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34 外泊の夜

トシヤとエイミーの夜が次第に更けて行きます。2人の間にどのような出来事が起きる二でしょうか? もしかして、18禁のような危ない話が・・・・・・

 エイミー・15歳、色々と好奇心旺盛なお年頃。だが彼女は、なぜか男女のあれこれを全く理解していなかった。


 彼女は小さな村で過ごしていた頃、周囲には同年代の女友達が何人か居た。彼女たちとは一緒に学校に通ったり、おしゃべりを楽しむ仲でごく普通の友達だった。この世界では女性は殆どが16,7歳で結婚して、20歳前に出産する。したがって同じ年代の男の子と付き合っている友達も何人か周囲に居た。だがその女友達は『エイミーはそういうキャラじゃないから』という理由で、彼女が居る時には恋の話や男女のあれこれの話を控えていた。


 こうして村娘のエイミーは全く何も知らないまま純情な少女として育ってきた。いまだに『キスをすると子供ができる』と信じているし、トシヤと出会う前にゴブリンに襲われた時にも『食べられてしまう!』という生命の危機と恐怖を抱いていただけで、若い女性は死ぬよりも辛い目に会うとは知らなかった。




 そしてこの天然系純情娘は食事を終えて部屋に戻ってから、トシヤを目の前にしてなんだかモジモジしている。トシヤにお願い事があるのだが、打ち明けるタイミングが中々掴めないらしい。


「エイミー、先に風呂に入っていいか?」


 1泊金貨2枚という高級な宿なので、部屋に専用の風呂が付いている。それも1人で入るにはもったいないくらいに広々とした造りの風呂だった。


「ト、トシヤさん! みゃってください!」


 なんだか焦り気味のエイミーは思いっきりセリフを噛んでいる。『普段からノンビリしていて滅多に焦る場面を見せないエイミーが一体どうしたことだろうと?』とトシヤは立ち上がるのをやめてソファーに再び腰を下ろす。


「そ、そうです! トシヤさんは何でも私の言うことを聞くといいましたから、今日一日は私のわがままを聞いてくれるんですよね?」


「まだ何かあるのか? 俺にできる話だったらいいけど」


 エイミーの願いを聞いてこうして外泊をしているというのに、これ以上何があるんだろうという表情でトシヤは彼女が切り出す言葉を待つ。


「えーとですね、せっかくこうして外泊したんですから、一緒に…… そ、そのですね…… お風呂に……」


「んん? 風呂がどうしたんだ?」


「だから…… 一緒に、そ、その」


 エイミーの途切れ途切れのフレーズと彼女のモジモジする態度で、トシヤは何が言いたいのかようやく気が付いた。


「エイミー、もしかして一緒に風呂に入りたいと言っているのか?」


 エイミーは顔を真っ赤にしながら頷いた。自分で切り出したものの、やはり恥ずかしさが込み上げているようだ。両手で顔を覆ったままベッドにダイブしてうつ伏せの姿で身悶えている。トシヤはしばらくその様子を見守ってから、静かな声でエイミーに語りかけた。


「いくらなんでもそれは恥ずかしいだろう!」


「嫌なんですか?!」


 エイミーはキッとした表情でトシヤに顔を向けている。トシヤの返答に少々ご立腹気味のようだ。


「俺じゃなくてエイミーが恥ずかしいだろうという意味だよ」


「私はすでに1回トシヤさんに素っ裸を見られていますから、全然平気です!」


 トシヤは心の中で『確かにそんな出来事もありました』と記憶を反芻している。あの時に見たエイミーの裸身は今でも彼の宝物として脳内メモリーに永久保存されている。


「じゃあ何でそんなに恥ずかしそうにしているんだ?」


「こんなお話を切り出すのが恥ずかしかったんです!」


 どうやらエイミーがモジモジしていたのは、話を切り出してトシヤにお断りされたり、スケベなやつだという目で見られたらどうしようという不安からのようだった。もうここまでぶっちゃけたからには、彼女はとうに開き直っているのだった。


「そ、それに…… トシヤさんが入院している時に何度もトシヤさんの恥ずかしい部分も見ているから大丈夫です!」


「お、おう! 確かにそんな出来事があったな」


 全身の負傷で身動きができずに、エイミーに色々とお世話になった例の件をトシヤは思い出す。あの時近くにエイミーが居なかったら、トシヤの膀胱は限界を超えていい年をしてとんでもなく恥ずかしい姿を晒していた。そう考えるとエイミーは自分の恩人でもある。ここはひとつ恩人の頼みを聞くしかないとトシヤは自分に都合良く考えることにした。


「そ、それじゃあ俺が先に入っているから、すぐにエイミーも入ってきてくれ」


「えっ! 本当にいいんですか?」


 エイミーの表情がパッと明るくなる。だがエイミー以上に喜んでいるのはトシヤの方だった。ゴブリンから救い出したあの時に一度見たきりだったエイミーの裸体に再度お目にかかる絶好の機会がやって来たのだから。





 トシヤが先に風呂場に向かってから5分後にエイミーが立ち上がる。


「うーー、なんだかやっぱり恥ずかしいけど、でもワクワクします!」


 そう呟きながら脱衣所に向かう。


 ドアを開いて脱衣所に入ったエイミーは、ドアの向こうの風呂場の様子を伺う。時々チャポンという水の音が響いて聞こえるので、トシヤはおそらく湯船に浸かっているのだろう。そのまま彼女は身に着けている衣服をスルスルと脱ぎだす。最後に下着を脱衣カゴの一番下に丸めて押し込んでから、ひとつ大きな深呼吸をしてドアノブに手を掛けた。


 カチャリ!


 湯船で体を休めているトシヤが音が鳴ったドアの方向に顔を向けると、ゆっくりと開いたその陰からエイミーが顔を覗かせる。


「トシヤさん、ちょっとだけ目を閉じてください。さすがにいきなり全部見られるのは抵抗があります」


「わかった、エイミーが良いと言うまで目を閉じているよ」


 トシヤに1度は裸体を見られているとはいっても、あれから大分時間が経過している。エイミーもさすがにそこまで度胸が座っている訳ではなかったので、トシヤが目を閉じたのを確かめてからゆっくりと浴室に入ってきた。当然トシヤは薄目でその様子を確認しているのは言うまでもない。もちろんエイミーの姿を脳内メモリーに全力で保存中だ。



 体をサッとシャワーで流してから、エイミーはそろそろと湯船に入ってくる。トシヤの横にピッタリと並ぶと彼に声を掛けた。


「トシヤさん、もう目を開いて良いですよ」


 トシヤは薄目で見ていたのが勘付かれていなかったようで、ホッとしながら目を開く。そこにはピッタリと自分の体に密着するエイミーの裸身があった。


「エイミーって色白で肌がスベスベだよな」


「えー、そうですか? 最近外で訓練する機会が多いので、前よりも日焼けしていますよ」


 お湯から引き上げた右腕をエイミーがトシヤの目の前に差し出すようにして見せると、半袖シャツの袖で覆われている二の腕の部分に僅かにわかる日に焼けた跡がある。ただそれはよく目を凝らして見ないとわからない程度の僅かな物で、エイミーの素肌は透けるように滑らかで色白だった。


「いやいや、俺に比べれば真っ白だろう」


 トシヤは日本人のご先祖様の体質を濃厚に受け継いでいる。髪や目の色が真っ黒で皮膚の色も平均的な日本人そのものだった。西洋人系の人種が多数を占めているこの世界ではかなり目立つ姿をしている。


「でも私はトシヤさんの髪と目の色が好きですよ。この国では不吉な色なんて言われていますが、ミステリアスでとっても魅力的です」


 エイミーはトシヤの瞳と髪の色にかこつけて、こっそりと遠回しに自分の気持ちを打ち明けている。彼女の本心は『トシヤが好き』と打ち明けたいだけだった。


「そうかな、人によっては俺の目と髪の毛を見てギョッとする人も居るからな。でもエイミーが『好きだ』と言ってくれたのは嬉しいよ」


 エイミーはトシヤの口から出てきたフレーズに完全に舞い上がっている。真っ赤な顔をしてそのまま両腕を伸ばして湯船の中でトシヤに抱きついた。彼女のやや小振りで発育途上の胸がギューっとトシヤの腕に押し付けられている。


「こらこらエイミー! 急に何をするんだ」


「えへへへ、トシヤさんに大サービスですよ!」


 柔らかな感触が腕に心地よい圧力を加えてトシヤも満更ではない・・・・・・ 違った! それどころか彼の股間のトシヤ君がムクリと反応している。彼は大慌てでそれを何とか誤魔化そうとするが、エイミーの目がその様子をしっかりと捉えている。


「あっ! またこれが大きくなりました! 本当に面白いですね!」


 なぜトシヤ君が大きくなっているのか全くその意味を理解していないエイミーの口から無邪気な声が上がっている。彼女は入院中のトシヤの介護で、散々トシヤ君をオモチャにして遊んでいたのだった。その目に映るトシヤ君が大きくなったり元に戻ったりする光景が大変お気に召している。


「こ、こら、エイミー! そんな所を握るな!」


 必死で誤魔化そうとしていたところをエイミーに暴露されて、更に彼女の手が股間に伸びてトシヤ君を握り締めている。おかげでトシヤ君は元気いっぱいに自己主張している。


「だってこれってとっても可愛らしいじゃないですか! 私だけのオモチャにしたいくらいです!」


 知らないこととはいえ、エイミーは恐ろしい言葉を口走っている。もし彼女が大人の知識をあれこれ仕入れたら、この遣り取りを思い出して羞恥に身悶えするかも知れない。対して股間を人質に取られたトシヤは身動きができずにエイミーにされるがままになっている。


「あとで私がきれいに洗ってあげますからね。またその時に大きくなったり元に戻ったりしてくださいね」


 エイミーはニギニギしながらご満悦の表情だ。本当に知らないとは恐ろしい。


「エ、エイミー・・・・・・ そろそろ離してもらえないか。そのままだと色々とマズイことになりそうだ!」


 トシヤが結構切羽詰った表情で申し出るので、しぶしぶエイミーは手を離す。その表情は心から名残惜しそうだった。


 エイミー・15歳、知らない内に大人の階段を駆け上る、怖い物知らずの天然娘だ!



 エイミーが満足して風呂から出ると、今度は一晩トシヤがエイミーの抱き枕になる番だった。彼女はトシヤに全身で抱き付いたまま、安心し切った表情で目を閉じる。そのあまりに無防備な寝姿に、トシヤは逆に何もできなくなるのだった。時々その胸の辺りに触れたみたりしながら、彼もいつの間にか目を閉じるのだった。






「あーーー! 夕べは本当に気持ちよく寝られました!」


 ベッドから起き上がったエイミーが大きく伸びをする。ベッドの中でもトシヤ君を握り締めていた彼女は顔がツヤツヤしている。反対に生殺し状態だったトシヤは少々やつれ気味だった。良くぞ一晩我慢をしたものだ、彼の精神力を褒めてあげたい。



 朝食を取ってから身支度を整えて制服姿になった2人は1階に降りていく。昨日散々あらぬ疑惑を掛けた受付嬢がカウンターから相変わらずニヤニヤした視線を送っているが、今更気にしたら負けだ。だが気が利く彼女の誘導で宿の裏口に案内された2人は、おかげで人目につかずに外に出られた。このような事情を察するのも有能な受付嬢のスキルなのだろう。



 トシヤとエイミーはそのまま魔法学院に歩いて登校する。エイミーが手を繋ぎたがったので、恋人繋ぎで手を握って歩く。まだ時間が早かったので、時折登校する貴族を乗せた馬車が通る他は、人通りが無い門に2人で入っていく。エイミーは今日の時間割に合わせて準備する必要があるので、そのまま手を繋いで学生寮に向かって歩いていくと、急に予想外の方向から声が掛かった。


「エイミーさん、入学早々外泊をした上に、男性と朝帰りとは困ったものですね。女子寮の風紀を守る立場としては見逃すわけには参りません」


 トシヤとエイミーがその声の方向を見ると、そこには例の新入生代表で挨拶をしたノルディーナが腕を組んで仁王立ちしている。彼女は女子寮の風紀委員を務めており、エイミーの外泊は彼女を通して提出されていた。舎監と顔馴染みになったトシヤと違って、一般の生徒は各種の届けを風紀委員に提出するルールになっているのだ。


「別に風紀を乱すような真似はしていないが、どこに問題があるんだ?」


 エイミーに代わってトシヤがノルディーナに対応する。彼自身現状では新入生ナンバーワンの問題児扱いされているので、今更問題が一つや二つ増えたところでどうでも構わないのだが、エイミーの立場は守らなければならなかった。


「本当に問題が無いと言い切れるのですか」


 ノルディーナは状況証拠から見て2人は真っ黒だと頭から決め付けているようだ。女子寮の風紀委員として一歩も引かない姿勢を見せる彼女とエイミーを守るために一歩も引かないトシヤの睨み合いが続くのだった。



またまたトシヤの前に現れたノルディーナ、彼女はトシヤとどのように絡んで行くのか・・・・・・ 次回はこのお話になりそうです。



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