勝負が好きって、キャラじゃ無いですかね?
一人、相手と向き合い、これから戦う。
その静かさをある人は心地よいといい、ある人は緊張するといいます。興奮するという人もいるでしょう。そして、いろんな人がいる中、向かい合っている相手が、自分と完全に同じ気持ちでいることは、ほぼないと言っていいでしょう。それだけ、一人舞台に立つ勝負というのは十人十色と言えます。
でも、一つ、勝負する者に確かにある感情は、
「負けたくない」
これだけは、私、中崎文香は確信しているのです。
3日間の合宿の最終日を終えて、私は自分の最寄り駅に着きました。そこで私は中学時代の友達、若ちゃんに出会いました。若ちゃんは私に気づくと、背の低い彼女がテトテトと小走りで来て、懐かしいように私の手を取りました。手を取ってから、
「久しぶり!文ちゃん!」
「うん、久しぶり、若ちゃん!」
私たちはつい3月に卒業したのに、とても長い時間離れていた気が私たちの声を高くしました。
少し、落ち着いてから私たちは駅前のカフェで腰を下ろして、中学時代の思い出をつい2か月前から懐かしがり始めました。
若ちゃんは優しい子です。小学校から一緒でしたけど、ファッションの好きな若ちゃんは服飾科のある高校に進むことになり、高校は別々です。若ちゃんはこの進路にも、私に気を使っていた節があって、一度、泣きながら謝りに来たことがあったほど優しい子なのです。
今だって、十分に優しい。私がそう思って懐かしんでいると。
「文ちゃんは、今日はどうしたのそんな大荷物?もしかして旅行!?いいなあ。」
私は今だっ、と思いました。
「若ちゃん、ちがうの。今日まで部活の合宿で、先輩の家にいたんだ。」
「え、部活?何をやっているの?」
「将棋。」
「将棋って、あのゲーム。あまりよく知らないけど。」
「そう、私やっぱり、そういうのが好きなのかなぁ、って自分でも思うよ。」
「……そういうのって?」
「うん、やっぱり私は誰かと勝負をしたい、自分史上最悪の日から私は何も勝負だけが世界じゃないって思うようにしてた。だけど、あの日、すごい綺麗な先輩に出会って、そこで繰り広げられてる勝負に私は興奮した。この合宿でも、私の左膝がキュウとなってね。若ちゃん、見てて、私まだ、楽しめるよ。勝負を!」
「そうかぁ、それは良かった!!」
若ちゃんは椅子から飛び上がる様子を見せて、喜んでくれました。
「若ちゃんは本当に優しいよね。触れないでいたでしょ。バドミントンのこと。」
「うん、だってあんな怪我。しかも全国大会の前に。」
「そうだね、私も本当にどうしようもなかったなぁ。」
「でも、そうかぁ。将棋、あまり知らないけど。文ちゃんがその勝負がたのしいって、すごい面白いんだろうね。私、応援してる!」
「ありがとう、若ちゃん。」
私は若ちゃんと別れると中学時代の怜子先輩と部長を思いました。二人は勝負の世界をどう見ていたのでしょう。私がバトミントンでコートに立てなくなった気持ちと、部長が後輩に追い抜かれる感覚は、どこが違って、どこが同じなのでしょうか。
私はこれを確かめるだけでもいい、ただ部長の心が知りたい、そう思いました。
私がベンチから立つとひやりとした風が吹きました。梅雨にはまだ早いです。にわか雨が降るのであれば、その前に帰らなければなりません。
私は荷物を持ち直して、次の一手を考えていました。
どうも、たけさんです。
第九話読んでいただきありがとうございました。
風邪をひいてそれが長引き、こんなに次話投稿が遅れてしまいました。
気付けば藤井聡太四段の連勝記録が19になって、名人戦も第5局で、電王戦も終わってしまって。
本当にすみません。
さて次回はようやく部長がしゃべります。誰とでしょうね、次回のお楽しみです。
それでは、読んでくださった皆さんに感謝をこめて。それでは!