市先輩の才能は怜子先輩を追い詰める
梅雨に入る前に、あの一件があったからか、私たちの部室には外の雨を避けるほどの笑顔がありました。
この将棋部ももうすぐ全国大会の予選を控えています。
私もあれから、市先輩だけでなく、部長の浩子先輩や怜子先輩からもアドバイスを貰うようになり、さらに強くなった実感がありました。
そんなある日。
「同じ東京都内にある仙田女子高校から練習対局がしたいと申し出があったのですが、どうかな怜子ちゃん。」
と部長が唐突に話し始めました。怜子先輩は問いかけに、少し首を傾け不思議そうに言いました。
「仙田女子高校。あそこ、将棋部なんてできたんですね。私と市は家が近いので知ってますが。たしか無かった気がしますが。」
「ええ、今年からできた部ですわ。しかし、あなた達がよく知ってる子たちが作った、今注目の学校。今回の予選、気にするのは森雪さんのところだけだと思ってましたけど、あの子たちには気をつけないと。」
怜子先輩はさらに頭を掻いて、考えていました。どうやら思い当たるところがないみたいです。
「怜子ちゃん、阿多瀬さんですわ、阿多瀬 麻季。あなたが中学生の全国で決勝戦に対局した。」
「ああ、あの対局は覚えてます。そうか、そんな特徴的な名前だったかな。」
対局は覚えているところが、なんとも先輩らしくて、私は少し笑ってしまいました。するとその名前に反応したのは怜子先輩だけではありませんでした。
「まあ、麻季ちゃんって将棋部を作ったんですか、部長。」
「ん、市知っているの。」
「それはもう、怜子、麻季ちゃんは私の最初の弟子、みたいなものだし。」
最初の弟子・・・・・・一番弟子?
「えええええええ!!??」
私の声に三人の先輩方はビックリして部長は持っていた駒を落としてしまいました。
「ビックリしたぁ。どうしたの中崎さん。」
「いや、その市先輩って、そんな昔から人に教えてたんですか?」
「なにを言ってるんだ、市は吉川将棋センターの看板娘兼みんなのお姉さんなんだから。」
「そうね、中学生くらいからかな、一つ下の子たちを教えたりし始めたのは。麻季ちゃん以外だと、空ちゃんとかかな。」
「あら、それは加藤 空さんのことかしら?その子も仙田女子高校よ。」
「そうなんですか、それじゃあ、相変わらず仲がいいんですねあの二人。」
・・・・・・いや、待って。そう思ったとき怜子先輩が口を開いた。
「いやいや、市、それってつまり、自分たちのライバルを自分たちで増やしたことになってない?」
「まあ、そういうことね。」
弟子たちの近況がわかり、少し楽しそうな市先輩に私たち選手はため息をつくしかなかったのでした。
どうも、たけさんです。
第十一話、読んでいただきありがとうございました。
主人公のライバルになる子たちが登場です。
モチーフはいます。将棋の棋風も考え方も参考にしているので、
将棋ファンならピンとくるキャラクターかもしれません。
というか、そうします。
更新はこれからも少し遅くなっていきますが、どうか長い目で見ていただければと思います。
それでは、読んでくださった方々に感謝して。また次回!