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吸血鬼になった理由

 「それはね、僕が80歳のときだね」

 ローストビーフを一口食べてアルは話し始めた。その姿は自分が生きてきたことを嘲るように、恥ずかしむように、懐かしむように。

 



 人生を全て魔法につぎ込んだ僕は一人だった。結婚もしなければ、養子もとることもなく。ただ魔法を極めることだけに僕は人生を使った。

 生計を立てるために今と変わらず薬屋をし、少ないお金で慎ましく暮らしていた。あんまり贅沢したいと思ったことがないし、魔法を学ぶことが僕の全てだった。

 

 そんな年老いた僕のところにね、あるお客さんが来たんだ。そうそれが僕を吸血鬼にした張本人であり、この世の魔法使いを統括している吸血鬼、クラリス・シルヴァーキルリア・シルザート。黄金を髪にしたのかと思うほど息を呑む、いや息をすることすら忘れてしまうほど美しいブロンドヘア、目は紅玉のように鮮やかな紅、身長は175cmほどの長身で、服から露出した肌は本当に血が通っているのかどうかを疑うほど白い。

 

 これまでの薬屋黒猫は、知り合いぐらいしかやってこない場所だったため、知らない客は珍しかった。

 「いらっしゃいませ」

 「この薬はお前が作ったのか」

 クラリスは、何かを探すような仕草をし、棚に置いていた薬を一つ摘んで言った。

 「はい」

 「そうか。それじゃあ貴様がアルフレッド・ウィシャートか」

 「よくご存知で」

 

 クラリスは少し薬を観察する。舐めるように眺め、

 「ふむ、効きやすいよう魔力を調節をしてある。細かい魔力調整もできているし、薬草との相性に合わせてもある」

 「ほう、見ただけでそれがわかるとは」

 「私を誰だと思っているんだ」

 呆れているように言うクラリス。名乗っていないのだから知らないというのはお客さんに失礼だと思いぐっと堪える。まあ、口は悪くても僕の腕をしっかり褒めたから本心は嬉しかったのだけれどね。


 「貴様は攻撃系の魔法を使えるのか?」

 「ある程度は使えますが......」

 「そうか、使ってみろ」

 「いや、ここで使えば店が吹き飛んでしまいます」

 「そんなことはわかっている。そこのドアの空間を他の空間に繋いでいるのだろう?そこでしよう」

 「はい」

 普通は魔法を見ただけでは判断できない。魔力を見るための目、妖映眼ようえんがんを持ち合わせる人は希少で、これまで生きてきて見たことはなかった。

 なんとなく只者ではないとは思っていたけれど、まさか魔法使いの長とは思わなかったな。

 

 庭に出て、魔法を使って他者に見つからないためにクラリスは幻術系魔法を使う。

 「さあやってみせろ」

 「はいはい」

 

 選んだのは爆発系の魔法。山を一つ消し飛ばす程の爆発を起こす。年老いていたが、これまであまり使っていなかった魔力を溜め込んでいたため、規模は大きく出来た。

 それを見たクラリスはウンウンと満足そうに頷く。しかし僕はこれほどの爆発を起こせるのは自分ぐらいだろうと考えていたため、この爆発を見て腰を抜かさなかったクラリスには驚いたよ。まあ、クラリスを詳しく知ったらあの程度の爆発は別に凄いことではないということがわかったのだけれど。


 「まあまあだな。及第点と言ったところか」

 全力が及第点と言われて怒らなかったのは、きっと年老いていたせいだろうね。

 「それで、どうするのですか?」

 ずっと疑問を思っていた言葉を口に出す。いろいろ見破られ、そして高威力の戦闘魔法も使わされた。ここまで来て、何をしたいのかは僕は分からなかった。でも幻術系魔法を使っているのを視たが、広範囲且つ爆音、地形の変化など細かいところまで隠蔽するという魔法はなかなかなものだ。


 すると腕を組み、自信満々に言った。

 「アルフレッド・ウィシャート、我の眷属となるといい」

 「はあ。眷属と申しますと?」

 「吸血鬼だ」

 この時はびっくりしたなぁ〜。居るとは知らなかったから、目玉が飛び出るぐらい驚いたね。

 

 あまりの驚きに身を硬直させていると、あまりにその姿が滑稽だったのか、クリスタは小さく笑った。

 「吸血鬼に、永遠の命を手に入れたいとは思わないか?」

 「永遠の命......」

 確かにとても惹かれる条件だった。何をするかも知らないのに、80歳になって死が身近に迫ってきている中で永遠の命は、喉から手がでるほど欲しいものだった。

 

 「貴様には我の賢者にふさわしい魔法使いだ、誇るが良い。それでどうだ?眷属になる気はないか?」

 「成らさしてください」

 決断は早かった。これまでみたいに永遠に魔法を学び続けたかったから。


 「そうか、いい返事だ。ならば血を差し出せ」

 

 クラリスは僕の首筋に噛み付く。置いているから肉が硬いや、血が不味いだの文句を言いながら血を吸う。血を吸われていき身体には激痛が襲い、その痛みから意識は遠のいていった。

 

 

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