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リセット

作者: 猫柳美鳥

 私が人らしい生活を送り始めたのは、働くことを辞めた一週間後のことだ。

 高齢化の進む産業の世界に、「かっこいい!」と自ら飛び込んだ若者たち。ソファーに寝ころびニュースを眺めていた私の腰を上げさせるには、十分すぎるニュースだ。

 まずは掃除。縦に一列、横に一歩ずれて一列。高校の時はモップだったけれど、今は掃除機。部屋も、体育館の何分の一という小ささなので、すぐに終える。いつのまにか溜まった郵便物やら何やらもシュレッダー。明日はちょうど、燃えるゴミの日。ごみ袋にむかって、紙くずが零れ落ちないようにごみ箱を傾ける。

 体を動かしたらお腹がすいたので、うどんをつくることにする。食べることは生きること。とてもいきものらしい行為。起き上がることだって出来ないんじゃないか、そう感じていたのに。ニンジンの皮を剥き、白菜を刻む。汗がにじんできたから髪を一つに縛り、換気扇を回す。

「いただきます」

 美味しい。美味しいぞ。自画自賛しながら麺をすする。「頑張る」の終わりが見えてこなくて、休むことが怖くなっていた。歩むことを止めたら、どこへも行けなくなると思っていた。

「大丈夫」

私は生きていける。

「ごちそうさまでした」

 はぁ。まずは、再就職先探さなきゃなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言]  ちょっとだけ笑いました。
2017/08/11 22:16 退会済み
管理
[良い点] オチ。仕事リセットが、仕事止めて終わりじゃなくて、仕事リスタートになってるところ。 [気になる点] 前、主人公がやってた仕事何なのでしょう? [一言] すぐさま動き出せるあたり、主人公、つ…
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