いを放ち、六番目の放つ攻撃を相殺した。
「くははは、おいおい。つれねーじゃねぇか。せっかく遊んでやろうとしてんのに、簡単に跳ね除けてくれるなよな?」
「……危険レベルを上げます」
「ん?」
同じ技も二度は効かないと笑みを浮かべるジオに対し、六番目は次の攻撃に移る。両手を前に突き出してクロスさせるような仕草を見せると、次の瞬間、ジオの体に異変が起こった。
「おっ!? お、おお!? おっ、俺の体が……ッ!? ね、捻れ!?」
そう、ジオの両手足や胴体が突然強い力に掴まれて捻られようとしているのである。
「これが私のサイキック能力……空間に干渉することにより、空間内の空気を弾けさせることもできれば……空気の流れを使って、対象を捻じ切ることも……」
「うおおおおお、って……で? なんだ?」
「ッ!!??」
しかし、ジオの体が限界までねじ切られそうになった瞬間、ジオは余裕の笑みを浮かべて笑い、自分をねじ切ろうとする力に反発するように肉体に力を入れて踏みとどまった。
「くはははは、三年の闇生活を経て、性格も性根も捻じ曲がった俺は、これ以上曲がりようがねーんだよ」
「ま、曲がらない!? これ以上、っ、き、筋肉で私のサイキックを堪えて……ッ!?」
「くはは、そういや……こういう風に体に捻りを加えて、その反動を利用して突き出すパンチがあったな……」
ジオは捻じ曲げようとする力を堪えながら拳を上に掲げ、それを勢い任せに頭上から、六番目の目の前の床目掛けて振り下ろした。
「チョッピングコークスクリューッ!!」
あえて、六番目を直接殴るようなことをせずに、足元の床に拳を叩きつけるジオ。
だが、その右拳は強固と言われた施設に、下の階に貫通するほどの威力を放ち、その勢いに吹き飛ばされた六番目が部屋の壁へと勢いよく……
「おっと、危ないの~」
「ひっ!?」
だが、六番目が壁に激突する寸前、その背中をいつの間にか回り込んでいたガイゼンが受け止めたのだった。
そして、ガイゼンは自分の腰元にも及ばない小柄な六番目の両肩をガッシリと後ろから掴んで……
「ぬわははははは、どうじゃ? イジワルな兄ちゃんとはこれまでにして……おじーちゃんと……遊んでみるかの?」
「……ッ……」
人形のようだった少女が、明らかに顔を青ざめさせて震えた。
六番目自身も分かっているのだ。
ジオ、そして背後のガイゼンから感じる、圧倒的な力の差を。
「わ、私は……マスターのためにっ!」
だが、六番目は感じる恐怖を振り払うかのように身を捩ってガイゼンから離れ、振り向き様の攻撃を放つ。
「上から押しつぶします! 重力波!」
「ん~?」
「空間と空気を操り、あなたを押しつぶします。推定で十倍の重力があなたを……」
次の瞬間、ガイゼンは頭上から見えない力によって全身を地面に押しつぶすような力に襲われるが……
「ん~? 肩こりをほぐすには、まだまだ力が足りんが……」
「……?」
「ほれ、よくマッサージで背中に乗って踏んでもらうのがあるじゃろ? これはそういう類の力か? ぬわはははは、おじーちゃんを労わってくれるか? 優しい娘っ子じゃの~」
推定で十倍の重力で押しつぶすと口にする六番目だが、ガイゼンは何も無いかのように背中や肩を揉み解しながら、屈伸運動まで始めた。
「……十倍の重力に押しつぶされない? ……この生物は……」
自分の攻撃を受けても何も無いかのような余裕の様子のガイゼンに後ずさりするも、ガイゼンは笑みを浮かべながら……
「ぬわはははは、押しつぶす? このワシを? 随分と軽く言ってくれるの~。かつて、魔王軍を追放されたとはいえ……万の戦、万の大義、万の魂、あらゆる全てのものをこの双肩に宿して戦い続けたこのワシを、押しつぶすと?」
「危険……計算不能……危険……危険!」
「今は全ての重圧から解き放たれて身軽になったこのワシだが、それでもちょっとやそっとの重さで押しつぶせると思ったら大間違いじゃぞ? あまり……ワシを嘗めるでないぞ、娘ッ子が!」
ジオのように気合を開放したわけではない。ただ、睨んで声を発するだけ。
しかし、たったそれだけで、六番目は腰を抜かしてその場でへたり込んでしまった。
「……? か、体が……ッ、お、起こせない? 起き上がれない? 体に異常なし……なのに、なぜ私は?」
まるで、重力攻撃をされたかのように、見えない力で押さえつけられたかのように立ち上がれない六番目。
そう、それはガイゼンから放たれる、プレッシャーという名前の圧力。
ガイゼンから放つその圧力は、もはや六番目の戦意を戦わずにへし折るほど圧倒的なものであった。
そして……
「生まれ持った性能は優秀でも……リーダーやガイゼンとは経験値が違う。敵うはずが無い」
蹲って立ち上がれない六番目にそう言い放つマシン。
だが、マシンのその言葉を聞いて、六番目は意地を見せるかのように、這い蹲ってマシンに向かう。
「関係ありません。私はマスターのために戦います。そして、少なくともあなたでは私には勝てません」
ジオとガイゼンには勝てなくても、マシンには負けない。
そう断言して六番目が蹲ったまま両手を交差させて攻撃を放つ。
「空間に流れる空気を乱し、気流を生み出し、見えない刃でそのボディを切り裂きます。かまいたち」
マシンに向けて放たれる見えない何か。それは、床や天井や壁に鋭い亀裂を入れるも……
「……あまり、子供が刃物を振り回さないほうがいい」
「……ッ!?」
マシンは見えない何かをまるで予測していたかのように、余裕を持って回避していく。
「……ありえません。大量生産機の反応速度では回避できるはずが……」
「そうだ。見てから回避するというのは、極限のレベルでの戦いにおいては不可能。ゆえに、必要なのは相手の動作、クセ、状況、精神状態、息遣い、あらゆるすべてのものを洞察して予測すること。お前の単調な攻撃は、見えずとも手に取るように分かる」
「予測……?」
「そして、自分にはお前のようにサイキック性能を埋め込まれていないが……人類の英知が結集した武器は埋め込まれている。このように……」
ゆっくり歩きながら攻撃を回避して、六番目に歩み寄り、マシンが手を翳す。すると、マシンの掌が突如、雷を帯びたかのように輝き、そして……
「こ、これは……!?」
眩い閃光と同時に、光の速度でマシンから放たれた光線が、蹲る六番目の目の前の床に丸い穴を空け、その穴が四階から一階まで一直線に貫通していた。
「れ、レールガン……いや、これは……」
「荷電粒子砲……」
「ッ!? 掌から!? そんな大きさの粒子加速器をどうやって……」
「それを今、お前が知ってもどうにもならない」
そう言って、マシンは己の掌を六番目の眼前に差し出す。
もし、その距離で今と同じ光線を放てば……
「あっ……あっ……」
「眠るのか、消滅するのか。それとも別の道か……言ってみろ。お前の人生だ。自分の意思を示してみろ」
そして、優秀であるが故に六番目もこの短い数秒で理解した。
なぜ、マシンがこれほどの力や兵器を搭載しているかは分からない。
だが、自分では勝てないと……
「おいおい、イジメんのはそれぐらいにしてやったらどうだ? 何も、殺すこたーねーだろ」
「そうじゃな。恐がっておるであろう。かわいそうに」
そのとき、六番目の命運も尽きたかと思われたとき、ジオとガイゼンが待ったの声を掛けた。
もう、これぐらいで十分ではないかと。
「いや……リーダーとガイゼンにも大半の理由はあると思うが……どちらにせよ、こいつの意志を確認したい。意志があればの話だがな……」
しかし、マシンはジオたちの言葉に頷かず、向けた掌にはいつでも光線を放てるように準備して、六番目の言葉を待とうとしていた。
すると……
「ちょっ、お、お待ちなさいな! あなたたち、どういう事情なのか、その子が何者なのかは良く分かりませんが、大の男が三人で幼い女の子をイジメるのはあんまりですわ!」
部屋の隅で巻き込まれないように退避していたフェイリヤだったが、この状況に我慢が出来ずに割って入ってきた。
「いや、お嬢様よ。こいつは、ただの幼い娘ではない。こいつは……」
「だまらっしゃいな! 女の子において優先すべきは、強いとか弱いとか種族がどうとか何者がどうとかではなく、まずはこの子が女の子であるということを何よりも優先すべきだと、なぜ分かりませんの!?」
「ッ……」
口を出すフェイリヤをどけようとするマシンだったが、フェイリヤの有無も言わせぬ言葉と強引さに、思わず後ずさりする。
しかし、それでも六番目の力が危険であることは誰もが見ていた。
「お、お嬢様、危ないですよ!」
「そ、そうだ! そんなに小さいけどあんなに強いんだから!」
不用意に六番目に近づこうとするフェイリヤを「危ない」とメイドやフラグ冒険団も慌てて止めようとするも、フェイリヤは構わない。
そして、フェイリヤは後ずさりするマシンを押して、蹲る六番目を抱きしめて頭を撫でた。
「見なさいな! ワタクシほどではないとはいえ、こんなに可愛らしいんですのよ? それを、オジオさんも、御マシンさんも、御爺さんも減点ですわよ!」
「って、おいおい、お嬢様よ、俺まで入るのかよ!? 俺なんて、そのガキに最初ぶっ飛ばされたから、ちょっと恐がらせて驚かせてやっただけだろうが!」
「そんなの、簡単にぶっとばされるオジオさんが悪いのですわ!」
「んなぁっ!? お、おいおい……」
フェイリヤの怒りの矛先はマシンだけでなく、ジオやガイゼンまで及んだ。
そして、フェイリヤに抱きしめられる六番目は……
「わ、私にマスター以外の者が触れるのは許さな―――」
「あら? あなた……ジ~~~」
「……?」
自分に気安く触れるなとフェイリヤを振り払おうとするも、フェイリヤは六番目の顔をジッと見て……
「あなた……本当に可愛い顔をしているではありませんの!」
「あうっ?」
「あ~んもう、お肌もプニプニスベスベですわ~~! お~よしよしよしよし!」
「はうっ、あう、ん、やっ、ますた~! わたし、ますた~の!」
まさかのフェイリヤの猫可愛がり攻撃に、マシンたちの脅威で体が竦んでしまっていた六番目には逃れることが出来ない。
六番目はフェイリヤの頬ずりやナデナデをされるがままになっていた。
「ったく、あ~あ、しらけちまったな。まさか、俺がイジメっこ扱いとはな」
「ぬわはははは、ウヌはそういう風に思われても仕方あるまい」
「あん? あいつが這い蹲るほどプレッシャーかけたのはお前だろうが!」
「そうじゃったかな? ワシわかんな~いの~」
すっかり、戦う気も萎えてしまったジオは、溜息吐いて全身から力を抜いた。
だが、マシンだけは微妙な顔をしたまま、ジッと六番目を見ている。
「んで……結局あのガキが何者かは知らねーが……どーすんだ?」
「……どうするも何も……」
「なんじゃ? せっかく起きた子供に、大人がしてやれることは無いのか?」
これ以上戦う空気ではない。しかし、ならば六番目をどうする?
すると……
「触らないで下さい。私はマスターの物。マスターだけの物。生涯私に触れるのも愛玩するのもすべてはマスターだけの権利」
ついに我慢の限界だと、フェイリヤに可愛がられていた六番目が声を上げる。
マスター、それは先ほどの様子だとチューニのこと。
「つうか、こいつはこいつで、初めて会ったはずのチューニにどれだけ一目惚れしてんだよ」
「確かに、今の時代のオナゴの好みは分からんの~」
「そういう機能だ……」
「まったく、つれないですわね。……ん? あら? 今の話だと……あなたは今後、そこで寝ている彼と……そして、乱暴なオジオさんたちと一緒に行動するということですの?」
「「「え???」」」
フェイリヤの言葉に思わず固まるジオたち。
六番目が今後も? そう思った時、ジオは露骨に嫌そうな顔をした。
「おいおい、俺は嫌だぞ! せっかく誰にも気を使わずに自由に遊ぼうとしてんのに、ガキが一緒に居たら気を使うじゃねーかよ」
「自分もそれは承諾できない」
「ワシはいいけどの~」
唯一ガイゼンだけがどっちでもいいような態度だったが、ジオもマシンもそれには反対した。
「あなたたちなど関係ない。私はマスターと一緒に居ます」
「だから、そのチューニは俺たちと行動してんだから、そうなるとテメエもついてくるってことになるんだろうが。俺らはそれがダメだって言ってんだよ」
「……マスターは渡しません!」
「いや、だから! って、あ~、もうめんどくせぇな」
ジオたちと行動をするとかそういうことではなく、チューニと離れない。そう強い意思を示すかのように、六番目は失神しているチューニに這うように進み、ギュッとその体にしがみ付いた。
まさに、駄々をこねる子供であった。
すると、その時だった。
「うっ、う~ん……はっ!? ぼ、僕は!? そ、そうだ、女の子にチュウされて……なんだ、夢だったのか……」
「マスター」
「ん? ひゃっあああ!? ゆ、夢じゃなかったんで!?」
ようやく目を覚ましたチューニ。起きて直ぐに六番目の顔を見て、先ほどの出来事が現実だったと改めて思い知らされてしまい、顔を真っ赤にして混乱した。
「い、いや、あの、ごめんなさいなんで、その、ぼ、僕、その……」
「マスター……私はマスターの物です。マスターを守り、マスターのおそばにいて、それで……」
「jf2い;wkllんvうぇp:!!?? いや、ほんとうにも何がどうなってるんで!? リーダーッ!!」
しなだれかかる六番目に、どうすればいいか分からずに助けを求めるチューニ。
そんなチューニに、ジオは頭を掻きながら……
「あ~、つまりそのガキがお前に一目惚れして離れないって言ってんだよ」
「ふぇっ!!?? そそ、そんなこと言われても……」
「まぁ、ついてくるとか来ないとか今そこらへんで揉めてんだが、とりあえずお前も好かれてる本人としてどうなんだ?」
「いや、ど、どうって、今日会ったばかりの子で、しかも年下で、ぼ、僕、女の子に好かれたことなんて……」
「いや、あのアバズレーが……いや、なんでもねぇ。昔の女の話題は別にいいか……とにかく、お前がどうにかしろよ」
「そんなこと言われてもッ!!??」
面倒だからチューニの口からどうするか本人に言ってやれと、チューニに丸投げするジオ。
だが、チューニも今起きたばかりで何も状況が理解できず、更にこういった状況にまるで免疫が無いためにどうすればいいのか分からずに混乱している様子。
そんなチューニに構わずに小さな体で目一杯チューニに擦り寄る六番目にチューニは……
「いや、あの、君」
「はい、六番目と申します。お好きなようにお呼び下さい。あだ名の候補で、セク、もしくは、せっちゃんというのがあります」
「あ、ああ、そうなの? ん、まあ、それはそれとして……」
「はいっ!」
目をキラキラさせてチューニに顔を寄せる六番目。チューニも思わず照れて顔を逸らしてしまう。
「いや、その……な、何で僕なんで? 僕よりいい男なんていっぱいいるんで」
「理由等ありません。私はマスターの物です」
「いや、そ、そ、そんな君みたいな小さい子が、も、もっと色々な人に出会ったりしてたら……」
「マスター以外との出会いは不要です」
「で、でも、その、だからっていきなりキスとかそういうのは……そ、そういうのはお互いをもっとよく知って、交換日記とか……」
間髪居れずに寄ってくる六番目に押され気味のチューニ。
そんなチューニの弱さに一同は哀れんだ目で見ながら……
(((((交換日記って、お前……)))))
(あら、男と女の交友は交換日記から! ちゃんと、御チューニさんは分かっていますのね!)
心の中で皆が一斉に突っ込んだ。……一部を除いて。
「と、とにかく! その、僕も君もまだ子供で、そんないきなり一生どうとかってのは早いというか、迂闊というか、だからそういうのは君も僕ももう少し大人になってからの方がいいと思うんで、だ、だから」
「おとな? それはいつですか? 私の容姿を大人びさせるのは可能です。大人でしか出来ない奉仕も当然可能です」
「そそ、そういうんじゃなくって、だ、だから、こ、心とか……」
グイグイと押してくる六番目を何とか回避しようとするチューニだが、六番目は止まらない。
だが、今のチューニの言葉を聞いた一人の女が、どこか感心したように頷いて……
「ええ、ならばこうするのがよろしいですわ!!」
「……えっ?」
突如、フェイリヤが割って入ったのだった。
「乙女の淡い初恋を無碍にするのはよろしくないですが、だからといって今のこの子とすぐに夫婦となるような関係になるのは倫理的によろしくないでしょう。もっと、色々な経験や知識を得て、身も心も成熟したワタクシのような女になってからでも、全然遅くありませんわ」
何かを思いついた様子のフェイリヤ。一方でこのとき周りの者たちは……
(((((お嬢様がまともなことを言ってる……)))))
と、心の中で驚いていたのだが、そんな周囲の反応に気づかずにフェイリヤは続ける。
「セクといいましたわね。あなた……我が屋敷にいらっしゃいな。そこでメイドとして働くのですわ!」
「?」
「メイドとして働くのは花嫁修業でも最も最適なものですわ。ワタクシのそばで働き、一人前の素敵なレディとは何たるかを学ぶのが最も最良ですわ!」
フェイリヤのアイディア。それは、六番目を自身の側仕えにするというものであった。
「ちょ、お嬢様ッ!?」
「なんでそうなるんだ?」
「何を言うかと思えば……危険だ」
「ぬわはははは、相変わらず、面白いお嬢じゃのう」
もちろん、まさかそんな提案をするなど誰も予想できず、誰もが驚き、そして六番目自身も当然首を横に振る。
「論外です。私がマスター以外のメイドになることはありえません」
そうキッパリと言う六番目だが……
「あら、あなたは経験不足を指摘されたにもかかわらず、未熟でありながら本命にお仕えしようということなんですの?」
「ッ、そ、それは……」
「それは、御チューニさんにも失礼ですわよ」
「ッ!? ま、マスターに失礼……」
「だからこそ、ワタクシはあなたが経験を積んで素敵なレディになるための場と機会を与えようとしていますのよ? それが分かりませんの?」
「それは……」
「そう、すべては最愛の主を喜ばせるためですわ」
「ッ!? マスターが悦ぶ!?」
「ええ、喜びますわ」
「マスターが……マスターが……」
意外な展開になった。なんと、フェイリヤの予想外の提案から続く言葉に、六番目が考え込んでしまったのだ。
これまで間髪居れずに「敵」「排除」「マスター」どれもを迷わず即断して発言していた六番目が、フェイリヤの言葉に何かを感じ取った様子。
そして、数秒考えた後、六番目は……
「分かりました。私はマスターにお仕えするために……経験値を積むために修行します」
なんと、六番目はキリッとした表情で了承したのだった。
「「「「「う、うそおおおおっ!!??」」」」」
まさか、説得されて心を動かされるとは思わず、皆は開いた口が塞がらず、当然マシンも最早呆れてしまっていた。
そんな中、完全に上機嫌になったフェイリヤは高らかに笑いながら……
「よろしい! では、いつまでもこーんな中身空っぽの伝説の都市は放っておいて、さっさと帰りますわ! ワタクシたちの故郷……ワイーロ王国に」
ようやくたどり着いた伝説の地に一切の未練も感じず、さっさと帰ろうと皆に告げたのだった。
しかし、結局この場所で収穫は何も無かったなとガッカリしたジオたちだったが、このとき持ち帰った六番目が実はとんでもないものだったとマシン以外の者が気づくのは、もう少し先になるのであった。




