三十二話~ボクと覚醒した勇者と消滅しなかったボク~
ようこそ、夢と希望の街へ
(某カードバトルゲームのキャラ)
「お、おい! あいつらが来てるぞ! おま、マジでどうするんだよ!」
「どうするも何もねえ? そりゃ逃げるか死ぬかくらいしかないんじゃないの?」
勇者の驚いた時に出てきた叫びが、謎生命体達に聞き取られてしまい、ボク達の方へゆっくりと向かってきていた。
こういう時のゆっくり向かってくるって言うのは本当に怖いよね、まるでホラーゲームだよ。
「何が死ぬかだよ! なんでお前はそんな楽観的にいられんだよ!」
「あはは、マイク君、何を言ってんのさ? これは諦めって言うんだよ?」
勿論、完全に諦めたわけではないのだが、ここから脱出して生き残ると言う事は殆ど無理だろうと言う事は簡単に予想がつく。
ただ、ボクもさっきの魔法よりは範囲が小さいけれど、広範囲に効果がある魔法だって使えるから工夫していけば生き残れるのかもしれないけどね、こういう敵の動きを読むって言う事はボクはすごく苦手だから無理だと思うね。
「何が諦めだよ! いい加減にしろよ!」
「いい加減にしろと言われても、出来ない事は出来な――」
「……俺が行こう」
この会話はボクがマイク君を弄る事と少しでも思考時間を長引かせるようなことが目的だったのだが、マイク君を弄ると言う事はまたまたあの、ボクキラーの勇者によって破壊されてしまった。
しかし、勇者はこれを殺せないとか言っていたように思ったんだけど……まさか、あとから参加する俺かっこえぇ、みたいな感じで温存してたり?
「な、何言ってんだよ! お前はあれを倒せないだろ!? そんなんならライムを生贄にしていった方が――」
「すまない、俺はいまだに義務を果たすために犠牲を大きくしようとしてしまった。今から本気を出すから、お前らは隠れておけ『強制拡張:偽神』」
そして、勇者は光り輝き、背中からは六対の白翼が現れた。
その姿には、自然と拝んでしまう様な、そして小さな罪でもすべてを吐いてしまいそうな美貌と威厳を兼ね備え、それはアルテナとは違う本当の神なのかと思ってしまった位には超現実的な存在だった。
……まあ、勇者が言っていた「義務を果たすために犠牲を大きくしていた」と言う台詞に、「作戦を成功するためには多少の犠牲は仕方がない」とか言ってたボクはすごくいたたまれなくなったよ。
マイク君にも嘲笑されてしまったし。
「ありがとう、俺は神には完全に従わなければいけないと言う考えに縛られていた、しかしそれでは犠牲が必ず出てしまう。
俺はそれが本当に苦痛でしかなかったんだ。見ていてくれ『神の聖域』」
その勇者が発した言葉は、ボク達人間の心が浄化されていくような気がするような、そんな暖かく、そして快い気持ちになったそれは、聖とは対の悪である謎生命体には害悪なものでしかない様で、もがき、苦しんでいる様だった。
……まあ、ボクも精神的に痛めつけられて苦しいんだけどね。と言うかボクは浄化されないし。
「……本当にいなくなったね」
「いや、ライムがまだいるだろ」
勿論、その結果謎生命体はすべて消滅していた。
その事を無意識に口に出してしまうと、マイク君から貶されてしまったが、それに関しては完全に同意見だ。ボクも絶対に悪なのだから浄化されるのかと思ったけど。
「今まで力を使わずに隠していてすまなかった」
「い、いや、それは別にいいんだけど」
そんな風に謝ってきている、勇者の変わりようにも驚いたし、何よりも一番驚いたことはあんなに強い攻撃を仕掛けたと言う事に驚いてしまった。
ようこそ、幻と絶望の街へ
進化時の台詞が結構怖い感じで驚きました。
結構今更ですけどね。




