星屑の探し方
「怜子先輩!」
私がそう呼ぶと、怜子先輩の肩がピクッと動きました。しかし、こっちを振り向くときはいつもの通りで。
「どうしたのかしら、中崎さん。」
いつもの先輩ではありません。頬に少しうれしさをにじませています。私は失礼ながら、
「可愛い……」
と思ってしまいました。お茶を淹れている市先輩もいつもより三割増しで微笑んでいます。それを見逃さないのが怜子先輩です。既に市先輩をにらんでいます。市先輩はお構いなしに、怜子先輩にお茶を運びます。
仕方なく、それをすする怜子先輩は何とも可愛らしさが出ています。市先輩のほうを見ると、私に
「言った通りでしょ?」
と伝えているような微笑みを向けました。私も「はい」と笑みでかえしました。
このように無言のコミュニケーションをしていると、お茶から視線を外した怜子先輩が思い出したかのように。私のほうに向いて。
「そういえば、何か聞きたいことがあったの?」
いえ、特には無かったのですが。私はふと昨日の市先輩との会話を思い出しました。
「そうです。将棋の大会っていつあるんですか?」
そう聞かれた怜子先輩は少し顔をあげて、
「最初は6月かな、全国大会の予選。将棋の学生大会には個人戦と団体戦があって、団体戦は1チーム3人だったり、5人だったり。全国大会は3人だから。」
「それじゃあ、メンバーは先輩方、3人ですね。」
そういうと怜子先輩は俯いていた。お茶を注ぐ市先輩がいつもより笑顔をまして、こう告げた。
「6月の大会は文香ちゃんが出ることになっているのよ。」
私はその衝撃にいろんな疑問が雨になって降った。
「どうしてですか!?なんで市先輩じゃなくて私が!?」
市先輩は驚く私の声に、いつものしとやかな声で語りかけた。
「私はね、文香ちゃん。大会には出ないの、去年も出ていなくて。何せ私は『作家』だから。」
私のハテナマークに怜子先輩が静かに、
「市は詰将棋を作る作家で、私たちみたいに対局することよりも、詰将棋を作り、解くことが楽しみなのよ。昔からそうだから、私もそれでいいと思っているわ。」
私はようやく驚きから腰を下ろして、市先輩はを見た。市先輩は変わらず微笑んでいる。
突然、私は市先輩との帰り道でした話を思い出した。
友達のために将棋を覚えたこの先輩は、多分星屑を別の角度から探そうとしているのかもしれない。
ふと私は本棚を見た。本棚の1段目にはノートがびっしりと詰まっている。もしかして……。私はそう思って席を立って、1段目に手をかけた。そして引き抜いたノートには、「吉川 市」と筆字で書かれていた。中にはもちろん、きれいに製図した9×9のマス目と、書き込まれた駒の字、そして細かい解説と仕組み、正解まで、ノートの見開きに記されていた。
どのページも、きれいに作られている。私はもう一度、市先輩を見た。
先輩は、ノートに向かっていた。
どうも、たけさんです。
私個人としては、詰将棋が苦手です。だから棋力も弱いです。将棋が強くなりたい人は
解きましょう詰将棋。つけましょう終盤力。
それでは、今回も読んでくれたかたに感謝を!ありがとうございました!!