二十五話~ボクと相変わらずボクの事を貶しだす受付嬢と諦めを覚えたマイク君~
ギリセーフってことでぇ!!!
「「「「タマs」」」」
相変わらず、良く分からない生物が街中に蔓延っていて、住民たちもそれに対抗しようとけったり、殴ったり、切ったり、魔法を使ったりしている人たちが居たが、全くあの生物には効いていない様だった。
「……なんで建物の中にもいるんだよ」
そして、今のマイク君が言った台詞の様に、ギルドの中にも五、六体入っていて、何とか討伐しようと頑張っているが、全く傷を与えられていなかった。
「おーい、受付さーん、一応二階のところまで行ってきたよ」
「煩い危険人物ですね、まあ、良いですよ、Dランク冒険者ですね、カードをください」
しかし、いつも会話している、今回の強制的な迷宮への探索を命じられたことの元凶であるこの受付嬢は、良く分からない生物が「タマシイィィ!」と言っていても、変わらずにボクの事を貶してきた。
何故、ボクの周りにはボクの事を貶してくる人が多いんだ。
「……あなたのせいでボク達は迷宮に行かなくちゃいけなくなったんですよ? もう少し態度を変えるとかないんですか?」
「アハハ!! 何を馬鹿な事を言っているんですか、どうぞ今から貴方達はDランク冒険者です。そして今現在は、あそこにいる良く分からない魔物の討伐命令が出ています、なので討伐してきてください」
流石、と言うべきか、案の定というか、まあとりあえず、ほとんど予想通りな発言をされたので特に驚く事は無かったのだが、更に新しい討伐命令を出されていた事に、少しだけ驚いてしまった。
強制的に参加させられると言う事は察したけど。
「でも、何故あれを討伐しなければいけないのさ、騒がしいこと以外実害はないじゃないですか」
一応、ギルドまで歩いている途中に何百もの謎の生命体を見てしまった、ほぼ毎秒な感覚で「タマシィ」とかと言う風に聞こえてしまっていたので、怒る事よりも先に意識外に持っていくと言う意味不明な技能を身に着けた。
所謂、慣れと言う物だよ。
「だって、騒音は実害ですよ、何を考えているんですか貴女は、今いるDランク冒険者はそこで殴ったりしているので、倒せるように研究してください」
しかし、この受付嬢はボクをまた貶しながら説明してくれたが、あんなに殴っているのなら、正攻法と言う物はないのではないだろうか。
ボクは深淵魔法を使って一撃で倒せたけど。勇者位の火力を持ってないと殺せるんじゃないかな。
「そんなもん、勇者を呼べばいいんじゃないの?」
「いや、あの勇者は貴女以上にうざい人間なんだから」
ただ、何故か、本当に何故か良く分からないが、受付嬢が奇跡的にボクを貶さずに一分を発して、今度は勇者の事を貶していた。
ボク自身、滅茶苦茶驚いた顔をしていたのだろう。そのせいで受付嬢からはすごい眼光で睨まれてしまったが、こっちとしては、自分に対して滅茶苦茶文句を言ってくる糞みたいなやつが、実はツンデレだったから……と言う様な感じを実際にされている様で、本気で驚いた。
「さっさと殴って来い! 私をそんな目で見ないでください! セクハラで訴えますよ!」
「ふふふ、そういう事って思っておくね」
そんな希少な受付嬢のデレに調子に乗ってしまい、ツンデレ幼馴染に対する男主人公の様な台詞で返答してしまったが、そのせいで受付嬢からはおぞましい殺気を送られた気がしたけど。しょ、所詮は気だからね。
「君たちは何かわかった事ってあるの?」
「はあ? 見たらわかるだろ」
そして、そのおぞましい殺気から逃げるように、謎の生命体をぶん殴っていたボク達よりも少し年上の様な感じの人に話し掛けた。
一応、逃げると言う第一目標は達成できたのだが、謎の生命体の弱点を探ると言う事は全く達成できる気がしない。
と言うか、この人は何なんだ。凄い清々した顔で、「見たらわかるだろ」って、芸人か何かなのかな、それにわかんないから聞いてんじゃん。
「じゃあ、何を試したか教えてくれない? 教えてくれないのなら、ボク達はボク達でやるけど」
「はっ、教えてやるわけがねえだろ」
一応は予想出来ていたけれどね、ボク達は強制されてあの受付嬢に受けさせられているが、きっとこれにも報酬があるのだろう。
まあ、出なければ誰もやらないだろうしね。
「よし、じゃあボク達は何をすればいいだろうね、マイク君!」
「……いや、困ったからって、俺に言ってくるなよ。まあ、普通に魔法を撃ってくしかないだろ。あれはだめだろうし」
流石にこれ以上はボクでは何もできないので、一番統率力のあるマイク君に助けを求めた。一応殺すだけなら、さっき使った深淵魔法でいいのだけど、流石にそれはボクも一緒に処分されてしまうので却下だ。
「じゃあ、マイク君達が魔法を撃ってね、ボクの一般的な攻撃は効かなかったから」
「……何か裏道はないか?」
ただ、マイク君は哀れにも魔法を撃ちたくない様で、裏道がないかと思考していたが、絶対に無理だと思う。深淵魔法ですら裏道なんだから。
「仕方がないか、魔法を撃つから、お前らは気をつけろよ」
そんな風に、諦観の目をしたマイク君が謎の生命体に向けて手を向けた。




