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私が見つけた星屑のかけら。  作者: たけさん
5/12

怜子先輩の友達って市先輩だけだと思っていました。

 イエス、ゴールデンウイーク!!!

 なぜこんなにも私がこの大型連休を待ちわびていたかというと、それは日ごろの学校生活のストレスでもなく、初めての彼氏とのデートというわけでもなく(彼氏だっていません)。

 怜子先輩の家に訪問できるからです!しかもお泊りで!

 私は先輩とチームメイトなんですから、嫌われてはいけません、慎ましやかな先輩と一晩を過ごすのですから、身ぎれいな服と部屋着と、すこし良い匂いのする化粧品をもって、さあ、準備は万端です。待っていてください!!怜子先輩!!!


 「騒がしいけど、上がって。」

 すでにすごく疲れているご様子の先輩がいました。

 私は持ってきた荷物を用意してくれた部屋に置くと、先輩の案内で御宅を歩きました。これがなんと広いのです。イメージ通りの、怜子お嬢様が住むにはぴったりのお屋敷なのでした。聞くと、お父様はお医者さんのようで、それも腕が立つ方で海外での手術もよくやっているそうな。

 私はそんな怜子先輩の個人情報まで聞けて満足しながら歩いていると、

 「ここが今日の研究部屋。中崎さん、人見知りとかないから大丈夫だと思うけど、驚かないでね。」

 そう言って、何か心苦しいような表情をした先輩が開いた襖の先には、

 「いや、だから、そこは無理攻めだって言ってんじゃん。」

 「はあ、これで十分だし、あなたの形成判断可笑しんじゃない?」

 「いっちー、お菓子ちょうだい。あまいやつ。」

 「お菓子は甘いはずよ、どれも。って、ええっ、おかきなんて誰が持ってきたの!?」

 「ああ、それ僕のだよ。食べないでね。」

 「え、あたし食べちゃったんデスケド。」

 「へ?!なんだって、返してよ。僕のおかき返してよ!」

 「だからいったじゃん、お菓子はいっちーのを……。」

 「だから、ここは受けきれてないじゃない!」

 「違うもん、ここが反撃なってるもん!」

 …………

 「うるさい!!落ち着け!!!」

 …………

 怜子先輩の怒鳴る声を初めて聞いた瞬間でした。

 私は固まった女性5人を眺めていました。そうすると市先輩が、

 「あら、文香ちゃんこんにちは、こっちはもう白熱しているわよ。」

 「ええ、見れば分かります。」

 このやり取りを聞いた一人が立ち上がって、

 「へえ、この子が皆瀬怜子の愛弟子かぁ。」

 そう言って少し吊り上がっている眼で睨まれた私は少しビクッとして、それを確認した彼女は笑って、

 「可愛いじゃん!よろしく、うちは玉名ひかり。怜子と同い年よ。ってここにいる他の子そうだけど。」

 と愛想良く私に握手をしてくれました。最初の語気の粗さからは想像できないほど、柔らかい手、よく見ると髪の毛は茶色く鼻筋の通った顔に似合って、とてもカッコいい人に見えます。

 「んで、このちっこいのが、久山留美。」

 「おい、ちっこいいうな。」

 「えー、でもこの子よりちっこいじゃん。」

 そう聞いた留美さんは私のほうを向いて、

 「なんだって!!……市、あの後輩ちゃん、私をいじめてくる。」

 「はいはい、それでいじめだったら、私たち全員、あなたをいじめてることになるわ。」

 「うわああああん。」

 市先輩に泣きついてしまいました。

 「あ、僕は森雪あゆむです。よろしくね、文香ちゃん。」

 私は差し出された手よりもその美青年に一瞬緊張しましたが、スカートをはいていて、女性なんだと関心しながら手を取りました。

 「ふふっ、僕のこと一瞬でも男の子だと思ったでしょ?」

 「ええ、少し。」

 「小さい頃は、気づかれなくてね。もっと男の子だったから。怜子なんて中学生になるまで気づかなかったんだから。ほんと、笑えるよね。」

 そのエピソードが話されて、怜子先輩は少し顔を赤くしています。可愛い……。

 「文香ちゃん?それじゃあ君は、ふみっちだね。わたしはあーちゃんです。よろしく~。」

 「はい、よろしくお願いします!」

 「うん、元気だね。元気な子にはお菓子をあげよう~。」

 そういうと、あーちゃんさんはどら焼きを私にくれました。

 「あたし、里川真澄です。よろしくね。あと隣のあーちゃんの本名は藤本愛生ちゃんって言うから。」

 「よろしくお願いします。」

 一通りの自己紹介が終わった皆さんを見て怜子先輩は、

 「それでは、これから研究会を始めます。いつもの5人と私は持ち時間30分、使い切ったら一手30秒。全員指し終わったら研究ということで。」

 「はーい。」

 「文香ちゃんはいつも通り、市にいろいろ教えってもらってね。」

 「はい、わかりました。」

 「うん、市も頼んだ。」

 「任せて。」

 市先輩のいつもの声に怜子先輩は安心したようで、並べられた将棋盤の前に行き、先輩は1つ息を吸って、透き通る声で言いました。

 「よろしくお願いします。」 

 『よろしくお願いします。』

 6人は一斉に指し始めました。

 それを見て、市先輩が言いました。

 「この子たちは私と同じく、怜子と何年も一緒に指してきた仲間よ。そして最大のライバル。絶対、ここにいる誰もが全国大会に出てくるわ。よく見ておきなさい。ここにいるのは間違いなく、女子将棋の最高峰よ。」

 これが、怜子先輩たちのライバル……。私はそう思って6人を見ました。彼女たちは今は勝負師です。

 仲間を見る目から、同じ勝負師を睨む目になっていました。

 私の将棋合宿は、なんと大変な檻に入れられたのかと、今更ですが、そう思ってしまったのです。

どうも、みなさん、たけさんです。

いよいよライバルたちが登場します。ライバルの人数を数えると、この物語の先輩たちが誰をモチーフに

しているか将棋ファンなら気づくかもしれません。とくに怜子先輩は「玲瓏」ですからね……。

誰が「天衣無縫」で「涓滴」で「日々新」だったりするんでしょう(笑)。

これからの投稿は少し遅くなります。私の都合もありますが、これから実際の棋譜を登場させるために

自分で並べてみなきゃいけないので。

もちろん棋譜は実在するものです。その棋譜に込められた思いやエピソードをこれから、文香たちを通して伝えられたらと思います。

それでは、読んでくださった方々に感謝して、これで。

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