四十二話~私と世界崩壊と世界再創生~
英語なんて! スピーチなんて! 大っ嫌いだぁぁっぁ!!!
英語の授業で謎のスピーチをさせられました。
ボクはコミュ障的な人間だから日本語でのスピーチも嫌いだって言うのに、更に不得意な英語までくっついて、地獄でしたよ。
「……ふわぁ、良く寝た」
アルテナのベットの前に居座ってから、二時間近く経過していた。
勿論、私も封印させられていたりしていたので、こういう時間を待つことは慣れているのだけれど、苦痛であることは変わりない。
……封印は千年近くだったから比べ物にならないほどつらかったけどね。
「おはよう、アルテナ」
「おはよう」
私と言う存在が封印から解き放たれたと言う事をアルテナに伝えるために冗談であいさつをしたのだけれど、普通に返された。
完全に寝ぼけているよね。
「おーい、アルテナさーん、私だよー?」
「……んうぅ?」
布団に包まりつつ、アホ毛が立っているアルテナは私の事を見ても、全く私がハデスと言う事が分かっていない様だ。まあ、多分まだ寝ぼけているんだろうけれど、千年近くぶりの友人との再会に、その台詞が一言目だと少し悲しくなるよ。
私はアルテナ以上に常識人なんだよ。
「……アルテナぁ」
「……?」
……いくら立っても、私の名前を呼んでくれず、しかも「誰?」と言う様な表情をしていて本当に寝ぼけているのかも疑問になってきた。
もしかしたら、私の事を忘れてしまったのではと言う事を思ってしまうと、私の事をまともに知っている人が誰もいないと言う風に思ってしまうと、急に孤独感を感じて、少しだけ目じりに熱が溜まって来たような気がするし、心が痛い。
「……ほ、本当に分からないの?」
「あははは、嘘だよ嘘、本当にハデスは寂しがり屋だねぇ」
流石に、本当に泣きかけてしまい、蚊の鳴くような声でアルテナに質問してしまったのだが、それが間違いだったらしい。
アルテナは全く寝ぼけていなかった。むしろ私をはめるための演技だったのだろう。そのせいで私が泣きかけたけたことに貶しが入ってきた。
……絶対に後で泣かせてやる。
「ぶち殺すぞ」
「ぷぷぷ、照れちゃってぇ、可愛いねぇ」
アルテナは、私がアルテナに忘れられてしまったと言う事に悲しくなってしまったせいで完全に調子に乗っている。
それに、見た目が幼児と言う事もありうざさが倍増している。絶対に泣かす、もう泣きすぎて表情が分からなくなるくらいまで泣かせてやるっ!
「……遊びはここまでだ、じゃあ本題に行かせてもらう、私の扱いは何なんだ」
「ふふふ、本当にほほえましいねぇ」
流石に、ここまで貶されて、馬鹿にされて、子供の様な扱いをされて黙っている私ではなく、そもそも武力自体では私の方が数枚上手なので、単純に脅しているのだが、全く聞いていない。
しかも、脅しに屈していないと言うよりも、脅しと言う事を全く理解していない様で、私が脅している間にも貶してきた。
「……いい加減にしてもらおうか、ここの空間はもうすでに私の所有空間になっている」
「……はぁ、分かったよ、君の扱いは、私の秘密を晴らした場合の対策としてだよ」
どうやら、本気でアルテナは殺されかかっていると言う事を理解していない様だ。ここまでアルテナが馬鹿になっていたとは、流石の私も失望した。
ただ、かなり前からの、現存している幼馴染的な人間なので、あまり悪く言う気はないけれど。
「しかしねぇ、ハデス。ハデスは私の事を舐め過ぎだよ、私だって成長するんだよ」
今の私の扱いの説明を軽く受けたけれど、流石にそれで満足する、納得する人間はどこにもいないだろう。と言うか、それで受け入れる人間は奴隷精神がついてしまっている奴か、殺され掛けていて、脅されている人間とか、特殊な状況の場合だろう。
私は、奴隷精神はついていないし、雑な扱いを受けて喜んでしまう被虐嗜好の神でもないのであしからず。
「あまり馬鹿にしないでもらえるかな」
そんな、アルテナに、泣きかけていたことを貶され、そして、私の社会的立場を脅かされるようなことをされ、その説明も雑にされたという状況に不満しか持っておらず、そして唯一私の長所である、武力まで馬鹿にされてしまい、本気で機嫌が悪くなってしまった。
「あはは、君が封印された千年の間に、私はいくつもの技能を手に入れてきた、例えば『異能:次元の複製』」
「なに? その球は?」
アルテナに私の武力まで馬鹿にされ、そして全くない胸を張り、私に見せつけてくれたものは、今までの魔法や、神性魔法の様に、魔力の消費をせずに、私の周りに二つの小さな球体を創造した。
その、魔力を消費せずに、無から有を作り出すと言う事は、私からすれば本当に衝撃的な事だったが、無を元に無から有を作り出すと言う事は結局それほどの物は作りだせないだろうけれど、エネルギーの効率は百以上になっているので、異常ではある。怖くはないが。
「この球体はこの世界を完全に複製し、そして縮小したものだよ。つまりは、この球体の質量やら密度やらはとんでもない事になっている、つまりはここでこの二つの球を合わせると……どうなるんだろうね?」
「……何を言っているのさ、流石にそんな戯言を信じれるわけがないでしょ」
私は、アルテナよりも頭は弱く、そして自分でも猪突猛進な性格をしている風に思えるけれど、流石に常識くらいは分かっている。
だからこそ、密度? 質量? と言った物が、今作った方便だと言う事くらいは分かっている。
「ふふ、ハデスはライムの記憶を完全に読み取れていないんだね、じゃあ見てみようか――――この世界が崩壊する姿をね?」
そして、私の周りに浮遊していた、小さな球体は私とアルテナのちょうど中間近くで、ぶつかり合った。
その瞬間、天界すらも一撃で崩壊させてしまいそうな滅茶苦茶な暴威が爆発し、私に威力が当たる瞬間に結界を張れたはいい物の、本気で集中してしなければ、一瞬で壊れてしまうほど、異常な力を持っていた。
「これが新たな私の力だよ、ハデス! どうだ、科学と魔法を併せ持ったこの暴威は! この力があればこの世界など微塵もないのだよ!!」
「あ、アルテナッ! 何をしているの!? 自分で守るって決めた星じゃないの!?」
その暴威は、完全に天界は破壊し尽くされ、そして今、一番生物が活動している地上界までも破壊していた。
そして、数分後、冥府までもその暴威は振るわれていた。
「は、ハデスぅ、ど、どうしよう」
「なんだ! 今更何を言っているんだ!」
そして、何を考えているのかは分からないが、黙々と破壊されていく世界を見ているアルテナが急に、私に向かって先ほどの様に話し掛けてきた。
流石に私だって、アルテナに目を覚ましてもらいたいが、流石にそこまで都合の良い事が起きるわけがないと言う事は分かっている。これは完全なる、アルテナの策略だ。
「ち、違うんだよぉ、ハデスごと、私の強固な結界を吹き飛ばそうと思ったら、こんな威力が強い物とは思わなかったんだよぉ、ゆ、許して、世界直すから『世界の再創生』」
そして、完全に破壊され、何もなくなってしまった世界に、いつの間にか、先ほどと同じ様な光景があった。
……まさかとは思うけれど、ねぇ? 先ほどの「ど、どうしよう」と言う様な台詞が本当な場合だったら、本当に安心したけれど、人々を一体何だと思っているんだ。
「アルテナ? 安心したのは事実なのだけど……本当に言っているのかな?」
「うっ、そ、そうだけどさ、その、怒らないで?」
本当にアルテナは事故と言うか、いたずらでした様だ。
流石に世界を崩壊させた事を許せるわけがなく、ただ、勿論本当に、友達であるアルテナが闇に堕ちたりしていないと言う事に、安心しきったが、そんな感情を出させたという事実にムカ着いたので確りと説教をしてやることにした。
本当に、安心したぁ。
「うぇぇぇぇぇん!!!」
あれから五時間ずっとぶっ続けにアルテナに対して説教を行っていた。
勿論私的にはもっと、もう二日間近く説教をしていたかったのだが、流石にもう日が明けて来ている。つまりは、もうすぐライムが復活すると言う事だ。
マイクにも言った通り、私がライムの事を出さなくてもいいけれど、それは世界的に不味い。ライムは世界の救世主としてきている。だから本当は嫌だけれど私は精神の奥底に行かなければならない。
「はぁ、流石にもうすぐ日が明けるから私は帰るよ」
アルテナに、天界を離れ、そしてまたライムと魂の立場を交換すると言う事を告げたのだが、未だにアルテナは「うぇぇぇぇぇっぇっぇえっぇぇぇ」と言う様な、意味不明な鳴き声をずっと上げており、聞いているかは謎だった。と言うか絶対に聞いてない。
「あー、もう帰るからね、天使の人らにも説教させられてね」
「うぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!! い˝や˝だ˝ぁ˝ぁ˝!!」
もう完全に、説教をされるのは嫌になっている様だった。
だとしても、これは完全に幼児過ぎるでしょ。
「じゃあね!」
英語ってどうやったら怠惰なボクにも身につくんですかね?




