第二十四話 物知りなやつ
「ジオ将軍!? 闘神ガイゼン!? 鋼の超人ロボト!?」
ガイゼンが海のモンスターたちを一瞬で蹴散らしたことで、ようやく自分たちの自己紹介をできたジオたち。
ガイゼンだけを海で遊ばせ、フラグ冒険団たちを一旦船内へ戻してから、ジオが自分たちの素性を話すと、当然誰も驚くしかなかった。
「戦争では全然聞かなかったけど、かつて帝国で脅威の新人と言われた破壊神ジオ!?」
「いやいやいや、闘神ガイゼンって、嘘でしょ!? あんなの神話の人物でしょ!? っというか、教科書に名前載ってたよぉぉぉぉ!」
「ま、マシン・ロボトって……だ、大丈夫なの!?」
三人とも一癖も二癖もあるものとしてその名を轟かせており、フラグ冒険団もメイドたちもジオたちの名前だけは知っていた。
しかし……
「で、つまりは帝国と魔王軍と勇者一味をクビになった三人が一緒になったということですの?」
「いやいや、お嬢様、それだけですか!? 三人ともすごい人なんですよ!?」
「そう言われましても、過去に所属していただけで、しかもクビになったのでしょう? 経歴がすごいのかすごくないのか分かりませんわ」
「すごいんですって!」
フェイリヤはあまり知らなかったのか、「ふ~ん」と言った様子で、特に驚きは見せなかった。
だが、ジオはむしろそれでもいいと思った。
「ああ、別にすごくねえ。俺たちはもうその過去には拘らずに切り捨てたから、どうでもいいことだ。今ここに居るのは、ルーキーの冒険団ってだけだ。過去をひけらかす必要もなかったしな」
「……僕なんて、一人だけ……ひけらかすほどの過去もないんで……」
「くはははは、気にすんな、チューニ。お前が望めば、お前の名前なんてこれからいくらでも轟くんだからよ!」
別に過去の経歴をひけらかす必要等そもそもないのである。自分たちはその過去を捨てて、今を生きているのである。
そんな風に感じながら、ジオは笑った。
「にしても、そうだったのか……まさか、偶然出会った君たちがそれほど凄い人たちだったなんて……君たちが居れば……『あのモンスター』も倒せるかもしれない」
すると、ジオたちの秘めた力を知ったシーボウが、どこか目を輝かせてそう呟いた。
ジオたちが居れば倒せるかもしれないモンスター。
「ほう、さっきガイゼンが蹴散らした魚たち以外にも、なんか居るのか?」
「ああ。僕たち四人がかりでも倒せなかったモンスターが、この奥に居るんだよ」
正直、ジオは『フラグ冒険団が倒せなかったモンスター』と言われても、大してピンと来なかった。
それこそ、フェイリヤが先ほど言っていたように、「すごいのかすごくないのか分からない」といったものだった。
「そう、大型深海モンスター……深海竜だ!」
「……ドラゴン?」
「ああ。普段は深海に生息するドラゴン。非情に獰猛で、サメや鯨すらも平らげるほどなんだ」
「ほう……」
「その鱗は、地上のドラゴンと遜色ないほど硬い。いや、水の抵抗がある分、打ち破るには相当の力が要る。おまけに、強力な牙、爪、そしてブレスまで放つ。皆で力を合わせなければ絶対に―――」
と、その時だった。
「おーい!」
そのとき、潜水艇の周りを泳いで遊んでいたガイゼンが潜水艇の窓を叩いてきた。
皆が音に釣られて窓の外を見ると……
「このドラゴンが案内してくれるみたいだぞい」
「ガルル……」
「のう? ……あ゛?」
「ビクッ!? グル……しゅん……」
そこには、潜水艇ほどの大きさのあるドラゴンが、牙や爪や鱗等が一部欠けた状態で、しかもどこかションボリとした様子で、ガイゼンを頭の上に乗せていた。
「「「「ちょっ、し、しし、深海竜!!??」」」」
「……気にすんな、ドラゴン。相手が悪かった」
海底都市到達までの最難関とされたドラゴンが、既にガイゼンにやられて平伏していた。その光景にフラグ冒険団たちは潜水艇の中で腰を抜かし、ジオたちももう笑うしかなく、深海竜を哀れんだ。
「おーっほっほっほ! やるではありませんの、御爺さん! 何度もワタクシたちを邪魔したドラゴンを一人で蹴散らすなんて、褒めて差し上げますわ! この功績は、ボーナスものですわ!」
「なら、うまい酒が欲しいわい!」
「分かりましたわ! では、国に戻ったら最高級のお酒を樽ごと差し上げますわ!」
「おお、気前がいいのう、お嬢!」
「おーっほっほっほ、気前がいいのではなく、単純にワタクシが良い女なだけですわ!」
これまでこの一行を妨げていた深海竜をアッサリと倒したことに、フェイリヤは大変ご満悦の様子。
「それに、高潔な血統書付きでなくとも、それを上回る能力を証明するのでしたら、ワタクシも当然重用しますわ! もしあなた方が望むのであれば、今後もワタクシお抱えの冒険団にして差し上げてもよろしくってよ? ねぇ、オジオさん?」
「だから、オジオじゃねえ! まぁ……お抱えだなんだは、しがらみがメンドそうだからどうかと思うが……とりあえず、今はこのクエストだけは付き合ってやるよ」
「いいでしょう! では、まずは目の前の伝説から片づけるとしますわ!」
これで何も恐れるものはないと、意気揚々のフェイリヤ。
それにつられて、メイドやフラグ冒険団たちも腰を抜かしたものの、ガイゼンの力を前に徐々に表情に安堵が宿ってきた。
「すごい……こんなにアッサリと……」
「うん。このクエストが達成できたら、是非お祝いしないとね! パーティーの準備で、忙しくなるぞ~!」
「は、はは、これだけ力の差があると、もう悔しさもないな……すごいな……」
「これが終わったら、家に帰れる!」
「いや、ほんと神様、闘神様、ガイゼン様なんで」
「そういえば、チューニくんはどうなんですか? このお三方と同じように、やっぱりチューニくんも……」
「いやいや、一緒にしないで欲しいんで。一般人なんで。こんな伝説三人と一緒にしないで欲しいんで」
「は、はは、そうなの?」
同じように腰を抜かしていたチューニが、メイドたちに「ガイゼンたちと一緒にしないで」と言うが、ジオたちは内心では「お前もヤバイだろ」と思ったが、口に出しては言わなかった。
そんな中、ガイゼンの力に機嫌良くしたフェイリヤが、勢いのまま腰元に携えたゴージャスな剣を抜いて前へ掲げる。刀身も金でできており、切れ味は一切無いと思われるような剣。
それを前へ突き出して叫ぶ。
「では、このまま一気に行きますわよ! 華麗に美しく全速前進ですわ! 皆さん、ワタクシについていらっしゃいな!」
どこまでも勇ましく、自分が上に立って皆を率いようとするフェイリヤの姿。
そんなフェイリヤをバカだと思いながらも、その勇ましさにはジオも感心した。
「お嬢様育ちの割には、随分と勇敢じゃねえか。たたずまいから、それほど鍛えられてるわけでもなさそうなのに……どういう育てられ方してんだ?」
フェイリヤのこの怖いもの知らずなところはどこから来ているのか? そう思って、ジオが近くに居たメイドに尋ねると、メイドは苦笑しながら……
「お嬢様は昔からこうなのです。その……家庭の事情から、よく抗争や暗殺、誘拐などの危機に晒されているのですが……全部無事に助かっているほど、運がいい方で……気付けば、何があっても自分は助かる……何をやってもうまくいく……そう思い込んでいるところがありまして……。その裏では、旦那様や私たちお付きや組織の構成員の方々たちが色々と……うぅ、それはそれはもう頑張ってるんですけど……」
「め、メチャクチャ運のいいお嬢様か……た、確かに今回もある意味、俺たちと偶然出会ってなければ、フラグ冒険団もさっき死んでただろうしな……」
「はい。そんなことが十年以上前からずっとで……正直、私たちはいつもハラハラで……」
「はっ、そりゃごくろーだったな。……えっと……お前らは……」
ヨヨヨ、と泣く二人のメイド。
二人の話に頷きながら、そういえばメイド二人の自己紹介はされていなかったことに気付いたジオ。
メイドたちもそれに気づいて、慌てて身なりを整えてから、スカートの裾を軽く摘まんで……
「あっ、申し遅れました。私、お嬢様のお付きをしております、ナデホ・レイルといいます」
「私は、ナデホの双子の妹で、同じく幼い時からお嬢様にずっとお仕えしております、ニコホ。ニコホ・レイルです」
黒髪のショートカットのナデホと、白銀のショートカットで褐色の肌のニコホ。
「へぇ、双子なんだな……」
「あっ、姉妹? 確かに顔は似てるなーって思ってたけど、髪や肌の色が違うんで……」
確かに、顔は瓜二つ。
だが、髪や肌の色は違うことにチューニが疑問に思うが、ジオは別に気にならなかった。
「別に、姉妹で肌の色や瞳の色が変わることだってあるだろ? 俺の知ってる三姉妹も……そんな感じだったしな」
不意に、かつて帝国に居た三人の姫を思い出し、特に気にすることではないとジオは流した。
だが、そのとき……
「リーダーの言う通り、あり得ない話ではない。肌や目、髪など、どのような遺伝子の影響を受けるかはランダムであり、父や母、どちらの遺伝子を色濃く受け継ぐかも人それぞれだ。仮に、髪や肌、瞳の色が兄弟姉妹で違っていても、おかしな話ではない。まぁ、双子でそこまでバラバラなのは珍しいかもしれないが……DNAの組み合わせで――――――」
「「「…………???」」」
マシンがまるで学者のように説明するが、正直その言葉をこの場に居る者たちは誰も理解できなかった。
「こ、この方は何を言ってますの? でーえぬえー?」
「おい、マシン、お前、何語を喋ってんだ?」
思わず呆気に取られたフェイリヤとジオがそう尋ねると、マシンはゆっくりと目を閉じて、
「……気にする必要はない。自分が勝手に呟いただけで、不要な情報だった」
それはまるで「これ以上説明しても無意味」と思っているかのような言葉で、フェイリヤは若干ムッとした表情を浮かべた。
そんな状況の中……
「おっ? おーい、ウヌら! 外を見てみぃ! なんか見えて来たぞ?」
薄暗い海底の奥深くに、ついに底が見えてきた。
海底にそびえる岩々に囲まれて、大きく異質な円柱状の建造物が見えて来た。
「うおっ、おお……」
「本当にあったんだな……」
「なんか……都市というか……」
都市というほどではないが、城と呼べるぐらいに大きな建物。
それは、都市というよりは、むしろ……
「基地?」
そう、何かの基地のように見えた。
「それにあの建物……何で出来てるんだ?」
自然に出来たものではなく、明らかに人工物。
そして、その建造物の外壁にジオたちは首を傾げた。
それは、木造でもレンガでも岩を削ってできたものではない。
「……鉄か?」
「いや、それだけには見えないけど……」
もっと別の素材……
「……やはり……そういうことか……」
「「「「ッッッ!!!???」」」」
「破壊せずに放置されていたものが……まだ残っていたのか」
するとそのとき、現れた建造物を見て、マシンが一人だけ何かを理解したかのようにそう呟いた。
「おい、マシン? お前……何か知ってんのか?」
「……いや、アレは初めて見るし、あんなものがココにあることは知らなかった……だが……」
「……だが?」
「アレが何かは知っている」
「ッッ!!??」
知っている。そう呟いたマシンは、どこか昔を懐かしむかのような、そしてどこか切なそうな表情を浮かべた。
「あら、どういことですの? 御マシンさん? というより、あなた、先ほどから随分と物知りですわね!」
伝説とまで言われた海底都市は、マシンが知っているものであるということに、流石にフェイリヤも興味深そうに尋ねる。
するとマシンは、建造物を指さして……
「アレは、特殊な金属を融合させた合金でできている。錆びずに劣化することもないもので『超絶合金』と呼ばれるものだ」
「ごーきん? なんですの、それは。この、博識美女であるワタクシでも知らない物質がこの世に存在するとでも?」
「ああ……知らないだけだ。あなたが、勉強不足なわけではない。知らなくても当然のモノ……」
「なんですの、それは! 先ほどからこのワタクシをバカにしているんですの?」
知らなくて当然もの。だが、そこでジオたちが気になったのは、「なぜマシンは知っているのか?」ということである。
「……ふむふむ……おーい! あの建物の下に穴が開いておるぞ? あれが入り口かと思うが……」
「とーぜん、入りますわ! このワタクシが知らないものを、知らないまま放置など許せませんわ! 知らなかったものは、全て解き明かしてくれてやりますわ!」
ガイゼンが窓ガラスを叩いて建物の入り口を指す。そこには、確かに中に通ずると思われる、舗装された穴のようなものがあった。
潜水艇でも入れるほどの、巨大な穴。
そして、穴付近は薄暗く、正直中に入らなければ何も分からず、何が出てくるかも分からない。
「ちょ、怖い怖い怖い! なんか、海のモンスターだけじゃなくて、幽霊まで出て来そうなんで! リーダー、マシン、ガイゼン様ぁ、お願いだから守って欲しいんで!」
「あ、あのぉ、リーダーさん……で、できれば~」
「わ、私たちも……」
「じゃ、じゃあ、わ、私たちも……」
どこまでも勇ましいフェイリヤに比べ、いきなり何かが飛び出してくるかもしれないという恐怖に怯える、チューニやメイド、そしてフラグ冒険団たちは、コッソリとジオとマシンの背中に隠れてしまった。
「ったく、テメーらときたら……」
そんな一同に呆れるジオだが、ジオ自身は何が出てくるか分からないという状況に、少しだけワクワクしていた。
「心配する必要はない。もうこの中に……『人』は居ないはずだ」
そう呟くマシンに、チューニたちは「人じゃない何かは居たりするのか?」と聞こうとしたが、それは余計に怖くなるだけなので、誰もあえて聞かなかった。
そして……
「ん?」
「……壁? いや、違うのう。上に続いておるわい」
穴に入って何が出るかと思えば、入った瞬間、目の前にはいきなり壁が現れ、かと思えば天井は吹き抜けになっており、どうやら上へと続くようになっていた。
潜水艇とドラゴンに乗ったガイゼンは互いに確認し合いながら、上へと登り、どんどん建造物内部へと進んでいく。
すると……
「えっ?」
「おお……これは……中々、広いのう……」
上へ上ると、広い空間に潜水艇が顔を出し、その空間には海水が浸されておらず、どういうわけか空気もあった。
そこは、巨大な丸屋根に覆われた室内で、まるで港のような空間になっていた。
「おいおい……なんで海の中なのに、海水に浸されてないんだ?」
「……魔法? いや、そういう力は感じなかったが……」
なぜ、海底にこのような空間が? 思わず口にしたジオたちに、マシンは……
「このドーム状の空間から発する特殊な磁場で、海水が室内でこれ以上水位が上がらぬように堰き止めているのだろう。空気も充満していることから……『研究所』そのものは生きているのだろうな……」
「……な、なに?」
建造物でも遺跡でも都市でも基地でもなく、マシンはハッキリと「研究所」と呟いた。
それがいったい何を示しているのか? そして、更に……
「おい、あそこに、扉があるぞ!」
「おっ、ほんとだ……まさかあそこから、更に中に入れるのか?」
広場の壁際に大きな扉。しかし、固く閉ざされており、更にその扉の物質は周りの壁とは明らかに異なる材質で作られている。
明らかに、鉄よりも遥かに強固な扉。
潜水艇から飛び降りて、ジオたちが壁際まで近づいて扉の前に立ち、触れてみる。
「でけーな。それに、固そうだ」
「取っ手もついてないし、鍵穴もついていないな」
「一応、閉まっているみたいだな。押しても、ビクともしない」
「ふむ……無理やり壊して入るか?」
「なるほどな……これが、幾多の冒険者たちを阻んだといわれる封印の扉か……」
確かに強固そうな扉。しかし、ここにはジオもガイゼンもマシンも、そして強力な破壊力を持ったチューニも居る。
壊して入ることも可能だろうと、ジオが頷こうとしたとき、マシンが前に出た。
「やめろ。リーダーたちの力であれば、無理やり扉は開けられるかもしれないが……この建物自体も崩壊しかねない」
「マシン?」
「それに、力を使わなくても開けられる」
そう言って、マシンが扉ではなく、扉のすぐ隣にある壁に手を触れる。
その壁には、奇妙な文字が刻まれた、指先一つで押せるような小さなタイルがいくつもあり、マシンが手を触れた瞬間……
『パスワードを入力してください』
「「「「ッッッッ!!!???」」」」
壁から、無機質な声が聞こえた。
「なっ!? か、かかかか!?」
「壁が喋った!?」
「誰かいるのか!? この壁の向こうに!?」
「ぎゃああああああああ、マシンの嘘つきなんで!? 人は居ないっていったのにいいい!?」
「ほほぅ、ワシもちょっと驚いたぞい」
自分たち以外の人の声。まさか壁からそんなものが発せられるとは思わず、これにはジオも驚き、そんなジオ、そしてガイゼンの後ろにチューニたちが一斉に隠れる。
だが、マシンだけは何も驚かず、むしろ当たり前のこととしてそれを捉えている様子。
「電源はまだ生きている……なら、パスワードを解析も可能……パスワードは……10桁の数字か……3回間違えると不正防止ロックが起動するか……パスワードの解析にもう少し時間がかかる。少し待っていて欲しい」
そして、マシンはそのまま指先を手慣れた様子で動かし……なぜかその際に、チカチカとマシンの瞳が点滅したりして、何をしているかが誰にも分からない。
すると、その様子に業を煮やしたフェイリヤが……
「ちょっと、何を考え事していますの、御マシンさん! こういう、何もヒントがない謎のパズルのようなものは、考えないでまずは触れることから始めるのですわ!」
「………………ん?」
そのとき、よほどマシンは集中していたのだろう。素早い動きに定評のあるマシンの反応が遅れ、そんなマシンの後ろから前へ割り込んだフェイリヤが壁の窪みを押していく。
「あ、そーれ、あ、そーれ、あそれそれそれ♪」
「あっ……」
尻をフリフリ振って踊りながら窪みをテキトーに押していく、フェイリヤ。
そして、同時に……
『パスワードが違います。パスワードが違います』
謎の壁がまた声を発し、そして……
「まっ、待て!?」
『パスワードを認証しました。扉が開きます』
「……ん?」
壁は再び声を発し、同時に部屋が揺れ、音を響かせながら、巨大な扉が勝手に開いたのだった。
「「「「う、うそ…………??」」」」
もはや、開いた口が塞がらない一同。
「おーっほっほっほ! ほら見たことですか! よく分かりませんが、この壁の中の人もワタクシの美貌に見惚れて自ら扉を開きましたわ! そう、このワタクシを阻む壁など、どこにもないのですわ!」
機嫌よく高笑いするフェイリヤ。……
「まさか……十桁の数字をテキトーに押して三回目で解除するとは……恐ろしい天運の持ち主だな……」
フェイリヤのその姿にマシンは少し呆気に取られた様子で、溜息を吐いていた。
そして、マシンは……
「まぁ、いいだろう。ここに大したものは残ってないと思うが……せっかく破壊せずにそのまま残されていた遺物だ……記念に見ていくのも―――――」
「ほらほら、行きますわよ、あなたたち! 壁の中の人たちに、地上の女神が現れたことを教えてあげるには、従者のあなた方もしっかりしないとダメですわよ! おーっほっほっほ!」
と、マシンが皆に告げようとするも、フェイリヤは全く聞く耳持たずにマシンの言葉に被せて、剣を掲げて皆を先導する。




