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15 エイミーの自白 中編

「ふんふん、中々いい話なの! トシヤは白馬の王子様みたいなの!」


「そこまではどうですかね?」


「エイミーは助けてもらったんだからもっとトシヤに感謝するべきなの! ぜんぜん感謝が足りないの!」


「ですからさっき感謝の気持ちを込めてトシヤさんのお世話をしてきたばかりです」


「ずいぶんエイミーが楽しんだように聞こえたのは、私の耳のせいではないの! それよりもお話の続きを早くするの!」


「はいはい、続きですね。えーと・・・・・・」




 トシヤと出会った当時のエイミーの話が続く・・・・・・





 一先ずは危機を乗り越えた少年は額から流れる冷や汗を軽く拭って『ホーッ』と息を吐き出した。かなり際どいタイミングだったがこれで一安心できる。それと同時にまずはこの少女の目を覚まさせないことには身動きが取れないと考えた少年はマジックバッグから水筒を取り出して水を口元に当てて少しずつ流し込んでいく。目を閉じたままの少女の喉は小さな音を立てて水を飲み込んでいったが、相変わらず目を覚ます気配を見せなかった。


 レンガ敷きの街道に直に寝かせておくのは忍びないので、少年は毛布を取り出してその上に彼女を横たえて怪我が無いかを確認する。


「おい、聞こえるか? どこか痛い所は無いか?」


 膨大な魔力を使用し掛けたせいなのか、目を閉じている少女から返事がなかった。少年はこのままにはしておけないと手当てをしようとするが、見る見るその表情が真っ赤に染まる。なんとか落ち着きを取り戻した彼の目には、着衣が乱れて素肌が露わになっている少女の姿があった。特にゴブリンが捲り上げたアンダーシャツから覗く柔らかそうな胸の膨らみに彼の目は吸い込まれた。


(うほー! これはまた良き物をお持ちで!・・・・・・ いかん、まずは手当てをしなくては!)


 一瞬その胸に全力でダイブしそうになったが、何とか踏みとどまって理性を取り戻した少年は目の毒になる少女の色白の肢体に上着を掛けてから周辺を見渡す。幸いゴブリンが流した血の臭いを嗅ぎ付けた魔物がやって来るような気配はなかった。とはいえ落ち着いて手当てをするにはこの場からはなるべく早く立ち去った方が好ましいのは言うまでもない。


「よく聞いてくれ! 今からもっと安全な場所に運ぶからしばらく我慢してほしい」


 少女にその言葉が届いたかどうかは反応が無いからわからなかったが、彼は移動の準備に取り掛かった。マジックバッグから背負子を取り出して、その小さな荷台に少女を座らせてから毛布に包んだままその体をロープで括り付けていく。傍から見るとまるで人攫いのように見えるかもしれないが、今は緊急事態なので多少のことには目を瞑ってもらうしかなかった。


 そのまま少女を背負って彼はゆっくりと歩き出す。ここからできるだけ離れた所で安全に一夜を明かせる場所を探しながら街道を進む少年。その背中に括り付けられた少女は目を閉じたまま手足をブラブラさせてされるがままになっている。


 30分ほど街道を歩くと森に少し入った所に大きな洞がある大木を発見した。雨露を防ぐにはちょうど良い場所でこれ以上の贅沢は言っていられないと判断した少年はその中で一晩明かそうと決意する。大木の前で少女を一旦地面に降ろして、彼は洞の内部に入り込んで携帯用のマットを敷いてからその上に1枚敷き毛布を広げる。それから携帯ランプを出してスイッチを入れて内部を照らす。これは冒険者ギルドで金貨5枚で販売している魔道具で、冒険者にとっては必需品だ。


 用意が整ったので少年は力無く背負子にもたれている少女のロープを外して彼女を洞の中に運んだ。入り口は気配遮断シートで塞いで四隅を杭で留めていく。これも魔物除けに冒険者ギルドで販売している品で大きな効果があって重宝している。


「さて、手当てを開始するか」


 独り言で呟いた少年は毛布の上に横たえられて少女を改めて眺める。顔や手足は泥や土埃で汚れて所々に擦り傷を負っている。着衣は上着もズボンもゴブリンたちに破かれたり乱暴に剥ぎ取られたりしているので、ボロ布のように体を何とか覆っているだけだった。


 彼は手始めに二度と着れなくなった服を剥ぎ取っていく。少女は相変わらず意識を失ったままで、少年にされるがままになっている。


(これは人助けだぞ! いいか、心を落ち着けて手当てのことだけを考えるんだ!)


 煩悩に塗れながら少年は彼女の手当てを開始する。下着まで被害が及んでいるので上半身は全て脱がす。ズボンも下ろして何とか無事だったパンツ1枚のあられもない姿になった少女、その姿を見下ろす少年は思わず『ゴクリ』と生唾を飲み込む。ゴブリンたちに襲われ掛けたせいであちこち汚れたり薄っすらと血が滲んでいるが、それでもなおかつ少女の裸身は美しかった。その姿が童貞の彼には刺激が強過ぎてつい誘惑に駆られてしまうのも事実だ。


(いや、まずは手当てが先だ!)


 彼は首を振って頭に過ぎった邪な考えを捨てる。彼が何とか踏みとどまったのは、冒険者としての基礎知識を教わった彼の母親が口を酸っぱくして言っていた言葉を思い出したからだ。それは『ゴブリンの爪によって付けられた傷から体内に毒が回って場合によっては死に至ることがある』という話だった。正確に言えば、様々な雑菌によって感染症を起こしてしまうのだが、この世界の医療技術では病名まで診断できないので『毒が回る』と言われているだけだった。


 何とか気を取り直した少年だが、その割には何かを隠すように座り込んでいる腰が思いっ切り引けているのは気のせいだろうか? まあそれでも何とか少女を助けようとしている彼の心意気に免じて、少々下半身が反応している事実は見逃してほしい。全然少々ではなくて、むしろ『過敏に反応している状態」なのだが・・・・・・


 次にマジックバッグから取り出した水桶に魔法で作り出したお湯を準備して、濡らしたタオルで顔や体を拭いていく。心なしか胸の辺りは他の部分よりも丁寧に拭いているような気がするがあくまでも気のせいだ。何度も水桶のお湯を取り替えてタオルも交換しながら、汚れが落ちるまで何度も体を拭く。


 汚れに隠れていてよくわからなかったが、少女の体には無数の切り傷や擦り傷が出来ていた。


(結構傷がいっぱいあるな、これは薬を塗らないと不味いだろう)

  


 マジックバッグから数種類の薬草を配合した彼の母親特製の軟膏を取り出す少年、これを塗っておけば体に毒が回る心配が無いのだ。


(くんくん、相変わらず薬臭いな! でもこの臭いが強い内の方が効果が高いんだよな。あとは味を確認してひと嘗めして苦かったらいいんだな・・・・・・ ゲー! とんでもなく苦いぞ!)


 彼は軟膏をほんの少し指に取ってペロリと嘗めてからペッと吐き出す。その酷い味に思わず顔面のパーツが中央に寄ってしまった。いくら効果を確認するためとはいえ塗り薬を嘗めたのだから、こうなるのは仕方がない。そもそも時間停止型のマジックバッグなのでわざわざ効果を確かめる必要すらないのに、彼はそのことをすっかり忘れていた。こういうウッカリしている所は毎日のように母親から直すように言われていた彼の欠点だ。


 少女の右頬が少し赤くなっている。おそらく地面に強く押し付けられて擦り剥けてしまったのだろう。このままでは後から腫れ上がって愛らしい顔が台無しになってしまう。少年は顔を寄せて頬に丁寧に軟膏を塗りこんでいく。


(こ、こんな間近に殆ど裸で寝ている女の子が・・・・・・ 落ち着け! まずは手当てが優先だ!)


 真っ赤な顔で薬を塗りこむ少年、彼の心の中では天使と悪魔が血で血を洗う大抗争を繰り広げている。今の所は辛うじて天使が優勢のようだが、いつ悪魔が巻き返すかもわからないギリギリの戦いだった。


 肘や肩の傷の手当を終えてから彼の目は血が滲んでいる左胸に移る。彼の指が傷口に触れるたびに、軟膏が染みて痛いのか少女の体がピクリと反応する。その度に少年は『彼女が意識を取り戻したのか?!』とギクリとする。悪いことをしているわけではないのだが、かなりこのシチュエーションを楽しんでいる彼の意識が犯罪めいた後ろめたさを感じているのだった。


(場所が場所だけにこれは・・・・・・)


 少年の指が躊躇いがちにその胸の白い膨らみに添えられて軟膏をすり込んで行く。


(こ、この感触は・・・・・・ いや、我慢だ! 耐えろ俺!)


 歯を食い縛って手当てを続ける少年の額に一筋の汗が流れる。懸命に誘惑と戦うその表情は時にはダラリとして、また時には修行僧のように煩悩を消し去って無表情になる。だがどちらかというと、ニヤニヤしている時間の方が長いのは彼が童貞ゆえに仕方がない。


 大きな山を越えて上半身が終わったので先に特に酷い膝の手当を終えた少年の前にとんでもない難関が待ち構えている。おヘソが隠れるような色気のない少女の白いパンツにも少量だが血が滲んだ痕があるのだ。


(どうやらこれは命懸けの戦いになりそうだ。まずは心を落ち着けよう!)


 少年は目を閉じて心の中で数を数え始める。100まで数え終わってから彼はカッと目を見開いた。


(えーい、チマチマ遣ろうとするから逆にイヤラシくなるんだ! こういうことは思いっきり遣った方がいい!)


 コブシを握り締めて決意する少年、その表情はまるでこれから戦場に向かう兵士のようだ。


(いくぞ!)


 彼は両手を少女のパンツに掛けて一気に引き摺り下ろした。あまりに勢いをつけ過ぎて膝の辺りまで少女のパンツを下ろしていたのだった。必然的にその大事な部分が丸見えになる。


(こ、これは!・・・・・・)


 そのまま彼は固まっている。数十秒の沈黙の後にようやく再始動した彼は両手を顔の前に合わせた。どうやらパンツの中に傷はなくて、腰骨の辺りにある擦り傷の血が滲んだだけのようだった。だが今の彼にはそのようなことは最早どうでもいい。童貞が初めて目にした女性の秘密に心から感動しているのだ。


(大変いい物を拝見させていただきました。もうこの場で死んでも後悔しません! いっそのこと手当てを終えたらついでにこの子に童貞を捧げてしまおうか?)


 拝むような姿で少女を見つめる少年、だがその時に彼に大きな悲劇が降りかかった。今まで目を閉じていた少女の目がパッチリと開かれている。手を合わせる少年の額に再び一筋の汗が流れる。どうやら大惨事の予感がしてくるのは当たり前だろう。


 少女は寝ている姿勢のままで少年を見上げている。少年は拝んだ姿のままで少女を見下ろしている。二人の目が合って少女が数回瞬きをする。一瞬の沈黙が狭い空間に流れるのだった。


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