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05

気づいた時には終わってる盆休み、こんばんは。

 折角包帯を巻いてもらい、ケルベロスにやられた傷(と呼んでいいのか疑問ではあるが)も治った、もしくは直ったと言うのにまたやられてしまった俺の状況を見て、712番の白髪少女は嫌な顔一つもせずにまた黙々と包帯を巻いてくれた。俺が何かを前にやってくれるあたり、彼女は将来良いお嫁さんになるだろう。

 ほんと申し訳ねーな……と罪悪感に苛まれていると、一応やられた事になっているはずの二人の少女は軽く自己紹介を始める。

「ボクは264番だよー、よろしくねー!」

「私は265番……まぁ、よろしく」

 どうやら二人は双子の姉妹らしく、部屋も同じ部屋を使っているらしい。身長は二人とも150cmほどだろうか。ちなみに712番は俺の顔のあたりまであるので160cm近くあるだろう。

 そんな健気に自己紹介をしてくれる二人とは違い、口の中でアイスティーを製造された男はぶすくれながら嫌々と自己紹介をする。嫌なら屋上で肌でも焼いて、どうぞ。

「……53番。53番様と呼べ」

 ちなみにこの53番、俺よりでかいので180cm近くあるかもしれない。高身長を相手にするとなぜかイライラするので嫌味を込めて挨拶をする。

「ゴミ様だな、よろしく」

「ゴミみたいな奴だし、案外間違ってはないかもね」

 どうやら712番とは知り合いらしいが……中学生の年齢でこの身長なのだろうか? 足をぶった切ってやりたくなるではないか。

 ただでさえ両腕が世紀末化しそうな制服を更に切り裂いてくれたのだし、やはり足の一つや二つぶった切っても良さそうな気がする。

「ゴミじゃねぇよ53番だ!」

「53ってゴミって読めるじゃん? それにゴミの方が53番より呼びやすいしやっぱゴミで良くね?」

「私の712番も、もしかして呼びにくい?」

「うん」

 良いわけねぇだろ! とゴミが吠えているが気にしないでおこう。

「一緒に探索するし、呼びにくいのは不味いよね……何か良い呼び方ない?」

 何か良い呼び方か……と頭を悩ませるが、そもそも彼等には名前が無い。名前が無いとなると渾名はなかなか思い付かないモノで……。

「もうナナとかでいい?」

「それは7番に失礼な気もするんだけど……」

「で、ナナちゃん。この三人の処遇はどうするよ」

「それで行くんだね、まぁいいけど。襲いかかってきたのを返り討ちにしたのはリョータなんだし、リョータの好きにしていいよ」

 好きにしていい? マジで?

「それは煮るなり焼くなり織田信成好きにしていいって事?」

 おっとこれでは織田の信成さんを好きにしていいみたいになりそうだ。

「織田信成さんは知らないけど、まぁそうなるね……殺そうとしたんなら、殺されても文句は言えないしね?」

 712番――もといナナは笑いながらゴミを見る。まるでゴミを見るような目でゴミを見ているかのようだ。

 まぁゴミはどうでも良いが、双子は恐らく何らかの理由で手伝わされていただけだろう。

「えっと……双子ちゃんはどうしてゴミの手伝いを?」

「せめて様を付けてくんない?」

 図々しいゴミだな、燃えるゴミの日に出してやろうか。え、萌えるゴミ? いや萌えないから。

「えっとー、二人でどうしようかってうろついてた時に攻撃プログラムに襲われてー、ゴミ様って防御系の魔術は得意らしくてそれで助けられてー」

「命の恩人なんだから手伝えって軽くおどされて……」

「待て、それだと俺がクズみたいなじゃないか。俺はたまたま二人を助けて、固まって動いた方が生存確率上がるんじゃないか? って提案しただけだぞ」

 ライトノベル主人公を眺めているような気分にさせられる。面倒だしもう攻撃プログラムの餌にしてやりたい。

「ま、いいや。双子ちゃんはどうしたい? 一応ナナちゃんと俺は中央管理室? 中央制御室? とか言うとこ探してるんだけど……」

「あ、ならボクも探すの手伝うー」

「264番が手伝うなら、私も……」

 ちなみに264番の方が妹で、265番の方が姉らしい。

「じゃあ引き続き探索しますか」

「今度はゆっくり歩いてね?」

 お前らの体力に合わせてゆっくり歩いてたら、その何とか室を見付けるとは遠い未来になりそうだな。と思いはするが口には出さない。


「で、何で付いて来てるの?」

 中学棟を殆ど調べたが、それらしい部屋も扉も見付からなかった。それどころか、ゴミが何故か後ろを付いて来ていたのでうざったくて仕方が無い。

「何でってそりゃ、俺も手伝うからだよ」

「あ、人手足りてるんで大丈夫です」

 俺が率直な意見を言うと、すかさずナナが続いて「正直四人で十分かなぁ……むしろ増えると襲われた時の危険性が増すし」と言った。

 ナイスだ、と心の中で親指を立てているとそうだそうだーと双子も乗っかり、完全に四対一の構図が出来ていた。

「くっそ、お前ら……あれだかんな? 俺のファイアウォールは凄いんだかんな? 例えミュータントであったとしても突破は――」

 どうやらゴミはナナの地雷を何度か踏んでいるようだ。何かを言おうとしていたゴミの口に今度はスニーカーが突っ込まれていた。それも新品ではなく泥のついているスニーカーだ。細かい気配りが出来るいい子だ。

 先程の氷塊と言い、恐らくは魔術で出しているのだろうが……何かを打ち込んでいる姿すら見えなかった。その程度のモノを出すだけなら、彼女は一瞬でコードを打ち込めるのだろうか?

 もしナナもこの三人のように俺を襲ってくる敵だったらと考えるとゾッとしない。一秒未満で魔術を発動させる彼女は、恐らく思考の速度も恐ろしい程速いのだろう。そんな彼女を相手にステゴロで挑んだところで――まぁ、俺が何かをする前にやられるだろう。それこそ突然現れ、まだ現れただけのケルベロスが炎に焼かれたように。

「それで、ゴミ様を魔術無しで倒した貴方は何番なの?」

 264番と名乗った方――確か妹だ。妹ちゃんの方が忘れてたと言わんばかりに聞いてきたのだが、この質問にどう答えるべきだろうかと悩んでしまう。

 正直今更? って感じもするのだが、流れに乗っていたら聞くのを忘れていたのだろう。俺も自己紹介していない事を忘れていたし。

「あー、えーっと……番外、とでも名乗れば良いのかな? 一応過去からの参加者って事らしい。名前は佐藤亮太だ」

 あ、なんか番外って名乗るのカッコイイ気がする。今度からこれで行こう。

「あー、道理で魔術使わなかったワケだー……使わなかったんじゃなくて使えなかったのかー。え、凄くない?」

「魔術使えないどころか少しも詳しくない過去の人にやられるってゴミ様ほんと使えない……」

「うるせぇ、お前らだって俺が引き付けてる間に有効な攻撃出来なかったじゃねぇか!」

 何やら喧嘩を始めたので、気になっていた事を聞いてみる。

「ところでえっと……53番ウィズ姉妹の三人でどうやって生き残ってきたの?」

 戦ってみた感想だが、ケルベロスと戦って生き残れるような戦闘能力があるようには感じられなかった。俺より素早く動くあのケルベロスを相手にして、あんなにとろとろ動いていては気付いた時にはこの世からさようならだろう。

「言ったろ? 俺のファイアウォールは無敵と言っても過言では無い防御性能を「過言だよー」うるせぇ!」

 どうして真面目な話の合間にもコントを挟んでくるのだろうか……。

「まぁ、つまりあれだな? ゴミが盾役で二人が攻撃役って事だろ?」

 ゴミの得意分野らしいその魔術をどの程度早く出せるかによっては、まぁ生存は可能なのだろう。

「おう、三秒もあればファイアウォールは展開可能だぜ」

「三秒もあったら喉笛食いちぎられるんじゃね?」

「いやいやあいつらそんなすぐに襲ってこないし」

 出会い頭襲ってこられた俺は運が悪かったのか、或いはこのゴミは運が良かったのか……どちらにせよ、ケルベロスと遭遇した時は素直にナナに頼る方が良さそうだ。

「ちなみにゴミ」

「様をつけろ、何だ?」

「ゴミの得意分野らしい防御の魔術様は他に何かあるの?」

「どこに様を付けてるんだよ、しっかりイケメンで無敵の53番様と呼べ」

「無敵……? ああ、ゴミ様の相手してくれる人なんかいないもんねー」

「264番、本当の事言っちゃ可哀想だよ」

「てへ」

 ワナワナと怒りに肩を震わせるゴミ様へと哀れみの視線を送りつつ、この三人が揃っている時に真面目な話は無理だろうなと結論を出す。

 そもそもゴミに期待などしない方が良いだろう。俺は後ろで静かに着いてきていたナナへと聞く相手を変える。

「ナナちゃんナナちゃん」

「ん、何?」

「ゴミの事知ってたみたいだけど、知り合いだったの?」

「うん、同級生」

 アイツ中坊かよ、ギルティ。いや、中学生だからあれ程クソ生意気なのだろう……待てよ?

「双子ちゃん双子ちゃん、双子ちゃん達は何歳?」

 ギャーギャーとゴミを交えて騒いでる姉妹へと質問をしてみる。

「女性にその質問は失礼じゃ……?」

「ひみつー!」

 コイツらほんっと話する事出来ねぇな。

 申し訳ない気持ちを噛み潰しながら俺はチラリとナナの方へと視線をやって答えを求めると、この中では(俺を除いて)唯一の常識人である彼女は普通に答えてくれた。

「一つ下だから、十四かな……あーでも誕生日知らないから詳しくは分からないや」

「流石ナナちゃんありがとう、頼りになるの貴女だけですわーマジで」

 重大な事実に気付いてしまった。いや、ゴミが中坊と聞いた時点で分かってはいたのだが、最悪の予想が事実として確定してしまった。

 俺、この中で一番年上やん。

 マジで?

 気が重すぎるんだけど……。


 折角五人もいると言う事で、小学棟と高校棟の二手に分かれて調べるという事になった。

 小学棟はナナと双子ちゃん――のはずが、妹の方がこっちが良いと駄々を捏ねたので、結局はナナと姉が調べる事になった。

 そして俺とゴミ、そして妹ちゃんで高校棟を調べる事になった。

 戦力的に考えればナナと俺、残り三人と分けるのがやはりベストなのだろうが、一応中央制御室を探すと言う同じ目的を持って一緒に行動する以上、ある程度仲を深めチームワークを良くすべきだろうという俺の考えの下そうなった。

 年長者の何が大変かってアレだよな、アレ。言葉に出来ないけど色々なアレがアレだよなほんと。

 という事で三人で高校棟へとやってきたのだが、三階までしか無い小学棟中学棟と違い高校棟は四階まであった。校舎の広さなんてたかが知れているが、一階分あると無いのとでは気持ちが変わってくる。

 なんというか、めんどい。

「おうゴミ、キリキリ働け」

「あん? お前が働けよ番外」

 あ、なんか番外って呼ばれるの意外と良いかも。

「リョータリョーター、ゴミ様なんてほっといて早く行こうよー」

 とまぁ、面倒なワケで。小学生を遠足に連れていく時の教師の苦労が骨身に染みる。

 一階から虱潰しに扉を開けつつ、話が通じない二人組が一人になれば多少は話もしやすくなるだろうと思いゴミへと話しかける。

「なあゴミ、質問があるんだけど」

「スリーサイズ知りたいって? 2番から998番までの全女性のスリーサイズなら多分大体把握してるぞ」

「いや知らねぇし興味無いから」

 ここの住人の年齢層なんて聞いてはいないが、その中に恐らくババ――ゴホン、ご高齢の女性の方もいらっしゃる事だろう。それのスリーサイズを聞いたところでリアクションに困るどころか正直聞きたくも無い。

「じゃあ何だよ、ミュータントをどうしてミュータントって呼んでるかって?」

「おお、ゴミにしては鋭いやん」

 と口では言っておくが、内心慌てふためいていた。こいつ心読めるの? とか、どうして聞きたい事が分かった! とか。もっとも生意気中坊野郎にいい顔をされるのは癪に障るのでポーカーフェイスを保つのだが。

「ミュータントってのは突然変異の事なんだけどな?」

「そんくらい知ってるわ馬鹿にしてんのか」

 ミュータントと呼ぶくらいなのだから、ミュータント能力でも持っているのだろうか? 世界が世界なら処刑対象である。

「あいつ白い髪で赤い目してるだろ? この世界でそんなの存在しないはずなんだよ……だから突然変異って呼ばれてるんだよ」

 白い毛で赤目って……ただのアルビノではないか。

「妹ちゃんとかも相当有り得ない髪と目の色してるけどミュータントって呼ばれないの?」

「え、ボクの事をそんな風に呼ぶの? 酷いなぁ……」

 相当なショックを受けたような妹ちゃんの反応で、大体の事は察せる。ただの白髪でそう呼ばれるのなら、老人もミュータントやんけ! と思っていたが、この世界で白い髪赤い瞳は存在しないという謎の決まりがあるらしい。そして、存在しないはずの奴がいる。突然変異に違いない……となり、大方イジメの標的にでもされているのだろう。

「ちなみにミュータントは他にもいるの?」

「いや、712番だけだ」

 なるほどな、と理解する。ミュータントと呼ばれた時に彼女は怒っていたので、彼女がいる所で聞くべきではないだろうと思ったのだが、どうやら正しかったようだ。

「つまり差別用語って事だろ? なんでわざわざそんな呼び方するんだ?」

「なんで? ミュータントだからミュータントって呼んでるだけだぞ」

 いじめっ子に「どうしてイジメをするの?」と聞くと返ってくる答えにはさまざまある。例えば楽しいからであったり、ウザいからであったりする。大抵はハッキリ言いたい事を言わなかったり暗い性格だったりする人物がイジメの対象となり、やり返せる人物ならばイジメの対象から外れる事もあるが、助けを求めたり何も言い返さなかったりするとその状況が変わる事は無い。

 それを理由と呼んで良いのか悪いのかは分からないが、少なくとも俺の知るイジメには屁理屈や嘘っぱちだったとしても理由らしきモノが存在している。

 だが53番はどうだ? いや53番に限らず、恐らくここの住民全員が当てはまるのだろうが、彼等は理由を持たずにイジメをしているのだ。具体的にどういった内容のイジメが行われているかは分からないが、彼等はナナがそうであると認識しており、ナナに対してはそうすべきなのだと認識しているのだ。

 こう言ってはなんだが、一種の常識と化している。

 712番は髪の毛が白く瞳が赤いからミュータントで、ミュータントと呼ぶモノだと共通の認識となっているのだ。

 それが千人も人間がいる中で一人だけ……。

「なあ、ミュータントミュータントって呼ぶけど具体的に何か危害を加えたりはしてるのか?」

「随分とミュータントにお熱なんだな? まぁいいけど、危害なんか加えるわけねーだろ。そんな事したところで意味無いし」

 じゃあ呼び方だけで何もしていないのか――

「むしろ誰も近寄らないからな。危害なんかわざわざ加えたりはしないっての」

「……はぁ、そっか」

 足を突っ込むような問題では無いだろう。例え現実でイジメを目撃しても俺は平然とスルーをするか、ある程度仲が良い相手ならイジメに立ち向かえるように背中を押してやるくらいはするだろう。だが虐めている奴と虐められている奴の問題に深くまで足を踏み入れる事は絶対にない。

 助けを求める声は鬱陶しいので聞き流す。向けられた視線は適当に受け流し、伸ばされた手は適当にあしらうだろう。自分が良い人間では無い事など百も承知である。

 だが、命の恩人でもあるナナの待遇は、置かれている環境は……ハッキリ言って壮絶なモノだ。

 どちらかと言えば俺と逆の――

 ああ、と息を吐く。どうやら長く同じ場所に留まり過ぎたようだ。

「おうゴミ様、出番だぞ」

「あん? ……ああ、マジか」

 廊下の向こう側、幸いにもある程度の距離が離れたところにケルベロスがいた。グルルルと唸りながら体勢を低くし、いつでも走り出せるように構える。

「さあ、存分にやってくれゴミ様」

 確か防御系が得意とか言っていたはずなので、攻撃は妹ちゃんにでも任せれば大丈夫だろう。生存競争が始まってどのくらいの時間が経ったのかは分からないが、ここまで生き残れたのだし恐らく余裕で対処出来るのだろう。

「俺の力を見せてやる!」

 自分の存在を誇張するように吼えたゴミは一目散に近くの教室へと逃げ込んだ。

「……何してんの?」

「リョータリョータ、早く教室に入って攻撃プログラムに追い付かれちゃう!」

 俺を急かす妹ちゃんと言い即座に逃げるゴミと言い、こいつらは基本逃げ回っていたのだろうか?

 何で逃げるんだよと不満を抱きながら取り敢えず教室へと入ると、ゴミは熱心にコードを打ち込んでいた。

「視界から外れれば時間を稼げるって? あいつら嗅覚もあるんだぜ? そのくらいで逃げ切れるんなら俺だって五匹のケルベロスから逃げきれたわ」

 四匹だったかもしれないが、まぁいいだろう。

 そんな俺を見て、ゴミは馬鹿にするように笑う。なんだコイツ、無性に殴りたくなるぞ。

「廊下と教室とじゃあ空間が違うから匂いなんて関係ないんだぜ?」

「は? いやいや何言ってんの? 空間が違う? は? え、は?」

 それは一体どういう事だ? 中二病が末期になってしまったせいで頭もいかれたのだろうか?

 混乱する俺を見兼ねてなのか、妹ちゃんが丁寧に説明をしてくれる。

「えっと……ここは学校エリアと呼ばれているエリアなんだけどー、外と校舎内とではエリアがまた違っていて、それで校舎の中でも部屋と廊下とではエリアが違っていてー……大量のエリアを内包した全体的なエリアが学校エリアなんだよー」

「うん……うん?」

 説明力を身に付けてから出直してくれと心から思う。

「マップ見せた方が早いが……そろそろ攻撃プログラムが来るぞ」

 サーッと扉が開き、トコトコとケルベロスが入室してくる。一瞬愛らしさを感じさせなくもない動作を見せていたケルベロスは俺達を感じ取るや否やすぐに戦闘態勢になる。

「展開するぞ!」

 ファイアウォール! と恥ずかしい技名をゴミが叫ぶと俺達を囲むように炎が現れる。炎と言うよりは、炎のような壁と表現すべきだろうか?

 俺達を囲い、防御面では恐らく高いレベルを誇っているのだろうが……肝心の敵の姿が見えなかった。

「……どうやって攻撃するの? これ」

「は? 探知で居場所割り出してそこに攻撃ぶち込むだけだろ……264番!」

「はーい」

 カタカタと聞こえる程度の速度で妹ちゃんはコードを打ち始める。

「ま、攻撃まで暫く時間あるしさっきの説明の続きからだな。マップ見りゃ早い」

 どれの説明だよ、と思っているとゴミは俺に向かって画面のような物を見せてくる。やはりキーボードと同じように薄く光ったそれは空中に浮いており、薄い光の枠の中には画面が映し出されていた。

 そこに乗っているのは――恐らく学校エリア全体のマップなのだろう。簡単に説明すれば、ゲームの攻略本などで見るような図である。

「これ、区切られてるだろ? 区切られてる所は別空間なんだよ」

 相変わらず意味が分からないのだが、そうなのだと理解する他無かった。考え方としては、ゲームなどでの移動時にマップ切り替えがあるのと似た感じだろうか? 恐らく隣の教室での物音が何故か聞こえないのと同じなのだろう。

「で、これ。これがエネミーの位置」

 恐らく俺達がいるであろう教室をゴミは指さしている。そこには光る点が四つあり、内三つの色は緑で残る一つが赤だ。まあそれが分かったとしても、俺にはその地図らしきモノを表示させる手段が無いので覚える必要は無いだろう。

「一応言っておくが、俺達が見付けた奴しか表示されないからな。それにある程度距離が離れれば消える」

「つまりこの座標を元に攻撃をするって事か?」

 分かりやすいだろう? と誇らしげな表情を見せるゴミを無視して妹ちゃんの方へと目を遣る。何かを相変わらず打ち込んでいるようだが――

「よし、行くよー」

 そんな妹ちゃんの元気な掛け声と共に、何かを勢い良く切り裂くズバンッ! と言う音が聞こえた。

 たった一匹のケルベロスを倒すだけでこんなに時間がかかるとは……生き残るのも大変だな。

食パンにチーズとベーコンのせてトーストするとおいしい。

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