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第百四十四話 五人目??

 これからこの王都に更なる絶望を与える者としてその存在をついに明らかにした、ジャレンゴクの組織の一人である、「セプティマ」という存在。

 誰もが女の言葉に口を閉ざす中、女もまた驚いた様子で絶句している。

 それは……

 

「量産型だった自分だが……覚えているだろうか?」


 水晶の向こうに居るセプティマに問うマシン。

 すると、セプティマはようやくハッとしたように……



『オ~……まさか……動いているターミニーチャンが居たのは驚きデース。ほとんど廃棄処分したつもりデーシタが……』


「ちょっとした誤作動と……まあ、色々とあってな……」


『そうデーシタか……大昔に作った子供と会えたのは嬉しいデース』



 再び怪しく妖艶な笑みと共にマシンに返す。二人のやりとりに状況がまるで理解できない周囲もただ、黙っているしかなかった。



「子供……か。自分のような量産型に対してもそういう感傷があるのだな」


『オー、心外デース。ワターシは、ターミニーチャンをとてーもラブデーシタ。ターミニーチャンに、ダッチハズバンド機能を付けて楽しんだものデース♪』


「……そうか……兄弟機には同情する……」


『ワオ! アナータ、感情が芽生えているように見えマース。これは面白い兆候デース。余裕があれば、回収しておきたいデース』



 そして、他愛のないようで、どこかギスギスした会話が続く中、セプティマの発言に対していつも冷静沈着なマシンが……


「回収? 自分を? やれるものならやってみろ」

『ッ!?』

「もう既に、自分の緊急停止回路は破損している。回収する気なら、自ら来ることだな」


 静かに、しかし圧のある声でセプティマに言葉をぶつける。

 だが、その言葉を受けて、セプティマは更に鋭い狂気の笑みを浮かべた。


『スーバラシイ。是非とも生意気な心を芽生えさせたターミニーチャンを、ベッドで屈服させたいデース』


 水晶越しだというのに、何故か聞いているだけで寒気のする声。

 場の空気が更に冷たくなったように皆が感じていた。


「で……それより、あなたはこの星で何をしている? ナグダは既にこの星から撤退したはずだが……」


 だが、マシンはセプティマの狂喜を冷静に受け流し、話の本題に入る。

 それは「お前は何をやっている?」という問いだ。

 すると、セプティマは……



『証拠隠滅にキマーシタ』


「なに?」


『おーっと、これ以上は言えマセーン。アナータが、ママをい~っぱい満足させてくれたら、考えてあげてもいいデースガ』



 証拠隠滅という不気味な言葉を残してそれ以上は語らないセプティマ。

 だが、それだけで分かるはずがない。


「では、魔界で何をし、そして何故この地を襲撃しようとしている?」

『オ~、アナータはさっきから聞いてばかりデース。いくらママでも簡単には教えマセーン』


 そう、これからジャレンゴクの組織を率いて王都を襲撃。更に、キオウの話が本当であれば、その流れでハウレイム王国や、勇者オーライを始末するつもりなのである。

 それを「セプティマ」がしようとしている理由は何か? 


『たしかにあなたは興味深いデースガ……別にどうしても回収したいわけではありマセーン。むしろ、余計な存在になるのなら、今から王都と一緒に削除しても構わないのデースカラ』


 だが、マシンの問いにセプティマは答えようとはしない。

 すると、マシンは……


「……4番目……クァルトゥムと、あなたは繋がっていたのか?」

『4番目? それは生体兵器のデースカ? どういうことデース?』

「つい先日、投影機を使って勇者オーライの悪事を暴露し、地上を混乱させた者だが……」

『ん~? アレは廃棄したはず……どういうことデース? ……『あの男』からは何も……』


 4番目。それは、ジオたちにも理解できた。

 オシリスのことである。

 そしてその存在は、6番目と言われているセクと同じような存在。

 だが、セプティマは4番目の存在を認識していなかったのか、少し驚いた声を上げる。

 

『で……4番目はどこに居マースカ?』

「死んだ」

『……?』

「自分が始末した」

『ワオ!』


 しかし、その存在はもう既にマシンが倒している。

 マシンのその言葉に更に驚いた様子を見せるセプティマだが、すぐに鼻で笑った。

 

『量産型が生体兵器シリーズを倒すなど、不可能デース。もし、それが本当なのだとしたら、この星のお友達と協力しマーシタカ? ターミニーチャンにお友達とは、ママは嬉しいデース』


 マシン一人で倒すのは不可能だと断言するセプティマ。

 だが、実際はマシン一人で倒した。

 そのことはジオたちも証人として見ているので、嘘ではない。

 だが、そのことを言う前に……


「ね~、どーでもいいけどさ~、セプちゃん、僕を助けに来てくれる気ある~?」


 と、捕縛魔法によって全身も力も魔力も封じられたジャレンゴクが退屈そうにしながら口を挟んだ。

 すると、セプティマはジャレンゴクを小ばかにするように笑った。


『お~、ボス~、死んでしまうとは情けないデ~ス』

「生きてるよ~?」

『死んだも同然デ~ス。ですので~、ボスの仇は私たちが取ってあげマース』


 セプティマはまるでジャレンゴクを敬っていなければ、心配している様子もない。

 


「う~ん……助けてくれないの?」


『そうしてあげたいデースガ……元々ボスがゴッコ遊びをしたいためだけに作った組織……皆さんもボスの威光の下でイイ思いをしたかっただけで、誰もボスに忠誠心もありまセーン』


「あらら……じゃあ、僕の組織は君に乗っ取られたの?」


『いいえ~、『更に巨大なチーム』に併合する予定というところデースネ』


「え~、どっちにしろじゃない? 僕が作ったのに、僕を追い出すんだ~、ひどいな~」


『仕方ないデース。女は……No2の男より、No1に惹かれるものデース♪』



 ジャレンゴクを敬っていないのは、セプティマだけではない。

 それは、組織のメンバーのほとんどがそうだと、セプティマは告げた。



『ボス~、残念ですがお別れデ~ス。ワターシを組織に二つ返事で入れてくれたのに、ワターシとのベッドインを『キモイからヤダ』なんて言ったボスは~、王都と一緒に滅んでもらいマース♪』


「え~……まだ根に持ってるの~? だって、君、キモイじゃん。色んな奴らに唾つけられまくった料理なんて誰も食べたくないでしょ?」


『ワターシにそんなことを言ったのはあなただけデース。せめて、廃墟となった王都から、遺体だけはサンプルで持ち帰ってあげマース。だから、バイバイデース!』



 投げキッスをしながら笑みを浮かべながら手を振るセプティマ。

 その瞬間、水晶に映し出されたセプティマの姿が消えた。

 あとに残されたのは、結局どうしてこの王都が襲撃されるかも分からぬ一同だけ。


「くっ……け、結局なんだったんだ? 一体何が起ころうと……それに、そこの貴様……オーライの悪事とはなんだ? 兄上も、デタラメなことを言っていたが……」


 何が起こり、何が起ころうとしているのかが全く分からぬ中、兵を束ねるクッコローセも弱々しい表情を見せながらマシンに尋ねる。

 すると、その問いに対してマシンは厳しい表情で答える。


「今更、お前たちが知ってももう遅い。せめて……キオウの話をしっかり聞いていれば……」

「くっ!? な……に?」


 そう、今更知ったところでもう何もかもが遅い。

 敵が近づいているこの状況で、既に王都に駐留する新政府軍の兵たちは全員疲弊しきっている。


「だが、それでも話せというのなら、せめてもう一度キオウを交えて……」


 とにかく、話をするにしても、投獄されているというキオウも交えてもう一度話をしよう。

 マシンがそう提案しようとすると……


「ね~、どうでもいいからさ~、僕を解放してくれな~い? 僕、もう邪気眼魔竜冥獄団じゃないっぽいし……僕、人質にもならなそうだし」


 サラリとノンキにジャレンゴクが声を出す。


「くっ、ふざけるな! 黙っていろジャレンゴク! 貴様を解放できるはずがないだろう!」


 無論そんなことできるはずがなく、クッコローセが激怒する。

 しかし、ジャレンゴクもタダで解放しろと言うわけではない。



「じゃあさ~、セプちゃんとかムカついちゃったから、あいつら全員9.9割殺しをしてあげるから、それで許してよ」


「「「「ッッッ!!??」」」」



 それは、交換条件。これから攻めてくる敵を自分が追い払うから解放しろというものだった。


「くっ、いや、それでもできるか!」

「いや、将軍……でも、こいつの力なら……」

「ふざけるな! せっかく、俺たちが命がけで捕らえたんだぞ!?」

「むしろ、こいつがそのまま連中と合流して一緒に俺たちを襲うなんてことに……」


 だが、当然それでもできるはずもなければ、そもそも信用すらできないと、兵たちは一斉に反対の声を上げた。



「くっ、バカも休み休み言え、ジャレンゴク。貴様など存在そのものが災厄! 再び貴様の首輪を外して自由にさせるなどできるか!」


「え~、それ困るな~。僕、まだ死にたくないんだけどな~」


「くっ、何を今更! だいたい、仲間にも裏切られて既に一人となった哀れな貴様が、これ以上何をしたいと言うのだ!」


 

 そう、自らの手で作った組織のメンバーからも既に見捨てられ、むしろ殺されそうになっているジャレンゴク。

 だが、ジャレンゴクはそんなクッコローセの言葉に首を振る。


「そう。僕、一人ぼっちになっちゃった……かと思った……けど、そんなことないよ。だって、新しい友達が僕には居るんだから」


 仲間に裏切られているというのに、そのことは全くショックを受けた様子のないジャレンゴク。

 その理由は「もう新しい友達が居る」という理由。

 その友達とは?



「ね?」


「「「「ッ!!??」」」」



 そう言って、ジャレンゴクはジオパーク冒険団の四人を見て、衝撃の発言をする。



「ねえ、チューニくん。僕を君たちの冒険団に入れてよ」


「「「「はっっ!!??」」」」



 サラリとジオパーク冒険団に新入団候補が現れた。


 それは、魔界最凶の存在だった。


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書籍書影(漫画家:ギャルビ様) 2022年4月6日発売

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